知的財産ニュース 米政府、ITCの判決に拒否権を行使

2013年8月5日
出所: デジタルタイムズ

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米政府、3日、アップルの「アイフォン4」と「アイパッド2」などの輸入差し止めを決定した米国国際貿易委員会(ITC)の決定について拒否権を行使した。当初、これら製品についての米国内への輸入差し止めが5日から施行される予定だったが、拒否権の行使により、通常の輸入が可能となった。米政府がITCの決定を覆し、アップル製品の米国への輸入を許可したのだ。

米国の大統領が準司法機関であるITCの決定について拒否権を行使したのは25年ぶりのことで、「米政府が自国企業を保護するため保護貿易主義のカードを切りだした」という非難は避け難いだろう。

米国通商代表(USTR)のマイケル・プローマン代表は、3日、ITCの委員長に送った書簡において、「貿易政策実務協議会(TPSC)、貿易政策検討グループ(TPRG)、関連当局及び当事者と協議を行った結果、ITCの輸入差し止め決定を承認しないことを決めた」という姿勢を明らかにした。また、「今回の決定は、米国経済と、米国の消費者に与える影響など、さまざまな政策的考えについて検討した結果だ」と背景を説明した。

今回の決定により、アップルは、「アイフォン4」と「アイパッド2」など、中国で生産する旧型スマートフォンとタブレット製品を米国に輸入できるようになった。

6月初めにITCは、アップルの旧型製品がサムスン電子の特許一部を侵害したと判定し、この製品を米国内に輸入差し止めすべきだと提示し、こうした内容を米政府に勧告した。

フリーマン代表がサムスンの特許権は依然として有効だという立場を示してはいるが、「米政府が一方的に自国企業をひいきした、保護貿易主義の典型だ」という非難があがっている。

一方、米政府がITCの勧告を拒否したのは、1987年以降、25年ぶりのことであるため、関連業界をはじめ、米国のメディアも「異例的な措置だと」評価している。

特に、オバマ大統領がITCの決定について拒否権を行使したため、産業界をはじめ、政治界にも波紋が広がりそうだ。

米国の現地では、政治・経済界がホワイトハウスに対し、露骨なほどロビー活動を行ったことが有効だったのではないかという分析が出されている。

実際に、民衆・共和両党の上下委員が最近、フリーマン代表に書簡を送り、「公益を慎重に考慮することを求める」として拒否を求めたほか、米国の通信キャリアAT&Tも貿易代表に拒否権の行使を露骨に求めていた。

米国メディアも、米政府の今回の決定が非常に異例的だと分析している。

ウォール・ストリート・ジャーナルのオンライン版では、「今回の拒否権は、数年間のITC判決の事例においても大変ドラマチックな事件だ」とコメントした。また、USA TODAYは、「拒否権の行使が前例のないことではないが、大変レアである」と述べた。

米政府の拒否権行使により、サムスン電子とアップルの雰囲気は逆転した。

サムスン電子としては、6月のITCの決定で状況が有利に変わったが、米政府が拒否権を行使したため、また状況は最悪になった。

サムスン電子は4日、公式コメントにおいて「アップルがサムスンの特許を侵害し、ライセンス交渉に誠実に応じなかったことを認めたITCの最終判決が受け入れられなかったことは大変残念なことである」という立場を示した。

専門家は、再び窮地に立たされたサムスン電子が今後、アップルと交渉を行って状況を打開する可能性が大きいとみている。

しかし、アップルのスポークスマンは、声明を出し、「われわれは、今回、重要な事案においてイノベーションを支持した米政府に喝采を送りたい」と歓迎の意を表した。

キム・ユジョン記者

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