知的財産ニュース 異例な拒否権の行使…今後の特許交渉に影

2013年8月4日
出所: 電子新聞

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米国のオバマ大統領がITC決定について拒否権を行使したのは異例だという評価が出ている。米国の政治界と産業界が拒否権行使を求めた全方位のロビが通じたという分析も浮上している。米国の裁判所と行政部がともに自国企業のアップルに軍配をあげ、今後のサムスン電子とアップルの特許交渉も難航が予想されている。

サムスン電子とアップルのITCにおける特許紛争の流れ

異例な拒否権の行使=ITCの決定に対する米国大統領の拒否権を行使は、実際の効力を失っているといわれていた。これまで、計6回の拒否権の行使があったが、1987年を最後に一度も拒否権の行使はなかった。

今回にも、オバマ大統領が拒否権を行使するという見通しが一部ではあったが、可能性は低いと予測されていた。自国企業の保護も大事だが、特許権を尊重するのも大切な価値であるためだ。

外国メディアも驚きを隠さなかった。USTRの書簡が知られた後、外国メディアは一斉に今回の決定を報じた。Cネットは、「予想外の決定だ。多くの法律専門家は、米政府が今回の特許紛争に加入しないことにより、アップル製品の輸入差し止めが公式に発行されると予想していた」と報じた。

一部のメディアは、「標準特許乱用が核心」だと分析し、また一部では、「アップルの勝利」だと表現した。

保護貿易?=米国メディアは、オバマ大統領の拒否権が標準特許乱用に対するけん制だと分析している。

6月、ITCの決定を前に、オバマ大統領は、メディアを通じてITCが輸入差し止め措置を決定することにより慎重になるべきだという内容のコメントをした。また、標準特許に対するいわゆる「フランド(FRAND)」に関連し、輸入差し止め措置を、より慎重に見たという解釈だ。

しかし、結果として「自国企業の保護」だという非難は避けられなさそうだ。特に、拒否権行使の前に、政治界と産業界はさまざまな角度からロビ活動を行ったためだ。

特に、上院議員4人がUSTR代表に対し、「公益を慎重に考慮してほしい」としてアップル製品の輸入差し止めに対する拒否権の行使を求める意味の書簡を送ったのが政治的な圧力だと分析される。米国産業界も大統領を圧迫した。米国最大の通信キャリアのベライゾン・コミュニケーションズの副会長は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿を通じて間接的に、AT&Tは、拒否権の行使を直接うながした。

特許合戦に「影を落とす」=拒否権の行使により、サムスン電子とアップル間の特許交渉において、アップルが優位を示したと評価された。ITCの決定通り、輸入差し止めとなれば、アップルは直ちに打撃をこうむる。こうした場合、これまで、クロスライセンスに及び腰だったアップルが積極姿勢に転じ、交渉が急進展するという見通しが提起されていた。しかし、拒否権の行使により、アップルが有利となった。

ただ、米国を除いた欧州や日本、豪州などでは、対等な攻防を交わしており、アップルの優位が長く保てないと予想される。

チョンドンジュン特許法人のス弁理士は、「拒否権を切りだした理由は、戦っても有利な立場はないということを示す目的があるかもしれない。一方が圧倒できないので、適切にクロスライセンスや、和解して解決してほしいというメッセージなのでは」と分析した。

クォン・コンホ記者

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