知的財産ニュース 対中輸出メーカー、中国の実用新案権強化で冷や汗
2013年7月22日
出所: 電子新聞
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中国が自国企業保護のため、実用新案権の行使を大きく強化し、韓国企業の被害が広がっている。 実用新案は、特許権による保護対象となっている「発明」に比べ、活用されず消えてしまうアイデアレベルの「考案」を保護するため設けられた制度だ。中国は、別途の実用新案審査を行わず、出願すればすぐ登録される無審査登録制度を施行している。そのため、登録が容易である一方、紛争に巻き込まれる可能性も高くなっている。
中国が技術特許だけでなく、実用新案権を中心とする知識財産(IP)政策を強化したことで、現地に進出した韓国企業が知財権侵害の警告状を受けたり、訴訟に巻き込まれたりするなど、被害が拡大していることが22日に確認された。
そのため、技術特許だけでなく、実用新案の先行技術調査も視野に入れた前防衛的な知財権管理が必要だという指摘が出ている。
昨年、韓国特許庁に出願された実用新案は1万2422件と、特許出願(18万8305件)の10%を下回っている。 しかし、中国の場合、2010年以後から実用新案が特許より多く出願されている。2001年7万9722件から2011年には58万5467件と、10年で7倍以上も増加した。 チシム特許法律事務所のユ・ソンウォン代表弁理士は、「開発途上国は、自国産業を保護する目的で、特許権よりも実用新案権を重視する傾向が強く、海外企業の自国進出を妨害する例が多い。中国も、実用新案の保護を強化している国の一つだ」と説明した。
問題は、中国では実用新案権の場合、技術評価請求がなくても権利行使が可能だという点だ。侵害警告状を送るために技術を評価する韓国とは状況が完全に違う。そのため、中国に進出した海外企業に不利になっている。
スマートフォン117向けタッチグローブを開発しているA社は、中国の流通網を確保するため、中国の電子商取引専門大手「アリババ」と製品の供給契約を結んだ。しかし、中国市場にタッチグローブを販売し始めると、類似の実用新案権を持った3つの会社がアリババに侵害警告状を送った。
アリババは、昨年、A社に対し、実用新案侵害物品を納品したという理由で、一方的に契約解約通知状を送った。 ユー代表弁理士は、「中国は、自国企業を保護するため、特許権と同様に実用新案権の行使を重視している。中国進出のためには、特許だけでなく実用新案の先行技術調査までを事前に行う必要がある」と説明した。
実用新案で企業が訴訟に巻き込まれる例も多くなっている。コンテナ盗難防止の取っ手の実用新案権を出願した中国メーカーは、韓国企業が中国に設立したB社が実用新案権を侵害したとして訴訟を提起した。裁判所は、中国メーカーが実用新案を登録した以後から、B社は製品販売を行ったとし、侵害判決とともに民事責任を問うた。実用新案は、特許より進歩性の判断基準が低く、無効化も難しいというのが中国IP専門家の説明だ。
知財専門家は、中国進出のためには、「簡単な技術でも製品に適用されているものなら、必ず実用新案を出願しておくべきだ。中国企業の実用新案権について事前検索と回避設計、対応策などをあらかじめ調査する必要がある」と指摘した。
チシム特許法律事務所が調査した資料によると、韓国が中国に出願した産業財産権の中で、実用新案権の割合は2%に過ぎず、中国の登録件数に比べると、非常に低い水準となっている。
クォン・ドンジュン記者
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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