知的財産ニュース 韓国知財セミナー「韓国企業の知財動向及び知財ライセンスのポイント」(特許庁委託事業)を開催しました。

2013年10月17日

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韓国知財セミナー「韓国企業の知財動向及び知財ライセンスのポイント」(特許庁委託事業)を開催しました。

韓国大手企業が躍進する中、ビジネスパートナーとして韓国企業との連携がますます重要になっております。一方、日本企業にとって、自社の技術を保護しつつも、その活用を図り、広くビジネスにつなげていくことが喫緊の課題となっております。その際、知的財産の適切なライセンスが成功のカギとなることは、いうまでもありません。

そこで、去る9月10日、11日、東京と大阪にて、韓洋特許法人の金世元パートナー弁理士を講師としてお招きし、韓国企業と知的財産のライセンスを行う際、注意すべき事項や実務的な知識についてご紹介するとともに、今後の韓国企業の動きを占うために、特許などからみたサムスン電子、LG電子の技術動向について併せてご紹介させていただきました。

本セミナーは、約200名のご参加を頂き、盛会裏に終了ができました。この紙面を借りて、広く御礼申し上げるとともに、セミナーの概要につきましてご報告いたします。

セクション1:特許出願などからみたサムスン電子、LG電子の技術動向

セクション1では、サムスン電子、LG電子の特許出願の状況を分析し、同社の知財戦略、技術動向をご紹介いただきました。

サムスン電子については、2005年に「特許経営宣言」を行っておりますが、その後、特に韓国特許出願を中心に、顕著に出願数を減らし、いわゆる「量」から「質」への転換が明確に見て取れます。一方、米国に対する特許の登録件数は、着実に増加させており、最近では、韓国特許よりも米国特許の方が多い状況となっており、顕著に米国を重視していることが伺えます。

図:サムスン電子の各国別出願件数(各国出願数は実出願数)

図:サムスン電子の国家別の特許登録件数現況

これは、サムスン電子として、米国が大口市場であり、また、訴訟も多いことから、ここに重点を置くことは当然ですが、例えば、日本企業で日本より他国の特許件数の方が多いというのは、普通は考えられず、サムスン電子の特徴的な特許戦略が理解できます。

また、中国に対しては、出願件数を大幅に減らす傾向にあり、ここも日本企業の戦略とは一線を画していると思われます。サムスン電子としては、中国を含めた新興国における特許権のエンフォースメントの実効性や、そのような国に先端技術を出願することの必要性について疑問視しており、それよりも、意匠などエンフォースメントしやすい権利を重視しているといわれておりますが、今回の調査でも、中国に対する特許出願の減少に対し、意匠出願は堅調であり、その傾向がうかがわれる結果となっています。

図:年度別各国別デザイン登録状況

また、今後の動向ですが、特許出願数でいえば、移動通信/情報通信が多く、次に半導体、家電製品、最後にディスプレイ、その他の技術の順番となっており、直ちに次世代技術の動向を把握することはできませんが、その他の技術分野を見ると、件数こそ多くないものの、ソフトウエア、バイオ、太陽電池、ロボット、医療機器など、幅広い出願が増えている状況です。

図:その他の分野における代表的なIPCの年度別比率(全体)(韓国)

一方の、LG電子ですが、同社も、近年では量から質への転換が進むとともに、米国重視であるという点でサムスン電子との類似点が多くなっていますが、一方で、サムスン電子に比して、家電分野の出願が多く、家電のLG電子のイメージどおりの出願構造となっています。

図:LG電子の国家別における特許登録件数の年度別推移

セクション2:韓国における知財ライセンスの状況と実務

セクション2では、韓国におけるライセンシングの最新動向、韓国のライセンシング関連法規、日韓の技術移転に関する注意点、ライセンス契約の実務についてご説明いただきました。

ライセンシングに関する韓国の特徴として、ライセンシーを保護する傾向が強く、特に、公取のクァルコムへの課徴金が示唆するように、海外企業の不当なライセンシング、韓国中小企業所有の技術保護に神経を尖らしていることをご説明いただきました。また、権利侵害訴訟と関連し高い無効率、低い損害賠償額など、韓国における知財権保護に対する認識不足のご指摘がありました。

韓国企業は、日本企業からの技術移転に対するニーズが強く、競合技術の確保を主要目的としたライセンスが多く、また、中小企業は技術的なアイデアを、大企業は量産可能な技術の供与を求める傾向があるとのことです。

その他、韓国の調和重視・上命下服といった韓国企業文化、豊富な特許紛争経験等、韓国企業の特徴の説明のほか、実務上の注意点として、例えば、韓国の場合、法律で子会社の範囲が変わるため、契約書で定義すること、韓国特許法では輸出が実施行為に含まれないため、契約書で取扱いを規定すること、製造物責任を明確にすること、専用実施権は登録しなければ効力が発生せず、また、通常実施権は登録しなければ第三者登録効が発生しないため、実施権ときちんと登録することを明確にすることなどの説明をいただきました。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
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