知的財産ニュース 商標ブローカーの横暴から零細商人を保護する

2013年4月30日
出所: 韓国特許庁

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「公正な商標制度の確立を実現するための改正商標法」を10月から施行

韓国特許庁は、零細商人が先に使用していた商号の先使用権認定要件を緩和する内容の商標法改正案が4月5日に発表され、6ヵ月後の10月6日から試行されると発表した。

今回の改正は、商標権を乱用し、不当な利益を得ようとする商標ブローカーに歯止めをかけることが目的で、新政権の掲げる経済民主化の後ろ盾として、商標ブローカーの横暴から零細商人を保護することに重点を置いた。

一般的に飲食店や美容院などの地域の零細商人は、商標登録を行わず、管轄税務署に事業者登録だけを済ませ、自分の商号を看板などに使用しているが、商標ブローカーがこの隙間を狙って先に商標を登録し、零細商人に「商標権を侵害された」として警告状を送りこんで和解金などを求める、いわゆる「商標狩り」で泣き寝入りしている零細商人が数多くいた。

実際に、忠清北道で小さな食堂を営んでいたA氏は、昨年、商標権者と名乗る者から「食堂看板に使われている商標が商標権を侵害したため、和解金200万ウォンと、継続使用するためには、毎年使用料を支払うこと」を求められた。当時は、不景気で商売も振るわなかったが、専門家に聞いたところ「現行法では成す術がない」と言われ、結局、店を畳んだ。

問題は、商標法上、先に使用しているかどうかとは関係なく、先に出願して商標登録を受けた商標権者に独占排他的な使用権が付与され、商標権を侵害した場合、「7年以下の懲役、又は1億ウォン以下の罰金」が科されることが定められているため、こうした商標ブローカーの横暴を防ぐことができない。

現行の商標法上、先使用商号を保護する規定はあるが、「一般需要者に特定の商品やサービスの出処表示として認識されていなければならない(周知性)という要件」を満たさなければならないが、地域の零細商人の場合、周知性の要件を立証することが難しく、法的に対応するには費用がかかり、看板を取り替えたとしても和解金や使用料の支払いを余儀なくされていた。

今回の改正では、零細商人が善意で先に使用した商号については、上記の周知性要件の立証無しにも使用を続けることができるよう、「商号の先使用権」認定要件を緩和し、和解金の支払いや、看板の取り替えなどの費用が発生しないようにし、商標権者の混同防止表示請求権も認められないように法を見直し、商標ブローカーの横暴から地域零細商人の保護の強化を図った。

また、今回の改正は、公正な商標使用秩序の確立と国民の権益を保護するため、商標不使用取消し審判制度の落ち度を悪用して実際に商標を使用しようとする者に害を与えるなどの行為を防止するほか、不得意な事由により、意見提出期限を途過した出願人の救済手段を設けるなどの内容を制度改正案に反映した。

韓国特許庁商標審査政策課カン・キョンホ課長は、「正当な商標権利者の権利は、一層強固に保護すべきで、その濫用は、商標制度の目的に反するだけでなく、経済民主化を阻害する行為だ。模倣商標の登録防止にとどまらず、商標権濫用の防止にも格別な努力を傾注していきたい」と述べ、今後ともこうした政策基調を貫いていく方針を明らかにした。

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