知的財産ニュース 社会的企業 知的財産でアップルグレードを

2013年4月29日
出所: 韓国特許庁

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2012年に社会的企業のブランド・デザイン開発事業を支援した結果、売上23.9%、雇用2.9%増
社会的企業の負担を軽減するため、今年から企業分担金の割合を引き下げ(10→5%)

韓国特許庁は、2011年下半期から推進してきた社会的企業(予備の社会的企業も含める)に対し、ブランド・デザイン開発支援を拡大していくことを決めた。

最近、社会的問題に対する経済的アプローチとその解決の必要性が注目され、社会的企業など、新しい企業モデルに対する関心が高まっており、中央庁・地方自治体などを通じて様々な政策的取り組みが行われている。

韓国特許庁も2011年下半期のモデル事業から始め、社会的企業に対する「ブランド及びデザイン開発事業」を行うなど、社会的企業の知的財産創出に向けた支援を推進中だ。
※支援の実績:2011年5件(ブランド2件、デザイン3件)、2012年24件(ブランド18件、デザイン6件)

特に、「ブランド・デザイン開発事業」を通じて知的財産を創出した社会的企業の売上高、雇用者数など、経営が大きく改善され、出願件数も増えるなど、同事業の効果が示された。
※出願の推移(件、2011→2012):(商標権)13→20、(デザイン権)0→(9)
※経営成果の推移(2011→2012):(売上高)12,063→14,958百万ウォン、(雇用)404→416人

図:売上高の変化の推移グラフ、雇用者数の変化の推移グラフ

また、支援を受けた企業は、ブランド価値と企業のイメージ向上に伴い、販路開拓に成功して持続的な売上高の増加などを期待しているという。

(社)ダサン文化振興院の「コンセミ」、「幸せな仕事場事業団」などは、新規開発されたブランドとデザインが企業のイメージ向上にプラスな影響を与え、新たな販路開拓という結果として表れたと評価した。
また、ブランドとデザイン経営の重要性を認知できる良いきっかけとなり、今後の製品ラインの拡大においても、一貫性のあるブランドとデザイン戦略を確立できたと満足を示した。

しかし、知財担当者の不足(6人)や、支援事業の特徴などにより、企業が独自の知的財産を創出・活用する能力を育成できないといった面は、問題点として確認された。

これについて韓国特許庁は、これまでの事業を進める過程で指摘された問題を解消し、事業の拡大などに向け、関連部署と機関との連携を積極的に模索することを決めた。

まず、社会的企業の財政状況※などを踏まえ、企業分担金を現在の10%から5%に引き下げる予定だ。これまで、中小企業と同じ水準の企業分担金が社会的企業の事業参加を制限する要因となってきたことを考えると、今回の見直しによって社会的企業の負担の軽減と事業参加の拡大などが期待される。
※社会的企業287社のうち、214社(74.6%)が営業損失の状態にあり、95社(33.1%)は、当期の純損失状態であると調査された(2009年末ベース、韓国社会的企業振興院)

ブランドとデザインの開発に偏重されていた事業内容は、社会的企業のニーズやタイプなどを反映し、多角化していく予定だ。

社会福祉、文化・芸術関連分野の社会的企業に対しては、ブランド開発と経営コンサルタント支援を優先的に推進し、技術集約型の社会的企業、ソーシャルベンチャーなどは、特許関連教育、出願費用の支援などを集中的に支援するなど、社会的企業の業種分野別に特化された支援を行い、支援を受ける企業の満足度を高めるという。

また、社会的企業に対しアンケート調査を行い、正確な需要を把握した後、2014年からは、コンサルタント、知財教育、図形商標開発※など、新たな事業も積極的に推進する計画だ。
※図形商標開発(2~3ヵ月、約150万ウォン)の場合、ブランド開発(5ヵ月、約22,500万ウォン)より開発の期間と費用が少なく、短期間で直接的な支援が期待される。

また、弁理士・デザイナー・大学の教授など、民間専門家のボランディアによって進められる「知的財産ボランティア事業」との連携を通じ、社会的企業の支援方式を多様化し、その効果を最大化していく予定だ。
2012年から推進してきたボランティア活動事業の支援対象は、自己負担が難しく、支援が急がれている小企業に焦点を合わせているため、社会的企業の優先的支援も可能とみられている。

韓国特許庁産業財産経営支援チームのキム・ウスンチーム長は、「最近、様々な分野で社会的企業の役割は注目されているなか、特許庁のブランド・デザイン開発事業の拡大は、質を高められるチャンスにつながるだろう」と述べ、これからも問題点を見直し、支援を続けていく予定だと付け加えた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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