知的財産ニュース 弁理士の特許紛争対応能力を強化する

2013年9月17日
出所: 韓国特許庁

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52年ぶりに弁理士法を全面改正 ロースクール・理工系教育の履修者優遇

特許庁は、去る6日から弁理士の専門性と公共性を強化するために弁理士法全面改正案を立法予告した。

推進背景

1961年に制定されて以来52年ぶりの弁理士法全面改正は、サムスン・アップルの特許戦争などグローバル特許紛争が深刻化する環境変化の対応に向け、弁理士の専門能力強化のため改編することとなった。
企業価値において特許権など無形資産が占める割合が急増し、特許創出・活用能力が企業の成功を左右する知的財産の時代を迎え、強い特許を創出できる弁理士の役割が重要になった。
このような観点から、企業の優秀なR&Dの結果を明細書に整理して強い特許をつくり、さらに、紛争に対し効果的に対応するために弁理士の明細書作成など実務能力を強化し、ロースクール出身弁護士など多様な人材を弁理業界で確保する必要がある。

従って特許庁は、学界・産業界・法曹界・弁理士界など各界の専門家による「弁理士制度改善委員会」を構成し6ヵ月間に渡って深度ある論議を経て後、公聴会、関係部署の協議などを行い、改正案を作成した。

主な内容

今回の改正案では、弁理士資格要件の強化、弁理士試験免除の拡大、権利・義務強化など弁理士の専門性強化に関する改正案が盛り込まれている。

一つ目は、弁理士の実務能力を高めるために弁理士試験に合格した後に高度の高い実務研修を修了した者に対して弁理士の資格を付与する。

現行では、弁理士試験に合格すれば自動的に弁理士資格が取得でき、研修は登録要件に過ぎなかったため、弁理士の実務能力が不足していると、企業などの不満が多かった。
※弁理士の業務能力不足(38.8%)、専攻人材不足(21.8%)であり、知的財産法律専門家の確保が最も大きな課題(弁理士事務所雇用構造実態調査、2010、特許庁)

従って、弁理士資格取得要件として知財権実務研修を付加し、弁理士が実際に業務を遂行するために必要な明細書の作成・権利分析などの実務能力を育てるようにする。

また、実務研修が弁理士の能力強化に実質的に役立つよう、海外紛争事例などの教育課程の多様化、能力評価試験を通過した後で研修終了、研修教育優秀者に対し特許庁の審査官として特別採用など、実務研修を内実かつ厳格に運用する予定である。
※日本の場合も2007年に弁理士法を改正し、試験合格及び実務研修履修後に資格を付与

弁理士資格取得制度の変更

二つ目は、弁理士の法律的専門性を強化するためにロースクールの知財権教育履修者を優遇する。

理工系など多様な専攻背景をもつ人材が、2009年からロースクールに入学して弁護士資格を取得しているので、ロースクールを通じて知財権専門人材養成に対する期待が増大している。

しかし、ロースクールの知財権教育が活性化されてなく、知財権専門家の輩出が憂慮され、ロースクールにおける知財権教育を前提に弁理士資格を付与する必要がある。

よって、ロースクールにおいて知財権の科目を一定学点以上を履修するか、弁護士試験において知財権法を選択して合格した場合は、弁護士試験合格者と同様に研修を履修するだけで弁理士資格を付与する。

これを通じてロースクールの知財権教育の正常化を図ることができ、知財権分野への進出を希望する弁護士はロースクールにおいて知財権教育を通じて負担なく弁理士資格を自動的に取得することができる。

ただし、ロースクールにおいて知財権教育を受けてない弁護士が弁理士の資格を取得するには、特許庁長が実施する特別受験を受けなければならない。

図:弁護士の弁理士資格取得制度変更

三つ目は、弁理士の技術的専門性を強化するために理工系専攻教育の履修者を優遇する。

自然科学概論科目は、特許業務遂行のための理工系基礎知識を検証するために導入したが、既に理工系の知識を持つ者には試験の負担が大きく、これにより試験を避ける傾向もあった。

これにより、理工系科目を一定の学点以上を履修すれば弁理士の1次試験において自然科学概論を免除し、受験生の試験負担を減らして優秀な理工系の人材が弁理士になるよう誘導した。

一方、実務経験が豊富な企業の知財権実務者に対する弁理士資格取得の機会も拡大し、10年以上企業などで実務を専従した者は、弁理士1次試験の産業財産権法を免状する。

このように弁理士試験の一部免除拡大により、理工系出身の企業実務者は弁理士1次試験において民法概論と英語のみ受験を受ければよく、技術と実務を備えた優秀人材の弁理士進出が容易となる見通しだ。

弁理士試験一部免除制度の拡大

1次試験(客観式、4科目)

2次試験(叙述型、4科目)

自然科学概論(理工系学点履修時に免除)

産業財産権法(企業10年経歴時に免除)

民法概論

英語

特許法

商標法

民事訴訟法

選択科目

四つ目は、弁理士の公共性を強化するために弁理士の権利・義務を強化する。

特許権など国民の財産権を代理する弁理士の倫理水準を高めるため、秘密維持義務、兼職制限など弁理士が守るべき義務条項を大幅に強化

弁理士懲罰処分により登録が取り消された者の欠格期間を2年から5年に延長するなど、公人としての弁理士の品格を損なう場合、弁理士資格が制限される期間も延長する。

また、弁理士の社会的公益ボランティアのために弁理士の知的財産に関する公益活動義務を新設する。

経過処置

今回の全面改正により弁理士資格・試験制度などが大きく変更されることになるが、弁護士とロースクール在学生などの期待利益及び弁理士試験受験生の信頼を保護するため、3年の猶予期間を置いて施行する予定である。

これにより現在弁護士資格を持つ者とロースクール在学生は、法改正以降も特許庁登録だけで弁理士資格を受けることができる。

期待効果及び今後の計画

特許紛争が激化する時代環境において、今回の弁理士法全面改正に伴う弁理士及び弁護士の紛争対応能力強化は、結局は企業と国民に対し大きく役立つものとなる見通しだ。

特許庁は立法予告などにより改正案に対する意見収集を行った後、2014年の国会において最終改正案を提出する計画である。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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