知的財産ニュース アップルによる「無差別的な特許訴訟」の可能性が浮上

2012年8月26日
出所: デジタルタイムズ

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米国の陪審員、一方的な「デザイン権の独占権」を宣言
スマートフォンの生態系を脅かすという懸念の声が高まる…業界はパニックに

サムスン対アップルの米国陪審員の評決の影響

米国の陪審員がアップルの一方的なデザイン独占権を認めたことで、スマートフォン業界の脅威となるという懸念の声が高まっている。アップルは、サムスンの関連商品について販売の永久差し止めを申請したと知られている。他のメーカーにも「無差別的な特許訴訟」を提起するとみられ、関連業界に大困難を引き起こしかねないということだ。

「角丸長方形はアップルが創造(?)」=アップルのデザイン独占権を認定

サムスン対アップルの特許訴訟で米国の陪審員は、アップルが主張する全てのデザイン、特許権を認めた。画面端部までスクロールさせた際、少し画面をスクロールアップする機能のバウンスバック、マルチタッチ・ズームなどの機能をはじめ、アイフォンの表デザインとベゼル、アイコンの配列などの6件だ。問題となった角丸長方形、角丸四角形のアプリケーションの形など、ユーザーに馴染まれているスマートフォン端末のデザインも全てアップル固有の独占的権利となった。

その反面、陪審員団は、サムスンが提起した通信特許技術は完全に無視した。陪審員団が感情的にアプローチできるデザイン特許部門で善と悪を区別した一方で、サムスン側が求めた通信技術特許は、事実上、無視した可能性が高い。こうした結果は、陪審員団が要請した賠償額を見ると明らかだ。陪審員は、サムスンがアップルのデザイン特許を侵害した補償金として10億ドルの超える賠償金を要求し、一方、アップルがサムスンに支払う補償金は全くないという極端な決定を下したのだ。

陪審員の評決ミスも提起‐「競争そのものを脅かした」

グローバル法律専門サイトや外国メディアは、陪審員評決の信頼性と充実性、公正性に対し、批判の声を高めている。今回の評決に決定的な役割をした陪審員は、女性2人、男性7人で構成された9人だ。

イギリスのガーディアン紙のDan Gillmor記者は、「陪審員は、たった2日で100ページに及ぶ膨大で複雑な事件を評決した。それは、陪審員が法廷に入場する時から既に決定していたことを意味する。」と指摘した。また、「陪審員は、陪審員室で大半の時間を20ページの様式を埋めることに費やしたに違いない。全てにおいてアップルの要請を認めた。」と批判した。また、Charles Arthur記者は、「米国でオラクルがグーグルを相手にアンドロイドモバイルOSが自社の特許を侵害したとして提起した訴訟で、陪審員は、2週間にわたってグーグルが広範囲に無罪だという評決を出した」として、陪審員の評決の充実性に疑問を提起した。

IT専門ウェブサイトの「The Verge」は、陪審員の評決様式を分析した結果、陪審員自らがアップルの特許を侵害していないと判定した「ギャラクシーTab10.1 LTE」に220万ドル、インターセプトに200万ドル以上の賠償額を記載するミスを犯したと報じた。

陪審員が海外のメディアとインタビューを行うにつれ、こうした矛盾が明らかにされている。陪審員の1人は、C・netとのインタビューで、サムスンの主な主張の一つだった「先行技術」についての議論は、結論を出し難いという理由で、結論を出さないまま、「ないと仮定して」アップルのデザイン権侵害を判断したと述べた。

このように、問題が明らかになりつつある陪審員の判決がスマートフォン業界にマイナスの影響を与えるということにも多くの専門家は懸念を示している。角丸長方形をはじめ、広範囲なスマートフォン端末のデザインをアップルが独占的に所有することで、直ちに他のスマートフォンメーカーの米国内の販売が委縮しかねないということだ。

グローバル法律専門ウェブサイトのGroklawは、米国バージニア州法科大学院のMichael Risch教授の言葉を引用しながら、「米国のデザイン特許法が壊れた」として「本事件は、最高裁で扱われるべきだ」と報じた。ある外国メディアは、「未曽有の独占企業を誕生させたアップルの訴訟で、我々は、サムスンや他のメーカーのモバイル商品が輸入禁止されることを目撃することになる。たとえ、それが現実のものになったら、結局は、テクノロジーマーケットの`競争′そのものが脅かされるだろう。」と指摘した。

朴ジソン・金ユジョン記者

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