知的財産ニュース ABSより安全な次世代ブレーキ登場

2012年12月4日
出所: 韓国特許庁

347

次世代ブレーキシステムの特許出願が増加基調

最近、ABS[1]より進化した次世代ブレーキシステム技術が開発され、今後、車両の安全性向上や事故防止に大きく貢献すると期待されている。

これまで最先端ブレーキとして認識されてきたABSは、急ブレーキを踏む際の制動距離の短縮による効果が評判を得ており、大型車両への搭載を義務付けるなど、今や一般化した技術として定着した。

最近では、自動車技術の中核的な目標として燃費の向上とともに車両の安全性向上問題が大きく注目され、制動機能をはじめ、左右の滑りや揺らぎをより大きく改善したブレーキシステムの開発が積極的に行われている。

韓国特許庁によると、最近10年間ブレーキ設備全体の出願は、緩やかな減少基調を示していたのが最近増加に転じたが、次世代ブレーキシステムの出願は、増加トレンドが続いており、対照的な結果となった。

特に、(株)マンドが全体出願のうち37%(217件)を出願し、特許技術の先取りのための研究開発がもっとも積極的に行われているものと分析されたほか、現代モビス、現代自動車がその後を続き、海外出願人では、ドイツのボッシュが9%(53件)を出願して国内企業と競争している。

国籍別の出願動向は、韓国の80%(471件)に続きドイツが16%(94件)を出願し、日本や米国より多く出願して次世代ブレーキ分野で競争相手国より技術的な優位を占めている。

ABSに代わる次世代ブレーキシステムの主要技術には、ESC、EHB、EMB、回生ブレーキシステムなどがある。

ESC(Electronic Stability Control、横滑り防止装置)は、車体に登載された各種のセンサから感知されたデータに基づき、車両の滑りをリアルタイムで感知して各車輪の制動力を個別に制御することで、カーブの走行時に操行性能を向上させた技術で、次世代ブレーキの出願のうち6割(353件)を占めている。

EHB(Electro-Hydraulic Brake、電子液圧ブレーキシステム)は、エンジンの動力によって動いた従来の油圧式ブレーキを改善したもので、電気モーターにより油圧をつくって制動する方式だ。エンジンの停止時にも制動が可能で、ハイブリッド自動車に適用されている。

EMB(Electro-Mechanical Brake、電子機械ブレーキシステム)は、従来の油圧式をブレーキ液が不要な機械式に転換したもので、各車輪に登載された電気モーターが直接力を加え、制動力を形成する方式だ。油圧式より精密的な制御が可能だ。最近開発が進んでいる電気自動車に利用されるとみられている。

また、回生ブレーキシステムは、ハイブリッド自動車の開発と相まって導入された技術で、各車輪に取り付けられた発電機を稼働させ、制動時に消耗されるエネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに保存した後、保存された電気エネルギーを再使用するシステムだ。現在実用化され、燃費の向上に大きな効果を示している。

特に、こうした次世代ブレーキシステムは、従来に比べて電子コントロール機能が大きく向上されたもので、最近開発されている知能型自動車の電子コントロール対象に統合されて制御される場合、制動性能の向上とともに、自動運行機能、走行性能の改善、走行時の安楽さの向上にも大きく貢献すると見込まれている。

韓国特許庁の関係者によると、次世代ブレーキシステムは、未来型の自動車であるハイブリッド自動車、電気自動車、スマート自動車などと融合され、さらに発展し、特許出願も車両の安全性の向上に対するドライバーのニーズに応え、増加トレンドは続くとみられている。

参考資料

1. ブレーキシステムの技術発展の動向

図:ブレーキシステムの技術発展の動向

2. 最近10年間のブレーキ分野における出願動向

ブレーキ全体の特許出願の動向

年度別の出願件数

出願の割合

年度別の出願件数(単位:件)

01年

02年

03年

04年

05年

06年

07年

08年

09年

10年

韓国

305

344

334

377

362

318

343

251

190

251

3075

海外

55

67

39

31

52

50

49

42

29

53

467

全体

360

411

373

408

414

368

392

293

219

304

3542

出願の順位及びシェア

順位

出願人

出願件数

1

マンド

897

2

現代自動車

822

3

現代モビス

496

4

ボシュ

127

5

起亜自動車

116

6

コンチネンタル・テベス

82

7

韓国デルファイ

71

8

トヨタ自動車

28

9

ルカス・オート・モティブ

22

10

現代オートネット

17

図:出願の順位及びシェア円グラフ

国籍別の出願動向及びシェア

国籍別の出願動向

01年

02年

03年

04年

05年

06年

07年

08年

09年

10年

韓国

305

344

334

377

362

318

343

251

190

251

3075

ドイツ

25

33

19

9

24

29

31

24

15

43

252

日本

21

19

10

12

12

11

9

10

8

3

115

米国

2

2

5

2

3

5

6

1

2

2

30

フランス

0

0

0

1

6

2

0

2

2

2

15

その他

7

13

5

7

7

3

3

5

2

3

55

全体

360

411

373

408

414

368

392

293

219

304

3542

国籍別の出願シェア

3. 次世代ブレーク分野の出願動向

年度別の出願件数

出願の割合

年度別の出願件数(単位:件)

01年

02年

03年

04年

05年

06年

07年

08年

09年

10年

韓国

5

40

30

31

62

41

67

52

62

81

471

海外

16

3

1

7

11

20

19

7

12

25

121

全体

21

43

31

38

73

61

86

59

74

106

592

4.次世代ブレーク分野の出願順位及びシェア率

順位

出願人

出願件数

1

マンド

217

2

現代モビス

187

3

ボッシュ

53

4

コンチネンタル・テベス

45

5

現代自動車

44

6

ルカス・オート・モティブ

7

7

ミシュラン

6

8

韓国デルファイ

6

9

日立オート・モティブ

6

10

コンチネンタル・オート・モティブ

5

図:次世代ブレーク分野の出願順位及びシェア率円グラフ

5.次世代ブレーク分野の国籍別の出願動向及びシェア率

01年

02年

03年

04年

05年

06年

07年

08年

09年

10年

韓国

5

40

30

31

62

41

67

52

62

81

471

ドイツ

14

2

1

3

8

19

15

5

10

17

94

フランス

0

0

0

3

3

1

0

1

2

2

12

日本

2

1

0

1

0

0

0

0

0

3

7

米国

0

0

0

0

0

0

2

1

0

0

3

その他

0

0

0

0

0

0

2

0

0

3

5

21

43

31

38

73

61

86

59

74

106

592

国籍別の出願シェア率

6.技術分野別の出願件数及びシェア率

順位

技術分野

出願件数

1

ESC

353

2

回生ブレーキ

108

3

EMB

69

4

EHB

62

図:技術分野別の出願件数及びシェア率円グラフ


注記

[1] ABS(Anti-Lock Brake System、アンチロック‐ブレーキシステム)とは、急ブレーキを踏んだ時、車輪の回転が完全に停止する減少、いわゆる「ロック減少」による車両の滑りを解消するため、短時間の間隔に車輪の回転を許容してロック減少を防止し、制動距離を短縮する。

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