知的財産ニュース 韓国企業の輸出の道、足を引っ張る貿易委員会

2012年2月16日
出所: 電子新聞

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キヤノンは去る2010年5月、韓国の中小製造企業5社が、自社のプリンタの核心技術である感光ドラムの特許を侵害したとして、貿易委員会に製造・輸出禁止を要請した。昨年9月、嫌疑なしとの最終結論が下され、輸出の道は塞がれずに済んだが、国内の中小企業はその間痛手を被った。

ドイツのオスラム社は、LGイノテックの発光ダイオード(LED)パッケージの技術が、自社のLED照明技術の特許を違反したとして、昨年7月、貿易委員会に製造・輸出禁止を申請した。LGイノテックは、反論資料を追加で提出するため、貿易委員会の判定期間の日程を去る10日から来る5月に延期申請し、特許侵害をしていないことを立証するために全神経を尖らせている。

「貿易委員会が韓国企業の輸出を自ら妨害している。」

外資系企業が知識経済部貿易委員会所管の「不公正貿易行為調査および産業救済に関する法律(2001年制定)」の盲点を最大限に活用している。

貿易委員会が、海外企業のダンピングや知的財産権違反など、不公正な貿易行為と輸入増加などによる国内産業への被害を防ぐ目的で作った法が、逆に国内企業の輸出活動の足を引っ張っている。

政府が外国企業の特許権を侵害した容疑で自国の企業を調査し、製造・輸出中止処分まで下すように法で明示した国家は韓国が唯一。規制緩和が急務だ。

この法は、知的財産侵害物品などを輸出したり、輸出を目的に国内で製造する行為を禁止している。誰でも特許侵害行為を貿易委員会に調査要請できるように規定している。

外資系企業は、特許侵害容疑を理由に領域内への輸入・販売禁止より強力な製造・輸出中止を韓国政府に頻繁に要請している。国内企業の輸出活動を萎縮させるための戦略だ。韓国が米国などの先進国と違い、これを許可する制度的なシステムを構築したためだ。外資系企業は、国内の輸出企業を攻撃する際に特許権利保護の定番事項として活用している。

実際、貿易委員会によれば、去る2001~2011年の間に、外資系企業が貿易委員会に不公正貿易行為調査で国内企業の製品製造・輸出中止を申請した件数は13件で、年平均1件以上。このうち5件が2009~2011年の3年間に申請され、外資系企業が貿易委員会を韓国の輸出企業に対し圧迫するツールとして乱用していることが明らかになった。

韓国企業は貿易委員会から不公正貿易行為調査を受けて、最終判定結論が下される6~10ヵ月間、特許侵害をしていないことを立証しなければならない行政負担と海外取引先を維持・確保するのに苦労している。

貿易委員会不公正貿易調査チーム関係者は「国内制度とは違い、米国の国際貿易委員会は特許侵害時に自国の企業を対象にした輸出を禁止する規定がない」とし、「しかし、国内産業保護とともに公正な貿易秩序の確立も重要だ」と述べた。

アン・スミン記者

主要国における税関措置制度比較
区分 役割と機能

米国

  • 米国内の産業保護のための輸入禁止など税関措置。
  • 特許技術の米国内における産業寄与の程度により調査可否を判定。

ヨーロッパ

  • 統一法に基づき、EU圏域で輸入される知的財産侵害品の輸入禁止は許容。
  • EU域外で輸出される特許侵害品に対し、輸出禁止など税関措置規定はない。

日本

  • 関税定率法に基づいて、特許侵害製品の輸入禁止通関禁止の措置ができる。
  • 外国企業が、自国の企業を対象に、輸出禁止など申請許可をしていない。

韓国

  • 特許侵害など、不公正輸出入行為全て規制(国内企業の輸出規制に逆差別問題含む)
  • 外国企業が国内産業に寄与したことがなくても、韓国特許のみ保有すれば、国内企業相手に輸出禁止など税関措置を許容。

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