知的財産ニュース 特許庁「医薬品許可-特許連携制度」積極的に支援

2012年4月27日
出所: 韓国特許庁HP

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韓国特許庁は、医薬品許可-特許連携制度の早期定着のために、食品医薬品安全庁を積極的に支援する計画だ。

去る3月15日に韓・米自由貿易協定(FTA)が発効されたことに伴い、医薬品許可-特許連携制度が施行された(韓・米FTA協定文18.9(5),資料1参照)。

許可-特許連携制度は、ジェネリック(複製)医薬品の品目許可申請が食薬庁に提出される際、このような許可申請の事実を関連新薬の特許権者に通知し、新薬の特許権者が同ジェネリック医薬品が自身の特許を侵害するのか否か判断を受けることができる侵害予防手続きを構築するように規定している。施行時期として、新薬の特許権者に対する通知は韓・米FTA発効と同時で、侵害予防手続きの構築は韓-米FTA発効後3年間猶予される。

ジェネリック医薬品の品目許可を申請する者が、関連する新薬の特許権者に許可申請の事実を通知するためには「グリーンリスト」という特許目録集(米国のOrange bookに相当)を作成しなければばらない。グリーンリストには、特許権者が登載してほしいと要請した新薬の特許リストが食薬庁の審査を経て登載され、登載された新薬特許の特許権者にジェネリック医薬品許可申請の事実が通知される。

医薬品特許登載業務は、医薬品許可資料と特許請求範囲などを比較・検討して新薬特許の「グリーンリスト」登載の有無を決定するもので、食薬庁の医薬品許可業務と特許庁の特許審査業務の双方に精通した専門知識を必要とする。

これに伴い、許可-特許連携制度の運営のために食薬庁で最近スタートさせた医薬品許可-特許連携制度運営T/F チーム(以下「T/Fチーム」)には、食薬庁関係者とともに特許庁の薬務職審査官2名が参加して活動している。T/F チームの主要業務は、医薬品特許登載業務以外に関連法規の制・改定および医薬品特許関連訴訟の支援などがある。

一方、新薬の特許権者が提起することができる侵害予防手続きには、法院(裁判所)の特許侵害訴訟、特許審判院の権利範囲確認審判などがある。新薬の特許権者がジェネリック医薬品の品目許可申請者から通知を受けて訴訟または審判を提起すれば、判決若しくは審決がある時まで、審・判決が無ければ一定期間許可が保留される。

特許庁は医薬品許可-特許連携制度と関連して新薬の特許権者が審判を提起すれば、これを迅速に処理して許可手続きが早く行なわれることで、国内製薬会社の被害が最小化されるようにする計画だ。

また、許可-特許連携制度が導入されれば、特許紛争率が制度導入前の27%から40%程度に増加すると予想される。(韓・米FTA後続対策製薬産業競争力強化方案、保険福祉部2007.6)従って、特許庁は特許新薬に対する国内・外の特許紛争資料を分析・提供することで、国内製薬会社が不必要な特許紛争に巻き込まれず、特許紛争時に適切な対応戦略を樹立するように支援する計画だ。

今後も、特許庁は国内製薬業界のために許可・特許連携制度が早期に定着できるように食薬庁と緊密な協力体制を維持しつつ、同制度と関連して特許庁の役割が必要な事案は積極的に支援していく計画だ。

資料1:韓米FTA協定文18.9(5)

原文

  1. Where a Party permits, as a condition of approving the marketing of a pharmaceutical product, persons, other than the person originally submitting safety or efficacy information, to rely on that information or on evidence of safety or efficacy information of a product that was previously approved, such as evidence of prior marketing approval in the territory of the Party or in another territory, that Party shall:
    1. provide that the patent owner shall be notified of the identity of any such other person that requests marketing approval to enter the market during the term of a patent notified to the approving authority as covering that product or its approved method of use; and
    2. implement measures in its marketing approval process to prevent such other persons from marketing a product without the consent or acquiescence of the patent owner during the term of a patent notified to the approving authority as covering that product or its approved method of use.

翻訳文(ジェトロ注:以下、韓国語原文のとおり)

  1. 当事国が医薬品の市販を承認する条件として、安全性又は有効性の情報を初めに提出した人ではなく、他の人にそのような情報を援用するように許可又は当事国の領域若しくは別の領域で既に許可を受けた証拠とともに、既に許可を受けた品目に関する安全性又は有効性の情報の証拠を援用して許可する場合、その当事国は

    1. その物品又は許可された使用方法を含むもので、許可当国に通報された特許の存続期間中に市場に参入するために市販許可を申請する他の全ての人の身元を特許権者に通知するように規定しなければならない。そして、
    2. その物品又は許可された使用方法を含むもので、許可当国に通報された特許の存続期間中は、特許権者の許可又は黙認が無い場合、他の人がその物品を市販するのを防止できる手段を許可手続き内に履行しなければならない。

資料2:薬事法一部改正法律案

第5条第4号中「『保健犯罪取締まりに関する特別措置法』」を「『保健犯罪取締まりに関する特別措置法』」とする。

第31条の3及び第31条の4をそれぞれ次のように新設する。

第31条の3(医薬品特許目録)

  1. 第31条第2項又は第3項によって医薬品の品目許可を受けた者は、品目許可を受けた医薬品に関する特許権の特許権者、存続期間、特許請求範囲など保健福祉部令で定める事項(以下「特許情報」という)を医薬品特許目録(以下「特許目録」という)に登載しようとする場合、その品目許可を受けた日から30日以内に食品医薬品安全庁長に登載申請をしなければならない。
  2. 食品医薬品安全庁長は、第1項による登載申請を受けた医薬品に関する物質特許などが保健福祉部令で定める対象及び基準を充足した場合、該当医薬品に関する特許情報を特許目録に登載しなければならない。
  3. 第2項により、特許目録に登載された医薬品(以下「登載医薬品」という)の品目許可を受けた者は、特許目録に登載された特許情報を変更しようとする場合、その特許情報の変更がある日から30日以内に食品医薬品安全庁長に変更登載申請をしなければならない。
  4. 食品医薬品安全庁長は、第3項による変更登載申請の内容を確認して適切だと判断されれば、特許目録に登載された特許情報を変更しなければならない。
  5. 食品医薬品安全庁長は、登載医薬品に関する特許情報が第2項による対象及び基準を充足できなくなった場合には、職権で登載医薬品に関する特許情報を特許目録から削除若しくは変更することができる。
  6. 食品医薬品安全庁長は、医薬品に関する特許情報を特許目録に登載した場合若しくは登載医薬品に関する特許情報を削除又は変更した場合には、その内容をインターネットホームページで公告しなければならない。
  7. 第1項から第6項までに規定した事項の他に特許目録登載、登載された特許情報の削除・変更及び特許目録公告の手続き・方法などに関する必要な事項は、保健福祉部令で定める。

第31条の4(品目許可申請事実の通知)

  1. 登載医薬品の安全性・有効性に関する資料を根拠に第31条第2項又は第3項による医薬品の品目許可を申請した者は、該当医薬品が第31条の3第6項による食品医薬品安全庁長がインターネットホームページで公告したその特許が無効若しくは特許目録に登載された特許を侵害しなかったと主張する場合には、登載医薬品の特許権者と品目許可を受けた者(以下「特許権者等」という)に品目許可を申請した事実など保健福祉部令で定める事項を知らせなければならない。但し、次の各号のいずれかに該当する場合には、この限りでない。
    1. 登載医薬品に関する特許権であって、その特許情報が特許目録に登載された特許権(以下「登載された特許権」という)の存続期間が満了した場合
    2. 登載された特許権の存続期間が満了した後に販売するために品目許可を申請した場合
    3. 登載された特許権に対し、特許権者などが通知しないことに同意した場合
    4. 登載された特許権のうち、該当特許が無効若しくは品目許可を申請した医薬品が、登載された特許権の権利範囲に属さないという特許審判院の審決又は裁判所の判決を受けた場合
    5. 第1号から第4号までの場合に準ずる場合で、保健福祉部令で定める場合
  2. 第1項による通知の期限、方法、手続きなどに関して必要な事項は、保健福祉部令で定める。
    • 第42条第4項前段中「第32条」を「第31条の3、第31条の4、第32条」とする。
    • 法律第10512号薬事法一部改正法律第42条第4項前段の改正規定中「第31条の2」を「第31条の2から第31条の4まで」とする。

付則

第1条(施行日)この法律は「大韓民国とアメリカ合衆国間の自由貿易協定」が韓国に対しその効力を発生する日から施行する。但し、第5条第4号の改正規定は、公布した日から施行し、法律第10512号薬事法一部改正法律第42条第4項前段改正規定の改正規定は2012年3月31日から施行する。

第2条(医薬品特許目録登載申請に関する経過措置)この法の施行当時に品目許可を受けた者、又は輸入者が従来の規定により品目許可を受けた医薬品に関する特許情報を第31条の3第1項の改正規定により特許目録に登載しようとする場合、この法の施行日から3ヵ月以内に食品医薬品安全庁長に登載申請をしなければならない。

第3条(品目許可申請事実の通知に関する適用例)第31条の4の改正規定は、この法律の施行後に第31条の3第6項により、登載医薬品に関する特許情報がインターネットホームページで公告された翌日から第31条第2項・第3項又は第42条第1項によって最初に品目許可を申請した者から適用する。

資料3:許可・特許連携制度導入前後の許可手続き模式図

制度導入前

ジェネリック医薬品の許可段階で新薬特許に対する特許侵害の有無は確認せず、安全性・有効性が認められれば許可

制度導入後

ジェネリック医薬品の許可段階でジェネリック医薬品の許可申請者が新薬の特許権者に許可申請事実を通知するようにし、新薬の特許権者が特許侵害で審判又は訴訟を提起する場合、一定期間内に審決又は判決があれば、その時まで許可を保留

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