知的財産ニュース 海からリチウム抽出、リチウム確保に問題なし

2012年5月25日
出所: 韓国特許庁HP

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リチウムに対する関心が世界的に高まっている。リチウムは高いエネルギー保存密度と軽重量で携帯電話、ノートブックPC、ビデオカメラのような移動型電子機器と最近商用化段階にあるハイブリッド型電気自動車のバッテリー原料、航空機用軽合金原料、核融合の原料の三重水素の増殖材そして大容量電気エネルギー保存装置の原料としても使用されるため、その重要性は引き続き増加し、国家的レベルでの資源確保が非常に重要である。

このような多様な使い道があるにもかかわらず、陸上に埋蔵され商業的に採掘可能なリチウムは410万トン程度で、今後7~8年以内に枯渇すると見られる。特に、世界における埋蔵量のうち約50%をボリビアが占め、その大部分が「ウユニ」塩湖に集中しているなど地域別の偏りが顕著だ。その他もチリ、中国、アルゼンチン、オーストラリア、米国の砂漠地帯にある塩湖に制限されている。

しかし、海水には約2,300億トンにも達する膨大な量が溶けていることが知られており、希望を与えている。年間1億トンほどのリチウムを全量輸入に依存している韓国で、海水1リットル当たり0.17mg溶けているリチウムを選択的かつ効率的に回収することができる技術に対する関心が高まっている。

韓国特許庁によれば、海水からリチウムを回収する技術に関する特許出願は計37件で、2000年以前は4件に過ぎなかったが、2001年から2010年まで18件が出願され、2011年だけで15件とその出願件数が急激に増加した。国別では、韓国が33件(約90%)と大部分を占めており、出願人別で見ると、韓国地質資源研究院(13件,35%)、浦項産業科学研究院(11件,30%)が多出願人として技術開発を主導していることが分かった。

通常、海水からリチウムを抽出する過程は、海水に吸着剤を投入してリチウムを吸着した後、吸着剤からリチウムイオンを脱着して濃縮する過程を経ることになる。従って、海水からリチウムを抽出して商業的に利用することができるようにするためには、リチウム吸着剤の性能をどのように高めるかにその成敗がかかっていると思われる。これは、リチウム吸着剤関連の特許出願が21件で、海水からリチウムを抽出する技術に対する全体出願のうち約60%程度を占めることからもその重要度が分かる。

具体的にリチウム吸着剤として使用されるマンガン酸化物の製造に関連した技術(6件)、マンガン酸化物吸着剤にセラミックフィルター、中空糸膜フィルター、細幅織物フィルター、イオン交換繊維フィルターなどを並行使用することに関する技術(8件)、ハニカムやイオン体系などのマンガン酸化物吸着剤の形態に関連した技術(2件)、マンガン酸化物吸着剤に分離膜リザーバーシステムを適用して高性能吸着剤を製造する技術(1件)、有機-無機ハイブリッド中間細孔分子体を吸着剤として利用する技術(1件)などの吸着剤関連の技術が出願されており、この他に選択的透過膜、分離膜などの高分子膜や電気分解を利用、または吸着剤以外の他の物質を添加して海水からリチウムを抽出する技術なども出願された。

2011年に韓国地質資源研究院とポスコが共同で江陵(カンルン)市に海水リチウム研究センターを竣工、実際に海域での実証研究に着手し、2014年まで年30トンの炭酸リチウムを抽出するプラントを建設して商用化につなげる。これにより、関連の特許出願とリチウム回収産業の競争力が一層強化されるものと思われる。

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