知的財産ニュース 国際特許紛争、多角的な知財権外交で予防する

2012年8月3日
出所: 韓国特許庁

3656

米国特許商標庁と戦略的パートナシップを構築、対応

特許紛争の予防に向けた韓米特許当局間の初の政策対話

韓国特許庁の金ホウォン庁長は、8月1日から2日の間、ワシントンを訪問し、米国知識財産次官兼特許商標庁のデビッド・カッポス(David J. Kappos)長官と米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)のランドール R. レーダー(Randall R. Rader)判事とそれぞれ会談し、特許における協力を強化することで合意した。

金庁長は、米特許2大当局のトップの2人と会談し、最近、スマートフォン市場を中心に激化している知財権紛争で提起されている特許管理会社(NPE)などの特許権濫用に対しての懸念と米国の知的財産権に関する韓国企業側の意見を述べ、特許権紛争の予防に向けた多角的な協力策を議論した。

※実際の事業は展開せず、特許を大量に購入して特許侵害訴訟を提起し、収益を上げている企業を意味する。パテント・トロール (patent troll)とも呼ばれている。

韓米特許庁長の会談で合意された内容

両庁長は、韓米FTAで貿易量を増加させるためには、特許分野での協力が重要だという認識を共有し、両国間の知財権分野でのMOU締結で戦略的な協力関係を構築し、審査協力、教育資源の共同活用、専門家の育成など、特許紛争の予防に向けて共同で取り組んでいくことに合意した。

主な合意内容は次の通りである。

特許審査の品質標準化に関する共同研究を始めることで合意した。

特許審査の誤謬により登録された特許権が特許紛争の潜在的な要因になり得るという共同認識に基づき、世界で初めて韓米特許庁間の審査品質標準化指標の共同開発に向けて協力する。

※世界出願の約8割を処理している韓国、米国、日本、欧州、中国で構成された先進5大特許庁

金庁長は、「国際的に審査品質が標準化されれば、質の低い特許の乱立を防ぐことができ、特許紛争防止の土台になる」と評価した。

韓米間の特許審査協力を拡大、強化していくことにした。

両庁は、両国で重複提出された特許出願の審査結果を相互が利用するSHARE(Strategic Handling of Application Rapid Examination: 戦略的審査処理)プログラムの施行を拡大していくことで合意した。

年間約4,0000件に上る重複出願の審査負担の軽減と審査品質の向上につながるとみられる。

※韓米各庁への重複出願において、最初に出願を受けた第1庁が、まず優先的に審査着手を行ない、その結果を第2庁が利用して審査を行なう審査業務協力プログラム

米国が欧州や日本の出願者を対象に推進している第2世代審査協力プログラムである「PPH※2.0」に韓国特許庁も参加することにした。

韓米間でPPH2.0プログラムが実施されれば、PPH利用条件が大幅緩和され、韓国の出願者が米国等の海外特許をより簡単な手続きで早期に出願できるようになる。

※参加国に重複出願される出願に対し、第1庁が特許登録を決めれば、それに基づいてPPH参加国に要請した場合、当該の出願を第2庁で早期に審査、登録する制度

その他合意

先進国と途上国の知財権格差を解消するため、両庁の専門人材、教育機関を共同で活用し、韓米FTAを通じてバランスの取れた両国知財権制度に基づき、グローバル知財権認識を高めるために協力することにした。昨年9月、60年ぶりに改革された米国特許法を韓国企業等のユーザーグループに紹介するため、今年下半期に韓国で米国特許制度の改革内容を韓米特許庁の共同説明会を開いて紹介することにした。

CAFC判事との会談など

金庁長は、レーダー判事との会談で韓国企業が米国内で特許紛争によって悩まされている部分、米国市場へ進出する際の困難を伝え、特許権を正しく施行できる環境を整うために裁判所が取り組んでほしいと要請した。
また、2013年に韓国で韓米特許当局が共同で開催する韓米特許判事及び専門家会議の準備に協力することで合意した。

その他にも、8月1日と2日の間、韓米特許制度の架け橋の役割をしている在米韓国人の特許専門家及び企業家と懇談会を開き、彼らを励ます一方、在米韓国人の専門的な能力を国内企業が特許紛争の予防及び対応に活用できるよう、ネットワークを強化していくことにした。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195