知的財産ニュース 人気のペットボトル入りのビール、リサイクルは?

2012年7月20日
出所: 韓国特許庁

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リサイクル容易性を工夫したペットボトルの研究・開発は進まず

みんなで韓国代表選手を応援しながら飲む一杯のビール、夏休みに夜のバカンス村で飲む冷たいビール…夏の本番に向かってビール人気は上昇中だ。

みんなで一緒に飲めるうえ、利便性まで兼ね備えているペットボトル入りのビールは、韓国で年間2億本以上(1.6Lペットボトルで換算基準)が販売され、韓国ビール市場シェアの約17%を占めており、様々なラインアップがそろっている。

一方で、気持ちよく飲んでリサイクルに出しているビール専用の空ペットボトルはきちんとリサイクルされているのか?

日本ではビール専用ペットボトルがあまり見当たらないが、その理由は環境に優しくないため、ビール業界が生産を控えているためだという。

ビール専用ペットボトルは、一般的なペットボトルよりリサイクル用の再生ペット原料の回収が難しいとされる。透明でない色だけでなく、ペットボトルにはないガス遮断(barrier)物質が含まれているため、ペットボトルの材質分離が難しいためだ。

※一般的なペットボトルは、微細な穴が付いており、ビールをペットボトルに保管するとビールに溶解された二酸化炭素がペットボトルのボディー部分を通して抜けると同時に、酸素が浸透して酸化作用が起こるので、ビールの「味」が変わってしまう。ペットボトル入りビールの新鮮度を保つために、ペットボトルに特殊なガス遮断技術が適用されているが、ペットボトルとともにガス遮断性の良い物質を複合的に使用するか、ペットボトルの面にガス遮断物質膜をコーティングする方法などがある。

(一般的なペットボトル)

(多層ビールペットボトル)

一般的なペットボトル→ →高品質再生ペット原料回収→高いリサイクル率(8割)

ビール専用ペットボトル→ →高品質再生ペット原料の回収が難しい→リサイクルの効率性が低い

韓国特許庁によると、最近(2006~2011年)ビール専用ペットボトルに適用されているガス遮断技術の特許出願は62件で、ガス遮断性を向上させるための技術に重点が置かれており、リサイクルの容易性を工夫した技術開発は不十分であることが判明した。

技術分野としては、(1)ペット層間の中間にガス遮断物質層が位置する構造の多層ペットボトル、(2)ペットボトルとガス遮断物質が配合された単一層ペットボトル、(3)ペットボトルの壁面にガス遮断物質薄膜を貼り付けたコーティングペットボトルがあるが、すべての技術分野において主に海外メーカーが特許を出願(全体90%)しており、そのなかでも日本企業の特許出願件数が26件で最も多く、日本ではペットボトル入りビールを販売していないのにもかかわらず、技術開発を続けている。

韓国企業では、HITEビールにビール専用ペットボトルを供給している(株)ヒョソンが多層ペットボトルの特許を出願しており、単一層ペットボトルとコーティングペットボトルの韓国企業による特許出願はない。

リサイクルを容易にするためには、ガス遮断物質とペットボトルを分離工程が簡単に行なわれる技術が欠かせない。しかし、出願件数が最も多く、技術開発が活発である多層ペットボトル(32件、全体出願の52%)は、構造的にコーティングペットボトルや単一層ペットボトルに比べてもリサイクルが難しいといえる。

また、多層ないし単一層のペットボトルから酸素を除去するために、鉄などの金属質の材料が追加的に配合されるが、変色でリサイクルの効率性を低減させるほか、各種のフィルターもリサイクルのネックとされている。

リサイクルを容易にするためには、ペットボトルの壁面にガス遮断物質の薄膜を形成したコーティングペットボトルが多層ないし単一層ペットボトルより比較的有効ではあるが、コーティングペットボトルは、主に海外メーカーによって技術が開発されており、韓国企業では採択していない。

※HITEビールは多層ペットボトル((株)ヒョソンから供給)を、OBビールは単一層ペットボトル(海外メーカーの技術を導入、自社生産)を採用している。

最近、韓国企業は「環境への配慮」を掲げ、実践への取り組みを行なっている。こうした取り組みが信頼を得られるよう、リサイクルの容易性まで工夫した環境配慮型製品の研究・開発に一層の力を入れるべきである。

資料1.ビールの容器別シェア(韓国、日本)

図:韓国におけるビールの容器別シェアグラフ(2011年)
(資料:酒類産業2012.3月号)

図:日本におけるビールの容器別シェアグラフ(2009年)
(資料:キリンビール社)

資料2.メーカー別のペットボトル入りビールのシェア


(資料:酒類産業2010.夏号)

※現在、発売されているペットボトル入りビール
OBビール:OBブルー・Qパック、OBゴールデンラガー・Qパック、カス・Qパック。ライト・レッド・レモン、カプリ
HITEビール:HITEピッチャー、MAXピッチャー、EXFEEL-Sピッチャー、STOUTピッチャー、DRY FINISH d

資料3.ビール専用ペットボトルに適用されるガス遮断技術の国内特許出願の現状(2006~2011)

区分

主な技術内容(ガス遮断物質)

出願件数(計62件)及び主な出願者

多層
ペットボトル

(Multi-layer)

ペットボトル層間にガス遮断物質層を包含

例)PET層/ガス遮断物質層/PET層

(ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ナノ複合材、生分解性樹脂など)

  • 出願件数:計32件(52%)
  • 主な出願者:
    • 東洋製罐(日本) 14件
    • (株)ヒョソン(韓国) 6件
    • 三菱ガス化学(日本) 4件
    • クラレ(日本) 3件 など
  • 韓国企業による出願:ヒョソンが6件

単一層
ペットボトル

(mono-layer)

PETとガス遮断物質を混合

例)PET, 酸素除去化合物と混合

(酸素除去化合物、ポリアミド系樹脂など)

  • 出願件数:計19件(30%)
  • 主な出願者:
    • INVISTA(スイス) 4件
    • M&G Polimeri Italia(イタリア) 4件
    • Constar international(米国) 3件
    • The CocaCola Company(米国) 3件 など
  • 韓国企業による出願:なし

コーティング
ペットボトル

(coating)

PET壁面にガス遮断物質薄膜をコーティング

(SiOx, ダイアモンド象、カーボンなど)

  • 出願件数:計11件(18%)
  • 主な出願者:
    • キリンビール(日本) 4件
    • 三菱重工(日本) 2件
    • 東洋製罐(日本) 2件
  • 韓国企業による出願: なし

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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