知的財産ニュース 韓国特許の顔「特許英文要約」が誤訳だらけ

2012年7月18日
出所: 電子新聞

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韓国特許庁と国家知識財産委員会の主導で、「知的財産(IP)大国」が掲げられてきたが、基本的な特許英文要約さえ十分に提供されていないことが判明した。韓国特許の顔ともいえる「韓国特許英文要約(KPA)」に誤訳が多いことが明らかになった。要約の誤訳は、国際紛争特許につながるなど、韓国企業に被害を及ぼしかねない。しかし、政府機関は、実態すら把握できず、「苦情は無かった」と問題がないという認識を示した。

電子新聞が特許専門翻訳機関「特許情報検索サービス(kipris.or.kr)の韓国特許英文要約」の正確度を依頼調査した結果、大半が誤訳であることが判明した。

例えば、「光ディスクの固定設置特許(公開番号1020110018541)」には、数えられる名詞に不定冠詞「a」が抜けているなど、7ヵ所に誤訳があった。技術のコア部分である特定部門のディスクを固定する過程を説明した文章は整理されておらず、英語圏の人には理解し難いものになっていると専門家は説明した。

「オンライン予約システムの方法論関連特許(登録番号101013660)」も、5か所に11の誤訳が確認された。「オンラインで部屋を予約する」という表現が動詞の「process」ではなく、「progress」と訳されており、「オンラインを通じて」は、「through an online network」が正しい訳だが、「through online」になっていた。

こうした誤訳は、専門性に欠けている者に翻訳を依頼したことが主な理由だと業界は分析する。特許翻訳を専門とする企業の関係者は、「以前は専門家が翻訳していたが、コスト削減と効率を理由に機械翻訳とそのレビューにとどまっている。なので誤訳が多くなってしまった。」と説明する。他の特許専門企業の代表も「世界知的財産権機関(WIPO)では、2,3回も冠詞や誤字・脱字などをチェックしているが、韓国はずさんな管理がされていると言わざるを得ない」と批判した。

業界では、こうした誤訳が原因で正確な情報が伝えられず、外国の特許審査官や特許分析機関が内容を把握できないことで、韓国企業が被害に遭う可能性があると懸念を示している。特許を保有していても国際特許紛争に追い込まれる状況になりかねない。業界の関係者は、「世界4~5位の特許大国とはいえ、量が多いだけで、質的水準は低いと見下されがちになっている。保有特許だけでもきちんとPRすることが求められている」と強調した。

英文の要約を管理している韓国特許情報院は、実態の把握すらしていない。特許情報院の関係者は、「機械翻訳を利用し、追加的に技術分野の翻訳専門家が翻訳を行なっているが、今まで誤訳による被害事例や苦情は聞いたことがない」と答えた。

韓国特許英文要約の海外特許庁及び政府機関向け配布の現状

No

国名

備考

No

国名

備考

1

日本

アジア地域

(12ヵ国)

24

イタリア

欧州及び

オセアニア地域

(18ヵ国)

2

中国

25

キルギス

3

台湾

26

ロシア

4

マレーシア

27

スペイン

5

ベトナム

28

オーストラリア

6

シンガポール

29

ギリシャ

7

インド

30

ドイツ

8

タイ

31

スイス

9

イラン

32

イギリス

10

スリランカ

33

チェコ

11

バングラデシュ

34

フランス

12

フィリピン

35

トルコ

13

エジプト

36

ハンガリー

14

南アフリカ共和国

アフリカ地域

(3ヵ国)

37

ポーランド

15

ケニア

38

ルーマニア

16

アメリカ

39

スロバキア

17

カナダ

米州地域

(8ヵ国)

欧州

EPO

海外の

政府機関

18

メキシコ

アフリカ

ARIPO

19

パナマ

インド

APCTT

20

ベネズエラ

スイス

WIPO

21

コロンビア

日本

JAPIO

22

ペル

ユーラシア

EAPO

23

ブラジル

中国

CIPTC

※資料:特許庁(2010年4月基準)

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