知的財産ニュース 和解ムード高まる「発光ダイオード(LED)特許紛争」

2012年11月6日
出所: 電子新聞

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発光ダイオード(LED)市場の覇権をめぐり、数年間、国内外で激しい特許訴訟を行ってきたLED業界に最近、和解ムードが高まっている。景気低迷により市場の成長基調が鈍化したのも理由だが、次世代の照明市場を取り巻く利害関係者の思惑が複雑に絡み合った結果だと分析されている。

6日の業界のよると、近年、韓国のLEDメーカーが海外の主要企業とクロス・ライセンスを結ぶ事例が増えているという。「イルジンLED」社は、最近、豊田合成とLEDチップ特許についてクロス・ライセンス契約を締結した。豊田合成は、世界的にも優秀なLED基幹技術の特許を保有しているメーカーだ。この会社が生産しているシリケートは、日亜のYAG、ドイツのオスラムのTAGとともに、世界3大の蛍光体だと評価されている。

サムソン電子とLG電子は、オスラムと手を結んだ。両社は、それぞれ8月と10月にオスラムとクロス・ライセンスを締結した。また、韓国LEDメーカーの「ルメンス」社は、6月にクロス・ライセンスを結び、オスラムの白色LED特許95件を導入した。

僅か1年前までは、こうした展開は期待できない状況であった。6月、オスラムが特許訴訟を提起したことを受け、LG・サムソンが反訴したのがその代表的な例だ。両側は、お互いの製品を購入している顧客会社まで巻き込み、一歩も譲らない対立を続けていた。

その激しい攻防に終止符を打った理由は、長期間を要する訴訟で勝負を決めるよりは、市場のチャンスを見逃せないという思惑が背景にある。世界のLED市場の軸足は今、照明にシフトしている。これまで成長をけん引してきたLCDバックライトユニット(BLU)の需要は頭打ちの状態なのに対し、照明は本格的な成長段階に差し掛かっている。

米コンサルタント会社「マッケンジー」によると、昨年のLED市場で22%を占めていたLCDバックライトユニット(BLU)市場の割合は、2016年3%に減少すると見込まれている。一方、照明市場の割合は、同期間56%から86%に急成長するという予想が出された。LEDメーカーの関係者は、「特許攻防は、各社の営業に深刻な足かせになる。最近の和解ムードは、より大きな実益を得たいという狙いがあるからだ。」とコメントした。実際に、ソウル半導体は、日亜との長期間にわたる訴訟により、少なからぬ被害を受けた。技術力は広く示したものの、3年間の裁判に5000万ドル以上を費やした。

訴訟を提起した方も状況は同じだ。拡大する市場で訴訟はネックになる。ソウル半導体やサムソン、LG、イルジンが海外の企業とクロス・ライセンスを締結出来たのは、資本と技術面で競争力を確保したから可能だったと分析されている。「ディスプレイバンク」のベ・フン主席研究員は、「日亜、クリ、豊田合成、フィリップス、オスラムは、世界5大のLED基幹技術メーカーだ。本格的な事業拡大を念頭に、実益を狙って相互契約を結んでいるのだ。」と解釈した。

LED照明は、今後の有望分野として挙げられている。昨年65億ドルから2016年416億と、年平均45%の高成長が予想されている。

ユン・ゴンイル記者

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