知的財産ニュース 韓国特許庁、今年は特許審査処理期間を14.8カ月に短縮

2012年12月28日
出所: 韓国特許庁

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韓国特許庁の第4期責任運営機関の2012年度における主要な成果

韓国特許庁は、今年5月、第4期責任運営機関の発足後、「特許行政の先進一流化」と「知的財産の大衆化」に向けた主な政策方向を決め、その実現に取り組んできた。

第4期責任運営機関が推進した2012年度の主な業務成果は次のとおりである。

第1に、年平均の審査処理期間を特許・実用新案は14.8カ月、商標・デザインは9カ月以内に短縮した。

これは、昨年よりそれぞれ2ヵ月、1ヵ月短縮したもので、企業が開発した技術やブランドがより迅速に権利化できるようにした。審査官の増員が難しい状況で人手の再配置、予備審査官制度の活性化、外注下請けの拡大などの取り組みを持続的に強化してきた結果だと言える。

また、知的財産のグローバルな協力を一層強化し、国際社会において韓国企業が知財権競争力の強化を支援できる基盤を構築した。

韓国企業が海外で特許活動を行う最、実質的なメリットが向上できることを目標に世界知的財産先進5ヵ国特許庁(日本、米国、欧州、中国、韓国)間の協調を強化し、主要国との2ヵ国間協力も積極的に推進した。

特に、今年には、先進5ヵ国商標大国(米国、日本、欧州、中国、韓国)で構成されたTM5(Trade Mark Five)協力体制の構築と同時に、来年度の年次会議を韓国で誘致することで、韓国が国際商標制度の議論において主導的な役割を果たすことになった。

また、締約国で登録決定を受けた特許出願に対し、優先審査を行う特許審査ハイウェイ(PPH)と国際特許審査ハイウェイ(PCH-PPH)制度の対象国をそれぞれ2ヵ国(PPH:9 → 11カ国、PCT-PPH:1 → 3ヵ国)追加拡大し、韓国企業と出願人の迅速な海外特許獲得を支援した。

また、ベトナム・台湾・中国などの途上国を対象に特許行政のノウハウを紹介し、特許新サービスの輸出を推進するなど、知的財産行政の韓流も拡大した。

知的財産のすそ野拡大に向け、知的財産の大衆化活動も積極的に展開した。

江原道(8月30日)を皮切りに全国8地域(忠清北道、蔚山、全羅北道、京畿道、大邱、全羅南道、釜山など)で「知識財産フォーラム」を開催し、知的財産権に関する開かれた討論文化を拡大させる一方、地域現場の声が知的財産政策に反映できるよう、積極的に取り組んだ。

また、関連部署と合同で「第2次国家知識財産人材養成総合計画」(2013~2017)を国家知識財産委員会で想定・確定(12月12日)し、知的財産人材の育成ハブとして檀国大学、ソウル大学、釜山経済大学を追加選定するなど、知識集約産業の発展をけん引する知的財産人材を体系的に育成するための基盤を構築した。

また、R&D過程において特許情報を積極的に活用し、コア・基盤特許を創出するためのIP-R&D戦略を企業に配信するため、IP-R&D拡大支援本部を新設(10月17日)し、IP-R&D方法論を経験した産官学の代表で構成されたIP-R&Dリーダーズクラブを発足させるなど、民間の自律的な知的財産生態系を構築するための基盤を固めた。

一方、国際的な知財権係争に対する韓国企業の対応力の強化を支援するため、インフラ構築を強固にした。

韓国企業の国際的な知的財産権関連の紛争を回避し、その被害を最小化させるため、紛争の段階別対応策である「国際知識財産権の紛争動向個予備対応策」を国家政策調整会議で想定・確定(9月28日)し、知財権紛争対応センターと営業秘密保護センターを設立して韓国企業の知財権紛争を総括支援するための基盤を設けた。

韓国特許庁は、こうした取り組みの結果、国務総理室の政府業務評価で中心課題と規制改革など2つの分野で最優秀機関として選定され、韓国のインターネット疎通公共機関部門で大賞を、公務員提案の活性化部門で国務総理賞を受賞するなど、外部からもその成果を認められた。

科学技術基盤の創造経済時代において経済成長の働きかけとして知的財産権の重要性は日々高まっている。韓国経済の質的な飛躍と持続可能な成長のためには、知的財産を中心とした国家発展戦略の確立が切実に求められる。韓国特許庁は、韓国が国民所得4万ドル時代を実現できるよう、最善の努力を尽くしていく構えだ。

第4期責任運営機関の2012年度における主な成果

1. 中長期の審査政策に基づいた審査処理期間の短縮及び審査品質を達成

  • 2015年までの中長期審査処理目標及び戦略を確立(第4期責任運営機関の主要政策方向)
  • (特・実)16.8カ月(2011) → 14.8カ月(2012)
    (商・デ)10ヵ月(2011) → 8.9ヵ月(2012)

特許出願世界4位・商標出願世界4位の地位に見合う審査処理期間を維持

  • 組織診断を通じた審査人材の再配置、予備審査官の制度活性化などの取り組みを通じて増員無しに2012年審査処理期間目標を達成

    区分

    特許・実用新案

    商標・デザイン

    審査処理期間(前年比)

    14.8か月(2ヵ月)

    8.9か月(1ヵ月)

  • 世界最高水準の審査処理期間の達成などを目標とする第4期責任運営機関の主要な方向性を明確化(2012.8)
    ※目標:(特・実)13.3(2013) → 11.7(2014) → 10ヵ月(2015)
    (商・デ)8.3(2013) → 6.5/6.5(2014) → 3/5ヵ月(2015)

  • PCT国際調査処理期間の順守(3ヵ月)のため、2013年の外注下請け予算の確保及びPCT専門審査チームを構成
    ※2013年度PCT予算:149.4憶ウォン(2012年比60.5億ウォン増額)
    ※PCT専門審査チーム:PCT専門審査官21人、技術分野別の英語のエディタ4人など(2012.12)

世界最高水準の審査品質を実現するための管理及び支援を強化

  • 審査分野の品質管理システムを強化
    • 品質責任者1人当たり管理審査官数:(2011)6人 → 5.3人
    • 審査パート別の品質診断説明会を拡大(2011)145パート → (2012)226パート(55%↑)
    1人あたりの管理審査官数 審査パート別の品質診断説明会数
  • 審査着手件の評価制度を本格施行し、リアルタイムの審査品質診断及び品質向上を支援
    ※審査品質を国際的に認められ、PCT国際調査依頼件数が着実に増加
    依頼件(前年同期比の増加率、%):(2010)23,307(7.3) → (2011)27,034(16.0) → (2012.11)24,578(4.7)

    • PCT国際調査のモデル事業(2012.8~)実施を通じて外注結果の品質を向上
    • PCT先行技術調査の専門機関を追加指定し、競争システム導入推進中
      ※(日程)最大3つの専門機関の指定計画公告(11.9) → 新規機関の指定(2013.1)
    • 特実先行技術調査の対話型納品のモデル実施及び審査請求日順の自動依頼システム構築を通じて事業の効率性を向上
      ※納品後、調査報告書の未処理件(Backlog)減少:3万件(2012.5) → 1.8万件(2012.10)

2. 知的財産権のグローバル協力基盤の拡大及び知的財産の韓流拡大

  • 商標分野の5G体制であるTM5発足及びPPH対象国の拡大(9ヵ国(11年) → 11ヵ国(2012)
  • 審査サービスの輸出推進及び開発途上国に対する特許行政のノウハウを紹介

グローバルな時財権協力において主導力を強化

  • IP5

    実務者グループ及び長次長会議に積極参加し、IP5対応力を強化
    ※グローバル都市にT/F構成、ユーザーグループの参加など、韓国の提案した課題が採択

  • TM5

    新たに発足したTM5体制でリーダーシップ確保に向けた取り組みを強化
    ※2013年度TM5会議の韓国開催、TM5ホームページ構築事業推進など

  • WIPO

    多国間の知財権国際ルール作りに積極参加し、親韓グループ構成
    ※グローバルイシュー分野事務庁長(2012.5,2012.11)、特許分野事務次長(2012.10)訪韓

  • 日中韓

    韓国特許庁の積極的な貢献を通じて日中韓の特許協力水準をワンランク引き上げ
    ※「審判専門家会議」及び「IP5共同対応協議体」を構成、「ユーザーグループ参加」、「特許法の制度調和関連の情報共有を強化」など、韓国の提案について3ヵ国間で合意

グローバル審査協力の強化及び韓国特許庁職員の海外進出拡大

  • PPH、PCTPPH施行の拡大により、海外出願の利便性が向上
    ※PPH:(2011)9ヵ国 → (2012)11ヵ国、PCTPPH:(2011)1ヵ国 → (2012)3ヵ国
  • 欧州商標庁(OHIM)に非EU国では初めて課長級2人の連絡官を派遣
  • 欧州特許庁と情報化の専門家を相互派遣
    ※2012年下半期に韓国側3人をEPOに短期派遣(EPOの専門家は2013年に韓国に派遣予定)

知的財産行政の韓流(Korea-IP Wave)拡大

  • 審査サービスの輸出拡大を推進
    ※PCT国際調査サービスの輸出拡大及び新興国途上国への審査代行を推進
  • 外国に特許行政のノウハウを紹介し、韓国企業にフレンドリーな知財権環境を構築
    ※ベトナムタイ(2012.6)、中国(2012.10)に知財権担当の公務員を招待し、教育を実施
  • 韓国型の特許情報化システムの海外普及及びWIPOの情報化プロジェクト事業への参加などを通じて知財権分野のIT大国の力をアピール
    ※モンゴル(335万ドル、2009~2011)、アゼルバイジャン(420万ドル、2011~2013)、アフリカ広域知的財産機関(580万ドル、2013年予定)の特許情報化システム構築

3. 地域の知的財産フォーラム開催など、知的財産の大衆化に向けた取り組み強化

  • 知財権の認識向上知財権経営戦略の地域への拡大に向け、知的財産フォーラムを全国で開催(8回)
  • 「第2回国家知識財産人材育成総合計画(2013~2017)」を確立

地域の知的財産創出基盤を強化

  • 地域の知的財産の力量を強化するため、自治体長、国会議員、市道議会の議長などを対象に全国8地域※を巡回する地域知的財産フォーラムを開催
    ※(2011)4地域(京畿道光州済州道大邱) → (2012)8地域(江原道忠清北道蔚山全羅北道京畿道大邱全羅南道釜山)
    ※毎回、地域の有力人事約200人が参加、庁長が直接、各地域別の知的財産競争力強化策について基調演説
  • 地域の伝統産業関連商品のブランド開発及び権利化の支援を通じて地域伝統事業の知的財産競争力を向上
    ※地理的表示団体表彰52品目、共同ブランド3つの自治体、IP権利化55品目

知的財産のインフラ強化

  • 関係部署と共同で体系的な中長期知的財産人材育成計画を策定
    ※「第2回国家知識財産人材育成総合計画(2013~2017)」:知財委の版権想定(2012.12.12)
  • 大学(院)のIP専門学位課程、大学教授の力量強化プログラム、知的財産先導大学※選定運営などを通じて知的財産専門人材の育成基盤を拡大
    ※既選定(仁荷大学江原大学全南大学)、追加選定(ソウル大学檀国大学釜山経済大学)
  • 発明教育関連で教育科学部とMOU締結(2012.11)
  • 水準別、機関別、専攻別の知的財産教育プログラムを実施し、教授の参加率を高め、教育の成果を最大化して大学の知的財産のリーダーに育成
    ※T3(Teaching The Teacher):大学教授を対象に知的財産教授教育プログラム
    ※2008年以降、991人の教授が参加し、2012年にも323人を教育(10月)

図:計443の講座を開設、計20,312人が受講
図:先行技術調査が年平均52.7%増
図:技術移転料は年平均108.7%上昇

4. 国際的な知財権紛争への対応支援及び知財権の保護活動を強化

  • 「国際知識財産権の紛争動向及び対応策」の策定及び「知財権紛争対応センター」を開所
  • 模倣品の取締り強化及び認識向上活動を展開
    (特別司法警察の刑事立件)11.6人/月(2011) → 25.2人/月(2012)(オンライン上の取締り)327件/月(2011) → 406件/月(2012)

国際的な知財権紛争を支援するためのインフラ構築

  • 「国際知的財産権の紛争動向及び対応策」を国家政策調整会議で想定確定(2012.9)
    ※紛争の段階別(平時 → 警告 → 対応)に合わせた支援及び紛争回避に向けた政府レベルの支援体制の構築など、知財権紛争の対応基盤を構築
  • 韓国企業の知財権紛争を総合的に支援するため、「知財権紛争対応センター※」(2012.11)、「営業秘密保護センター」(2012.6)、LA IPDESK(2012.3)を設置
    ※紛争危険企業の選定支援、紛争情報の提供及び相談などを総合的に運営管理
    ※情報提供:紛争速報640件、判例2,600件、ガイドブック3ヵ国語、研究報告書18本
    ※国際紛争コンサルタントの恩恵:(2011)72社 → (2012)110社(経済的効果467.3億、予算比13.16倍)
  • CIPO(知的財産最高責任者)の朝食会セミナー、中堅企業連合会などの行事にも積極的に参加し、知財権紛争回避の必要性を説明
    ※国際知財権紛争対応専門家会議(9.12)、知識財産権保護コンファレンス(10.25)、KINPA Annaulコンファレンス(11.14)、製薬企業CEO懇談会(11.28)

模倣品取締まりの強化及び保護への認識向上

  • 模倣品取締まりの強化により、健全な商取引秩序の確立及び権利者利益の保護
    ※立件(大量製造流通事犯):(2011)1225人(26人) → (2012)302人(33人)142%↑(26.9%↑)
    ※押収物品の正品価格:(2011)140億ウォン → (2012)303億ウォン116.4%↑
  • 模倣品などに対する消費者の認識向上キャンペーンを展開
    ※模倣品根絶に向けたリレー式の街頭キャンペーン(5.30~6.1)、印刷広告コンテスト、公益公告の送出、SNS運営

模倣品流通の根絶に向け、外部機関と協力を推進

  • 韓国のキャラクター保護及び産業育成に向け、韓国コンテンツ振興院とMOUを締結(2012.7)
  • 韓国商標デザイン協会と共同でソウル国際商標フォーラムを開催(2012.10)

5. IP-R&D民間拡大推進及び地域産業と連携したIPスター企業の育成

  • 「IPR&D拡大支援本部」の開所及び「IP活用してR&D活性」キャンペーンの展開
  • IPスター企業として2012年に157社を追加指定(累積687社)

IP-R&D連携戦略の民間への拡大に向けたインフラ構築

  • 民間の自律的な知的財産環境をつくるため、「IPR&D拡大支援本部」を新設し、「IPを活用してR&D活性化」キャンペーンなどを展開
    ※IPR&D事業参加機関のCEO懇談会(7.10)、IPR&D拡大支援本部の開所及びIPR&Dリーダーズクラブの発足(10.17)、特許観点の研究開発戦略拡大コンファレンス(11.29)などを開催

政府R&D効率化に向けた特許情報の活用拡大

  • 産業分野別(ロボット、バイオ、移動通信)に特許観点の有望R&D課題を選定し、各部署に提供、企画課題として反映
    ※2012年の有望R&D課題選定:ロボット23件、バイオ43件、移動通信46件
  • 政府R&D課題を遂行する大学公的研究機関にそれぞれに合わせた特許戦略を提示し、優秀特許の創出及び技術移転事業化戦略を提示
    ※「特許戦略専門家の支援」と「大学公的研究機関のIPR&D支援」を通じて47件の課題を支援
  • 「特許成果分析の結果」を提供し、2013年度政府R&D予算の配分調整を支援
    ※500億以上の継続事業の見直しの際、特許成果の分析結果を国立科学委員会に提供
  • 研究遂行段階の特許情報活用を通じた成果(2012年上半期)(ソウル大学経済研究所、2012.8)

中小・中堅企業の知的財産競争力を強化

  • 中小中堅企業が新成長エンジン分野など、コア技術分野で強い特許ポートフォリオを構築できるよう、知財権中心の技術獲得戦略を推進
    ※(2011)122社の中小中堅企業 → (2012)118社の中堅中小企業 → (2013)156社の中小中堅企業
  • 地域の有望な中小企業に対し、深層的なコンサルタントを行い、特許ブランドデザインを総合支援して「IPスター企業」として育成((2011)311社 → (2012)464社)
    ※スター企業の2011年度における成果(前年比):特許出願10.7%、売上高26%、雇用13.1%増加

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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