知的財産ニュース 先端農業「植物工場」、真冬でも新鮮な野菜が育つ

2012年2月29日
出所: 韓国特許庁HP

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植物工場とは、陸地で植物を育てていた方式から脱出して、植物の生育特性に適合した人工環境を提供する自動化された栽培システムを言い、従来の果菜類の施設栽培および水耕栽培をより発展させた未来型農業だ。

最近は、都心のビル内で新鮮な野菜を四季折々、大量生産する先端農業が植物工場を通して実現されている。私たちの生活周辺でも大型スーパーの野菜コーナーをはじめに、オーガニックレストランおよびアパートのコミュニティ施設などに小規模な植物工場が造成されている。

1957年デンマーク,クリステンセン農場の均一な育苗生産システムを起源とする植物工場は、米国では高層ビルで植物を栽培する垂直型に発展した。また、日本では1974年に日立製作所が完全制御型植物工場を開発したのをはじめに、2009年から政府主導で再評価され、商業的植物工場が民間企業の参加で活性化している。

植物工場は、光源によって太陽光および人工光(蛍光灯、LED照明など)を併用するタイプと人工光だけを使用するタイプに区分され、栽培ベッドの配置方法によって水平型、多段型、そして垂直型植物工場に分類することができる。

具体的に植物工場は、清浄な施設内で光、温度、湿度、二酸化炭素濃度および養分などの環境条件を人工的にコントロールして栽培を自動化することによって、季節や場所に関係なく安定的かつ計画的に植物を生産できるシステムだ。このような植物工場は、頻繁な気象異変および災害による不安定な食糧資源の供給問題を解決するための新しい農業分野として脚光を浴びている。

韓国特許庁によれば、植物工場に関連した特許出願は、去る10年間で101件が出願されており、2008年までは出願件数が毎年5件未満に過ぎなかったのが、2009年は11件、2010年は38件、そして2011年には36件と最近出願件数が急激に増加している。これは、伝統的な露地栽培から施設・水耕栽培時代を経て、植物工場が新しい先端農業の一つの分野として発展していることを意味していると思われる。

特許出願を技術分野別で見ると、LED照明、蛍光灯、太陽光などの光源関連技術が38%、植物工場自動制御関連技術が37%で、全体の出願件数のうち最も多く占めている。また、栽培自動化関連技術は11%を占め、水耕栽培関連技術は9%と養液を基盤とするこれまでの水耕栽培技術が植物工場に適用される程度に留まっている。特に、光源関連技術の場合、LED照明関連技術が23件で60%以上を占め、蛍光灯(5件)および太陽光(1件)関連技術の出願が相対的に少ない。

国内の植物工場は、大部分サンチュ(レタス類)など新鮮な野菜を栽培しており、最近ではそばの芽、麦芽などの新芽野菜、ほうれん草、高麗人参をはじめとした抗酸化物質が多量に含まれたアイスプラント(Iceplant)のような機能性野菜が生産され、高級食材として流通している。

特許庁関係者は、植物工場が先端農業を先導するためには、人工光源および環境制御分野の核心技術の確保とともに、太陽光および再生エネルギーを組み合わせて、エネルギー費用を最少化しなければならず、植物工場自体だけでなく、植物工場栽培に適合した新品種の開発が伴わなければならないと分析。

植物工場が、付加価値の高い薬用植物と機能性物質が多量に含まれた形質転換植物の大量生産に積極的に活用されれば、今後FTAによる韓国農業の危機を克服する新しい成長動力として位置づけることができると思われる。

ソン・ジョンイクソウル大学教授(植物生産科学)は「植物工場が、伝統的な農法を完全に代替えすることはできないが、高付加価値、機能性作物の生産、気候変化およびあらゆる災害に対する作物の安全生産、特殊作物の生産などの特化された目的や極地、宇宙船などの特殊条件での作物生産などに使用され、BT、ITと連携してその活用幅を広げていく」と期待を示した。また、最近、政府省庁、自治体、研究機関別に企画されている植物工場関連の研究および事業に対して「より効率的かつ体系的なアプローチのために省庁全体での積極的な協力体系が非常に重要だ」と強調した。

参考資料:機能性植物生産用植物工場 概念図

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