知的財産ニュース ハイブリッド自動車、特許技術で先進国に脅威を与える
2012年6月1日
出所: 韓国特許庁HP
306
日本や米国など先進国に比べ、一歩遅れて開発競争に飛び込んだ韓国産ハイブリッド自動車が、後発走者にもかかわらず独自の特許技術で市場進入の高いハードルを乗り越え海外市場で健闘している。
1997年、日本のトヨタ自動車が世界で初めて「プリウス」を発売したのを皮切りに、ハイブリッド自動車に対する開発競争が始まり、韓国は2009年に現代自動車がアバンテハイブリッドを市販、トヨタ自動車に比べ12年遅れで商用化に成功した。
この後、継続して開発した努力の結果、2011年に発売したソナタハイブリッドは米国のハイブリッド自動車市場で販売量4位となり期待以上の成果を達成したが、このような原動力は特許と認められた優れた技術力が土台になったと思われる。
特許庁によれば、去る10年間におけるハイブリッド自動車分野の特許出願3,328件のうち内国人が2,489件出願しており、外国人より3倍程度多く、韓国内での研究開発が急伸張していることが分かった。
特に、現代自動車が全体出願のうち41%(1,367件)を占め、特許技術確保のための研究開発が最も活発に行なわれており、これに続いて漢拏共助、現代モービス、マンドなど部品メーカーも特許の先行獲得のために相当な努力を傾けたことが分かった。
国別の出願動向を見ると、韓国の75%(2,489件)に続いて日本が14%(458件)出願しており、米国、ヨーロッパに比べ出願件数が多い。一方、中国は5件に過ぎないことが分かり、先端技術に属するハイブリッド技術では先進国と相当な格差があることが分かった。
韓国メーカーの技術分野別動向を見ると、エンジン、モーターなどの核心技術である動力装置と関連した技術の出願が2002年(54件)に比べ2011年(163件)は約3倍増えて全体出願のうち36%と最も多い割合を占め、続いて車両制御技術、車両構造、変則装置の順に出願が多いことが分かった。
また、特許出願の量的な成長のみならず、技術の質的な面でも韓国自動車メーカーは先進国に比べ差別化された特許技術を保有していることが分かった。
これらの主要核心特許技術を見ると、現代自動車が世界で初めて商用化に成功した並列型ハードタイプハイブリッドシステムの源泉特許技術は、動力装置ではハイブリッド電気車両の充電時発電制御方法があり、車両制御技術ではハイブリッド車両制御方法があり、変則装置ではハイブリッド車両の変速機などがある。
部品技術では、漢拏共助のバッテリークーリングシステム、現代モービスの回生制動装置2)およびマンドの電気モーターが装着された車両の回生制動方法などがある。
特に、現代自動車が開発したハイブリッド自動車用動力伝達装置は、高速走行時にもモーターの単独作動が可能なようにモーターとエンジンクラッチの結合構造を改善した技術として、昨年、特許技術賞を受賞し、これを開発した金・ヨンホ研究員は2012年「発明の月」に今年の発明王に選ばれた。
韓国特許庁関係者によれば、今後急激な成長が見込まれるハイブリッド自動車市場で韓国産ハイブリッド自動車が優位に立つには、持続的な研究開発と強い特許の確保が非常に重要だと見ている。
今後も、特許庁は韓国自動車メーカーが特許技術を通じて先進国を凌ぐことができるよう「知識財産‐研究開発(IP-R&D)連携戦略支援事業3)」を通して、核心・源泉特許の獲得を支援し、「自動車燃費向上技術大会」を通して研究開発を奨励するなど、特許業務支援を強化する方針だ。
注記
1) エンジンとモーターを並列に配置した状態で、エンジンとモーターで各々単独駆動が可能なハイブリッドシステムで、現代自動車が世界で初めて開発して商用化した。
2) 制動時に発生するエンジンの余裕動力を電気エネルギーに変換して、バッテリーに保存する装置。
3) 特許庁が支援する「知財権中心の技術獲得戦略事業」で、自動車分野は2010年にハイブリッドシステムのレイアウトと関連した事業を実施した。現在は、特許庁傘下のR&D特許センターで実施。
参考資料
開発年度 |
開発メーカー及びモデル名 |
国名 |
備考 |
---|---|---|---|
1997年 |
トヨタ プリウス |
日本 |
世界初 |
1999年 |
ホンダ インサイト |
日本 |
|
2000年 |
日産 ティノ |
日本 |
|
2004年 |
フォード エスケープ ハイブリッド |
米国 |
米国初 |
2008年 |
ポルシェ カイエン ハイブリッド |
ドイツ |
ヨーロッパ初 |
2009年 |
BMW アクティブ7 ハイブリッド |
ドイツ |
|
ベンツ ニューS400 ハイブリッド |
ドイツ |
||
現代 アバンテ ハイブリッド |
韓国 |
韓国初 |
|
起亜 フォルテ ハイブリッド |
韓国 |
||
2010年 |
GM シボレーボルト |
米国 |
|
2011年 |
現代 ソナタ ハイブリッド |
韓国 |
|
起亜 K5 ハイブリッド |
韓国 |
順位 |
メーカーおよびモデル名 |
国名 |
販売台数 |
占有率(%) |
車種 |
---|---|---|---|---|---|
1 |
トヨタ プリウス |
日本 |
136,463 |
48.6 |
準中型 |
2 |
ホンダ インサイト |
日本 |
15,549 |
5.5 |
小型 |
3 |
レクサス CT200h |
日本 |
14,381 |
5.1 |
準中型 |
4 |
現代 ソナタ |
韓国 |
12,050 |
4.3 |
中型 |
5 |
ホンダ CR-Z |
日本 |
11,330 |
4.0 |
小型 |
6 |
フォード フュージョン |
米国 |
11,286 |
4.0 |
中型 |
7 |
レクサス RX450 |
日本 |
10,723 |
3.8 |
SUV |
8 |
フォード エスケープ |
米国 |
10,089 |
3.6 |
SUV |
9 |
日産 リーフ |
日本 |
9,674 |
3.4 |
準中型 |
10 |
トヨタ カムリ |
日本 |
9,241 |
3.3 |
中型 |
※2011年米国で販売登録された全体42種中の順位
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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