知的財産ニュース 5月24日、「第7回韓国IPGセミナー」(特許庁委託事業)を開催しました。

2012年5月31日

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韓国政府は、模倣品対策に積極的に取り組んでおり、例えば、2010年9月に商標権特別司法警察隊を発足させ、日本企業の模倣品も含め、韓国市中での模倣品取締りに大きな成果を挙げております。また、昨年12月には、オンライン捜査班を発足させ、被害が広がるインターネット上での模倣対策もさらに強化しました。そこで、韓国IPGでは、去る5月24日するガーデンホテルで「第7回韓国IPGセミナー」を開催し、日頃模倣対策に取り組んでいる商標権特別司法警察隊に対し、韓国において活動する日本企業を代表して感謝の念を申し上げると共に、最前線でご活躍いただいている警察隊長をお招きし、商標権特別司法警察隊の紹介をはじめ、取締り活動臨場感たっぷりのご説明をいただきました。

また、韓国は、各国とのFTA締結を強力に推し進めており、去る3月15日には、米韓FTAを発効させ、同時に、各種改正法を施行いたしました。その中でも、商標法は、大幅に改正され、音やにおいの商標保護をはじめ、証明標章制度など、新しい商標制度が導入されることとなりました。そこで、韓国の新しい商標制度をご紹介すべく、韓国特許庁より講師をお招きし、音やにおいの商標、証明標章、商標の使用意思確認制度について、制度概要をはじめ、出願時等における実務上のポイントを具体的にご説明いただきました。

セミナー会場では、約50名の参加の下、各講師と参加者との間で活発な質疑応答が行われ、今回のテーマに対する会員の関心度が高いことが伺えました。そこで、本セミナーの概要について、以下のどおりご報告いたします。

  1. 韓国特許庁の模倣品根絶活動(講師:商標権特別司法警察隊 判・炫岐(パン・ヒョンギ)隊長)
    1. 商標権特別司法警察隊の任務と概要

      韓国は、産業財産権の出願が世界4位であるにもかかわらず、産業財産権保護水準が31位とされ、その保護水準の一層の向上が求められています。また、従前、産業財産権に関する専門担当捜査機関が存在していなかったため、必ずしも強力な取締りが行われておりませんでした。そこで、2010年9月、韓国特許庁内に特別司法権を付与し、商標権特別司法警察隊(以下、特司警)を発足させることとなりました。現在、特司警には、23人の人員が所属し、1)有名商標の模倣等不正競争行為の取締り、及び2)商標権、専用使用権の侵害行為の取締りを行っております。

      特司警の導入により、模倣品取締り実績は着実に増加し、2010年9月の発足から昨年末までの刑事立件184名、押収品57,218品に上っています。

      また、近年、インターネットによる模倣被害の拡大に伴い、その対策を強化するため、昨年12月14日、オンライン捜査班を発足させました。これまで、オンライン上の模倣品対策は、韓国知識財産保護協会に委託し、オンラインモニタリングシステムによる24時間自動監視と、模倣品販売サイトに対する販売中止、サイト閉鎖要請、関係機関との捜査協力等を行ってきましたが、今後は、オンライン捜査班が加わり、さらに強力な捜査が行われる予定です。

      また、模倣品の直接的な取締りだけではなく、消費者の認識向上も重要であることから、街頭キャンペーン、大学生を対象とした知識財産保護公告公募展、その他テレビ・新聞・インターネット等を活用した広報等を行っております。

    2. 模倣品取締り活動の実例紹介

      取締り、検挙事例の中から、最近のものをピックアップし、(1)全国の文具卸売業者にニセポケモンカードを供給していた流通業者の検挙、(2)正規品と偽りニセ日本製カメラバッテリーを販売していた業者の検挙、(3)ビニールハウス団地内に設けられた模倣品秘密製造工場の検挙、(4)車にニセ有名ブランド品を積んで走り回り、露天販売業者に供給していた流通業者の検挙、(5)有名子供服の常習的な模倣品販売業者の検挙、(6)有名ブランド製品を偽造し、全国に流通させていた製造・供給グループの検挙、(7)スマートフォンで人気のマーケットアプリケーションを利用して模倣品を販売していた販売業者の検挙、(8)ソーシャルコマースショッピングモールで共同購入サイトを開設し、中国から模倣品を調達、販売していた業者の検挙など、多くの悪質な事例について、最前線における取締り事例としてご紹介いただきました。

  2. 韓・米FTA発効に伴う商標制度の変化(韓国特許庁商標審査政策課の趙 沅錫(チョウ・ウォンソク)行政事務官)
    1. 音・におい商標の概要

      音・におい商標とは、音・におい等、視覚的に認識できないもの物のうち、記号・文字・図形又はその他の視覚的な方法で写実的に表現した商標のことです。例えば、インテル社のCM等に使われている音楽や、レーザープリンタ用トナーのレモンの香り等がこれに当たります。しかし、音・におい商標の出願、保護に当たっては、上述のとおり、文字等により写実的に表現する必要がありますので、注意が必要です。

      また、その他、音・におい商標の登録を受けるためには、次のような要件を満たす必要があります。

      1. 音、においの商標は、1商標1出願の原則を担保している必要があります。そのため、音、においだけでなく、文字・図形と組み合されているような場合は、登録を受けることができません。
      2. 音、においの商標は、その使用により需要者の間に識別力を得ている必要があります。音やにおいが指定商品の品質、原材料等を直接的表している場合、1、2音で構成された音のように簡単でありふれたものである場合、クラシックや国家、民謡、自然の音等である場合は、識別力がなく、登録を受けることができません。
      3. 音、におい商標が指定商品の機能、包装の機能を確保するのに不可欠な場合や、サービスの利用、目的に不可欠な場合は、登録を受けることができません。
      4. 音、におい商標が他人の先出願、先登録商標との同一、類似の商標であって、その指定商品と同一、類似の商品に使用するものである場合、登録を受けることができません。また、その判断は、音、におい商標の視覚的表現を基準に行われ、音商標は音商標と、におい商標はにおい商標と比較して判断されます。
    2. 証明標章の概要

      証明標章とは、証明標章権者から使用の許諾を受けた者がその商品・サービス業の産地、原材料、製造・提供方法、品質等を証明するために使用する標章のことです。この証明標章は、従前の団体標章と異なり、定款で定めた基準を満たした者であればだれでも使用することが可能ですが、証明標章の商標権者は、自ら使用することができません。

      証明標章の出願の際には、願書のほか、定款やその要約書、証明しようとする商品・サービスの品質、原産地、生産方法、その他特性等について、これらを証明しかつ管理することができることを立証する書類が必要とされます。

    3. 使用意思確認制度の概要

      商標法では、本来、韓国内で当該商標を使用する者又は使用しようとする者に対して、商標の登録を受けることができる旨規定されております。そこで、本制度は、使用ないし使用の意思がない者に対する商標登録を拒絶理由に加え、その使用意思を確認する制度を導入したものです。使用意思の確認は、審査官が出願人の使用意思に合理的な疑義を生じた場合に行われ、例えば当該指定商品・サービスが法令上制限されている場合や、指定商品が5種類以上指定されている場合、個人出願人がデパートや銀行、航空輸送業等大規模資本・施設が必要なサービスを指定した場合、その他、互いに類似性のない多数のサービスを指定した場合等がその対象となります。

      また、併せて、指定商品数が基本商品数である20個を超過している場合、指定商品1個当たり2千ウォンの加算量を賦課する制度も導入されました。

    第7回韓国IPGセミナー配布資料
    → seminar.pdfPDFファイル

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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