知的財産ニュース 「商標分野のG5スタート」国際商標の秩序、韓国が主導

2012年5月29日
出所: 韓国特許庁HP

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韓国が世界的な商標強国と肩を並べるようになった。特許庁は、商標分野5大強国の会議体制であるTM5(TM5:Trademark Five)が、公式に発足したと明らかにした。TM5は、世界全体における商標出願の70.4%を占める5ヵ国(韓国,米国,日本,中国,ヨーロッパ)の特許庁の集いで、商標制度の発展のための国際的な議論を主導している。

韓国は、昨年伝統的な商標強国といえる米国、日本、ヨーロッパと共に商標4強体制(TM4会議)を構成し、商標分野の国際的議論に本格的に参加し始めた。しかし、韓国企業の最大海外出願国である中国が本会議に参加せず、TM4会議の効果は制限的だった。これに特許庁は、中国をTM4会議に合流させるための様々な外交的努力を行ない、今年ついに中国が正式な会員として加入、TM5会議が発足することとなった。

特許庁は、TM5会議が韓国企業の海外商標に対する競争力向上に大きく貢献すると期待していると明らかにした。

まず、類似商標または模倣商標による韓国企業の被害を大幅に解消することができると思われる。現在5ヵ国は、悪意のある商標出願の問題に対して共に認識を持ち、これに対する対処方法を講じているためだ。

韓国企業が中国での模倣商標問題で頭を悩ませている状況のなか、中国がTM5の一員に加入したため、韓国企業が実質的に感じるメリットはさらに増えると見られる。TM5の発足と共に模倣商標問題は両者レベルではなく、5ヵ国特許庁の問題として解決策が模索されることにより、より効果的かつ実践的な措置が検討されるものと思われる。

また、5ヵ国の登録商標に対する情報が統合して管理されることで、韓国企業が海外進出時に該当市場の登録商標に対する情報を事前に入手できるようになり、効率的に商標戦略を樹立することができるようになる。商標戦略の樹立のためには、登録商標を検索することが必須であるが、TM5協力事業の一環として5ヵ国の登録商標を簡単に検索できるWEBサイトが開発されるためだ。このようなWEBサイト開発は、中国に多く商標を出願している韓国企業にとって特に有効だと期待されている。これまで中国に商標を出願する韓国企業は、中国の登録商標情報を入手することができず、商標戦略の樹立に苦労していたからだ。

これと共に、特許庁は韓国企業により友好的な国際商標の秩序が構築されるよう誘導するために、新しいTM5協力事業を準備中だ。5ヵ国の商標審査官間で共同審査を通じて審査結果を共有し、5ヵ国の相違する審査慣行の調和を追求する「共同審査プロジェクト」がそれだが、現在ヨーロッパ商標デザイン庁(OHIM)と試験事業を実施中だ。

また、来年もTM5会議を韓国に誘致して商標強国韓国の地位を高めるために外交能力を総動員している。来年会議を開催するか否かは来る10月スペインで開催される第1次TM5例年会議で決定される。

金・ホウォン特許庁長は「TM5が商標強国の集いという象徴的な意味を越えて、韓国企業に実質的なサポートを提供する会議体制になるように、新しい協力事業を発掘・提案し、来年の会議を必ず韓国が誘致できるように持続的な努力を行なう」と述べた。

参考1:TM5の概要

TM5会議の意義

  • 韓国、米国、日本、ヨーロッパ、中国など商標分野先進5庁を主軸に構成。
  • 5庁は商標出願量基準世界1~5位の国(中国,米国,韓国,日本,ヨーロッパの順)で、世界全体における商標出願量の70%以上を占めている。
  • 5庁は物量の側面で世界を先導するだけでなく、商標審査システムの開発、商標法制の改善など、商標分野の国際的な議論を主導している。
  • TM5会議は、5庁と共に知識財産権分野の代表的な国際機構であるWIPOと5ヵ国のユーザー代表をオブザーバーとして参加させ、使用者の便宜向上に直接寄与する会議を指向している。

正式名称

商標分野先進5庁会議(TM5(Trademark Five)会議)

TM5の構成

正会員:韓国、米国、日本、ヨーロッパ、中国など商標分野先進5庁
オブザーバー:世界知的所有権機関(WIPO)、5ヵ国のユーザー代表

目標

商標制度に関する相互情報交換、協力事業の推進を通して使用者に対する親和的な商標制度の構築および5ヵ国の商標制度の調和

主要沿革

米国・日本・ヨーロッパ3ヵ国の特許庁で構成されたTM3を発足(2002年5月)
韓国・中国がオブザーバーとしてTM3参加(2009年12月)
韓国が正会員になり、TM4体制を発足(2011年12月)
中国が正会員になり、TM5体制を発足(2012年5月)

参考2:TM5協力事業主要内容および期待効果

TM5協力事業の概要

  • TM5では、使用者に対する親和的な商標制度を構築して、5ヵ国間における制度調和のために9件の協力事業を推進中である。
  • 特許庁はTM5協力事業への参加を通じて(1)韓国の出願人に友好的な海外出願環境を構築(2)韓国の商標に対する海外保護基盤を構築(3)韓国の商標法制のグローバル競争力向上を模索している。

TM5協力事業主要内容

  1. 共通認定商品・サービス業の名称目録構築事業

    4ヵ国の特許庁(商標庁)が共通と認める商品・サービス業名称を交換して、4ヵ国の出願人の商標出願における便宜を向上する事業
    ※TM5正会員中、中国を除く4ヵ国が同事業に参加中

  2. 悪意のある商標出願に対する対応策共同セミナー

    悪意のある商標出願の問題に対して5ヵ国が共同で議論し、これに対する対応策を協議するセミナー
    ※他人の商標の名声に便乗もしくは該当商標の市場接近を防ぐための目的で海外には登録しているが、国内では未登録の商標と同一・類似の商標を出願すること。

  3. 共通統計指標の交換事業

    5ヵ国特許庁が共有する商標分野の主要統計指標を開発して、該当統計を毎年交換し、政策開発の基礎資料として活用

  4. 共通状態指標の構築事業

    出願人に商標の行政的・法的状態に対する統一された情報を提供するために共通指標を開発する事業。

  5. ユーザーとのセッション事業

    5ヵ国のユーザー代表が使用者の観点から各国の商標制度の発展方向に対して建議し、TM5協力推進方向について討論する事業

  6. イメージサーチシステム構築事業

    イメージに基づいた図形商標検索エンジンを構築して、5ヵ国特許庁の図形商標審査の品質・速度を向上。
    既存の図形商標検索エンジンは、図形ごとに付与されたコードを一つ一つ入力して検索する方式を採択しており、検索の正確度が落ちる。

  7. その他事業

    その他、5ヵ国の出願人対する出願における便宜向上のために、5ヵ国の商品・サービス名称DB、登録商標DBを共有する事業などを推進中

TM5協力事業の期待効果

  1. 韓国の出願人に対する海外商標出願における便宜向上

    韓国の出願人の使用頻度が高い商品・サービス業名称が5ヵ国で認められることにより、商品審査の通過が容易になる。
    5庁が状態指標を共有することで、韓国の出願人が海外に出願した商標の行政的・法的処理の状態に対して理解しやすい。

  2. 韓国の商標法制・審査システムのグローバル競争力を向上

    ユーザーとのセッション等を通して、グローバルスタンダードと相違する韓国の法令・慣行を把握し、商標法制改善の基礎資料として活用
    イメージサーチシステムなど、先進IT技術を韓国の審査システムに融合して審査品質を向上

  3. 中国など、韓国の商標に対する侵害が頻繁な国での保護基盤を強化

    5庁が各国の悪意ある出願関連法制に対する情報を交換し、共同対応方案をロ議論することにより、韓国の商標に対する保護基盤を強化

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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