知的財産ニュース ‘海の中の森’藻場造成技術関連の特許出願が活発

2012年7月30日
出所: 韓国特許庁

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「とる」漁業から「育てる」漁業、そして「資源管理型」漁業に

水産資源の確保はもちろん、地球温暖化の対策にもなり得る人工漁礁及び藻場関連技術、すなわち`海の中の森'造成技術の開発が活発になっている。

韓国特許庁によると、水産分野関連の特許出願は、ここ10年間5,446件出願されたが、養殖分野は2,693件、漁労分野は857件、水産食品分野は1,896件に分類できる。このうちの養殖分野は、人工漁礁・海中林・一般養殖分野に分けられるが、二酸化炭素を吸収できる人工漁礁及び藻場技術の場合、2001年の前までは210件にすぎなかったのが、2002年以降は621件と、約3倍も増加した。人工漁礁及び藻場関連技術がここ10年間、集中的に開発されていることがうかがえる(資料を参照)。

これは、「とる」漁業から「育てる」漁業への転換を経て、「資源管理型」に発展していくものであり、水産業が、藻場が破壊された海洋生態系の回復を目指すことで、地球温暖化の克服に向けた未来志向的な産業の一つとして発展していくことを意味する。

人工漁礁とは、水中に水産生物の産卵場、生息場、海の牧場、藻場などを造成するために沈ませた構造物を意味し、藻場とは、沿岸域で形成された大型海藻類の群落地域のことであり、海中林または海の中の森と呼ばれる。主な関連特許技術としては、藻場パネル(33件)、スラグを用いた人工漁礁(78件)、二酸化炭素削減用の素材及びセラミック粉末を混ぜて作られた人工漁礁(161件)などがある。

ポスコ(ポハン産業科学研究院)は、2000年頃から海保護策の一環として人工漁礁を研究・開発しており、藻場の造成から始め、現在、麗水エキスポで製鋼スラグで作った環境配慮型人工漁礁「トリトン」を海に設置する姿や時間が流れによって変化していく姿など、海洋生態系の復元に向けた取り組みを映像で紹介している。

また、麗水エキスポの移動式の「海の水」展示館では、水深が深くないミニ森が設置され、入場客が海の森を身近で体験できるようになっており、過去・現在・未来の海の水を造形物で表現し、藻場づくりの重要性を喚起している。

韓国特許庁の食品生物資源審査課の弘スンピョ課長は、「未来の食糧資源になり得る水産資源の造成と、地球温暖化の主因である二酸化炭素を吸収する藻場づくり技術の特許出願が増加している。関連技術の確保は、人類の生存を脅かしている食糧不足問題や環境問題などを解決できる希望にもなる。」と述べた。

資料1:水産関連の特許出願件数

水産分野全体及び分野別の出願件数

区分(出願年度)

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

合計

水産分野全体

560

517

519

553

551

534

513

565

558

576

5,446

養殖分野

261

255

260

275

271

246

241

284

269

331

2,693

漁労分野

93

76

85

84

75

92

99

105

90

58

857

水産食品分野

206

186

174

194

205

196

173

176

199

187

1,896

図:水産分野全体及び分野別の出願件数グラフ

技術分野の区分

技術分野

説明

養殖

人工漁礁、藻場、一般養殖(環境配慮型養殖、飼育水槽、餌供給措置)など

漁労

刺網類, 定置網, 敷き網, 巻き網など

水産食品

海洋深層水を利用した食品、魚介類の加工、魚卵、魚類抽出物など

養殖分野のうち、人工漁礁及び藻場関連の出願件数

区分(出願年度)

2001以前

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

合計

人工漁礁

202

59

54

58

78

59

51

47

58

44

19

527

藻場

8

5

4

9

22

6

8

9

18

7

6

94

一般養殖

-

197

197

193

175

206

187

185

208

218

306

2,072

※2001年は除外

図:人工漁礁及び藻場関連の出願件数グラフ

図:人工漁礁及び藻場関連の出願割合グラフ

資料2:人工漁礁及び藻場関連の主な特許技術

登録番号

特許権者

技術内容

技術分野

登録日付

10-0650268

ポハン産業科学研究院

スラグを利用した造成用の藻場

藻場

2006.11.20.

10-0996624

姜ヘングン

金スンウ

藻場造成用の人口漁礁

藻場

2010.11.19.

10-1080239

李スンイ

郭チョル

海藻類の移植体を利用した藻場造成法

藻場

2011.10.31.

10-1127136

韓ミンホ外 1

藻場パネル

藻場

2012.03.08.

10-0693391

李ヘンウ

スラグを利用した人工漁礁

漁礁

2007.03.05.

10-0975358

サンヨン洋灰工業(株)外1

二酸化炭素低減用の素材を用いた人工漁礁

漁礁

2010.08.05.

10-1008822

(株)ハンドンR&C

セラミック粉末を用いた水質改善用の人口漁礁

漁礁

2011.01.11.

人口漁礁と藻場とは?

人口漁礁は、水中に生物の産卵場、生息場、海の牧場、藻場の造成のために人工的に設置される様々な構造物を意味する。人口漁礁は、海の中で暗礁や島のような役割を果たしており、海水の流れを変化させて魚介類に餌や生息の場所を与えるなど、魚介類に必要な環境を造成する。

藻場とは、沿岸域で形成された大型の海藻類群落体を意味し、海中林とも呼ぶ。藻場は、海洋の1次生産者として有機物質を生産し、魚介類の食糧原になるほか、魚類の産卵場、幼魚・子魚・稚魚の保育場など、有効な水産生物の住所(巣)として水産資源生態系構成の効果を持つ。その他、海中の景観になったり、光合成を通じて海中の酸素供給と二酸化炭素の吸収、栄養塩を吸収して沿岸の富栄養化を防止したりするなど、漁場環境の改善の役割もしている。

資料3:藻場造成技術関連写真

麗水エキスポの現場に設置されている移動型藻場

スラグを利用した藻場造成用の施設物(ポハン産業科学研究院、特許第650268号)

藻場パネル(韓ミンホ外1、特許第1127136号)

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