知的財産ニュース スマートフォン業界、特許管理会社による特許訴訟合戦が拡大

2012年8月8日
出所: 電子新聞

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グローバル特許管理会社(Patent Troll)の強力な攻め込みで韓国の携帯端末業界が揺さぶられている。

目まぐるしく変化するスマートフォン環境の下で生き残りをかけて、ロング・ターム・エボリューション(LTE)携帯電話端末分野での主導権確保に奮闘している韓国企業が、特許訴訟合戦に足を引っ張られる可能性があると懸念の声が強まっている。

特許管理会社は、アップルやノキアなどの競合会社とは違い、反訴でクロス・ライセンスに合意する可能性がない。巨額のロイヤルティを支払う状況に追い込まれないためには、戦略的な対応を準備する必要がある。

巨大化する特許管理会社の脅威

Inter Digital・Intellectual Ventures・FlatWorld Interactives・Rockstar Bidcoなど、パテントトロールと呼ばれる特許管理会社(NPE:Non-Practising Entity)が、韓国企業を対象に攻勢をかけ始めた。生産・販売を行なわず、特許権の買収と行使だけで収益を得ている特許管理会社は、現在400社に及ぶ。

代表的な特許管理会社であるInter Digitalは、2006年からサムスン電子とLG電子を相手に特許訴訟を提起してロイヤルティを受け取っている。パンテックもInter DigitalとIntellectual Venturesに特許使用料を代価に持ち分を売った。

最近では、FlatWorld Interactivesが米国のデラウェア地裁で自社のタッチ技術の特許を侵害したとしてLG電子を相手に訴訟を提起した。アップルが筆頭株主のRockstar Bidcoは、サムスン電子、LG電子、パンテックがWi-Fiや動画再生技術の特許を侵害したと主張している。

チェジョングク国際特許法律事務所のチョン・ウソン弁理士は、「合意や賠償金で収益を上げている特許管理会社に勝つ手はない。通信・映像・ソフトなど、ICT技術が集約されていて、技術変化のスピードも速いスマートフォン関連の特許紛争は、今後、さらに増えるだろう。」と予想している。

LTE特許を狙った攻勢がスタート

特許管理会社が最近注目しているのは、LTE技術分野だ。2G・3Gとは異なり、LTEは、現在成長段階に入っている市場であるためだ。

韓国特許庁が4月調査した結果によると、Inter Digitalが韓国で出願したLTE標準特許候補技術は321件に達している。そのうち118件は登録済みだ。約半分の160件は審査待機中にある。

Inter Digitalは、米国と日本にもそれぞれ618件、155件の特許を出願しており、そのうち77.8%と55.5%が審査手続きを行っている。

今年の年末からは特許管理会社によるLTE技術特許の攻勢が強まると予想されている。韓国特許庁ネットワーク審査チームの金・ビョンウチーム長は、「特許管理会社と韓国ICT企業の攻防戦はLTE市場の活性化と相まって激しさを増していくだろう」と予想した。

対応策作りが急がれる

2006年以降、Inter Digitalの毎年の収益のうち、最も高い割合を占めているのは、サムスン電子とLG電子などの韓国企業からのロイヤルティだ。LTEスマートフォン事業に力を入れている韓国企業が特許攻勢にきちんと備えるべき理由だ。

業界は、特許管理会社が主張する特許侵害の大半は、一方的な内容が多いので冷静で客観的な対応戦略を維持することが重要だと口を揃えて強調する。特許交渉において相手の特許を安易に認めるミスを犯してはならないという指摘だ。

携帯電話端末業界の関係者は、「特許管理会社が普通の事案を問題化し、自社に有利な方向に持って行く事例が多く見られている。十分な検討と分析で、きちんとした対応戦略を立てるべきだ。」と述べた。

一方、攻撃のきっかけを与えないためには、特許と標準化競争に一層の力を入れるべきだという指摘が出ている。特許専門家は、「特許管理会社は、Aという技術を出願する際、同時にA-1、A-2のように類似特許技術を出願して隙間を無くしている。」と説明する。

知識経済部の李・ヒョンウ次世代移動通信プログラムディレクター(PD)は、「大企業は、基盤技術の確保に力を入れて先手を打つ必要がある。比較的に交渉力の低い中小企業のためには、政府が特許紛争予告システムを強化するなど、常時的な支援システムを設けるべきだ」と強調した。

李ホジュン記者、金インスン記者

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