知的財産ニュース 非専門家の陪審員「感情的な判断」という限界

2012年8月26日
出所: デジタルタイムズ

3702

自国企業のデザイン権のみ認定…保護貿易主義の限界にぶつかった
サムスン対アップルの米国における陪審員評決で広がる波紋

今回の評決で米国の陪審員制度を指摘する声が相次いでいる。

非専門家で構成された陪審員にグローバルスマートの生態系を左右するほど重要な評決を任せたということだ。特に、一般国民の場合、自国の利益を優先しがちであるだけに、陪審員の評決が保護貿易主義の限界にぶつかってしまったという指摘が出ている。

専門的な分析ではなく、感情的な観点による評決を下す可能性は、裁判が始まる前から外国メディアが言及してきた。サムスンとアップルの弁護人も米国の陪審員制度の特徴を踏まえ、感情を刺激する形で弁護戦略を取ってきた。しかし、サムスンは、標準技術特許侵害の事実を立証しなければならなかっただけに、非専門家である陪審員を説得することが難しくなるというのは目に見えていた。

こうした懸念は現実のものとなった。陪審員は、アップルが主張したデザイン権を全て認め、一部の商品を除いた全てのサムスン商品がそれを侵害したと評決した。その上、以前の判決では、アップルに深刻な経済的な損害を与えたとして販売差し止め仮処分判決を言い渡された「ギャラクシーTab」が陪審員の評決では、アップルの特許を侵害していないと相反する結論を出した。

これまでドイツ、オランダ、韓国、米国などでサムスンとアップルの特許本案訴訟が行われ、3カ国でサムスン商品は、販売差し止め仮処分が命じられた。
しかし、米国を除く国では一方的な勝利を判決していない。アップルのデザイン権特許侵害を認めたのもドイツのみだ。

こうした状況から、陪審員の公正性、独立性の問題が指摘されている。一例をあげると、サムスンに10億ドル以上の巨額の損害賠償を決める過程で、陪審員は、コウ・ルーシー裁判官が評決前に配布した評決指針をきちんと履行していないという疑惑まで浮上した。陪審員の代表者は、ロイターとのインタビューで「陪審員が送るメッセージは、(特許侵害会社を)軽く叱るのではなく、十分に苦しむ程度にしないといけなと考えた」と話した。

これは、裁判官が下した陪審員の指針と相反する評決を出したと分析できる。コウ裁判官は、陪審員への指針を通じて「損害賠償額は、特許侵害者を懲罰するのではなく、特許保有者への補償だということを肝に銘じること」と明記した。

国益の面では、アップルにフレンドリーだった可能性も排除できない。サムスン電子は、今年第1四半期の売上高が45兆2700億ウォンに達し、米国時価総額第1位の44兆6700億ウォンよりも高くなり、アップルの強力な競争相手として浮上した。米国内のスマートフォン市場でもアップルが34%のシェアを占め、首位の地位を確保しているが、最近、サムスンが17%を記録し、アップルの座を脅かしている。

朴ジソン・金ユジョン記者

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195