知的財産ニュース 枯渇する化石燃料、浮上するバイオ燃料

2012年5月4日
出所: 韓国特許庁HP

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2008年の米国発グローバル経済危機を賢く克服している大韓民国が非常事態に陥った。最近、中東地域の情勢不安にともなって原油価格が急騰、石油依存度が高い韓国経済全般に暗雲が立ち込めている。

前世紀、人類が成し遂げた産業発展は石油、石炭、ガスなど化石燃料に基盤を置いた。 特に石油は私たちの人生に無くてはならないエネルギー源だが、近い将来その生産量が頂点1)に到達するという懸念まで出てきている。また、化石燃料を使用する工程は二酸化炭素と廃棄物を大量に発生させ、地球温暖化または環境問題の主原因となり注目を集めている。

このような化石燃料に対する代替エネルギー資源に、バイオディーゼルのようなバイオ燃料が浮上しており、最近これに対する技術開発および特許出願が急増している。

バイオ燃料(biofuel)とは、自然界に存在する有機物質を総称する「バイオマス2)」から得られる燃料で、バイオエタノール、バイオディーゼルなどが代表的だ。バイオ燃料の燃焼時に排出される二酸化炭素は、生物体が成長して空気から吸収したものであるため、バイオ燃料は総量的に大気中のCO2濃度を増加させない利点がある。

韓国特許庁資料によれば、「バイオ燃料」に関連した特許は2002年から2011年まで計237件が出願され、2007年まで10件前後に過ぎなかった出願が2008年33件を越え、2009年54件、2010年50件、2011年62件と最近急増している。特に2007年までは外国人出願が多く占めていたが、2008年以降は内国人出願が着実に増加し、昨年は全体出願の98%を越えた。

出願を主体別に調べると、企業が86件(36%)と最多で、次に大学74件(31%)、政府および政府出資研究機関52件(22%)、個人25件(11%)の順であることが分かった。ここで一つ注目する点は、2008年から大学および政府出資研究所の出願が大幅に増加したという点だ。これは対外的に京都議定書3)が発効され、温室ガス縮小のための代替エネルギー関連の研究が活発となり、対内的に政府が低炭素グリーン成長政策を強力に推進した結果によると解釈される。

細部技術別の出願動向を調べてみると、バイオ燃料の生産に有用な「微生物、酵素または遺伝子」関連技術が全体出願の37%を占め、続いて「微細藻類など」原材料関連技術が20%、バイオディーゼルなど「最終生産物」関連技術が11%、バイオ燃料生産工程と関連した「前処理」技術および「発効工程」技術が各々8%、8%、酵素吸着、固定などその他関連技術が16%を占めた。

一部では、飢餓問題が解決されていない状況で食糧資源と競争するバイオ燃料技術に対しあまり良い見方をしていない。従って、食糧と競合しない海洋バイオマス、捨てられる副産物、生ゴミなどを原料とするバイオ燃料の技術開発に集中する必要がある。革新的なバイオ燃料技術は、エネルギーの対外依存度が高い韓国にエネルギー自主権を確保する機会となるだろう。


注記

1) オイル ピーク(oil peak):油田内採掘量が最初の埋蔵量の半分を越えた段階. ネイチャー,2008年によれば、2018年ぐらいに到達すると予測。
2) バイオマス(biomass):生きている有機体だけでなく、動物の排せつ物など代謝活動から出る副産物まで全てを含む。
3) 京都議定書:地球温暖化規制と防止のための国際協約。1997年12月、日本,京都で開催された気候変化協約第3回当事国総会で採択された。2005年2月16日に公式発効され、先進国(38ヵ国)は1990年を基準に2008~2012年まで平均5.2%の温室ガスを縮小しなければならない。

参考資料

バイオ燃料技術概要

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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