知的財産ニュース 「ナロ号」、韓国の宇宙技術特許の希望を打ち上げる

2012年10月25日
出所: 韓国特許庁

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国内における特許出願、大型ロケットは196件、衛星ロケットは340件

韓国とロシアの大型ロケット技術が融合された「ナロ号」が10月26日の3回の打ち上げを準備している。

「ナロ号」の打ち上げとともに、韓国が独自開発した衛星ロケット(以下、韓国型ロケット)の開発に成功すれば、ロシア、フランス、日本、中国、イギリス、インド、イスラエル、イランに続く10番目の「スペースクラブ[1]」のメンバーになる。

これは、宇宙開発では後発ランナーである韓国の国家ブランドの価値を高め、これまでの宇宙技術特許の価値が認められることになるだろう。

韓国特許庁によると、1990年以降から大型ロケット関連[2]の国内出願は196件だという。このうち70件は、個体推進ロケットに関する特許であり、このように蓄積されてきた技術が「ナロ号」2段ロケット開発の土台となったと言える。

また、残りの126件は液体推進ロケット関連の特許であり、液体推進科学ロケットである「KSR-III」が打ち上げられた2002年と、「ナロ号」が打ち上げられ、韓国型ロケットの先行開発が大きく発展した2008年以降から増加しており、液体推進ロケットの技術が着実に国産化していることがうかがえる。

これは、液体推進剤を燃焼室に供給する方式で、加圧式の「KSR-III」とターボポンプ方式の「ナロ号」は異なるものだ。ターボポンプは、液体推進ロケットを大型化するためのコア部品であり、その開発が難航していたため「ナロ号」1段ロケットはロシアの支援を受ける必要があった。

しかし、「ナロ号」以降、宇宙開発のエンジンになり得る韓国型ロケットの開発事業にターボポンプ方式が指定されてからは、ターボポンプ関連技術の開発が進められているということも特許に反映されている。ターボポンプ関連の国内特許出願が2004年1件からスタートし、2010年には7件に増加したのだ。

一方、衛星ロケット関連[3]の国内特許出願は、韓国初の人工衛星「ウリビョル(我々の星)1号」が打ち上げられた翌年の1993年1件だったのが2010年には48件に増え、韓国の衛星ロケットの目覚ましい技術の発展を象徴している。

また、「ウリビョル1号」の人工衛星技術を蓄積してきた韓国のベンチャ企業が衛星ロケットを輸出し、国際競争力を認められた事例からも分かるように、衛星ロケット技術は、技術開発段階を経て今や、実用化の段階に差し掛かっていると分析できる。

教育科学技術部の資料[4]によると、2007年から2011年の予算のうち、衛星ロケットは、全体の67%と、大型ロケットと宇宙センター構築の予算より2倍多く、同時期の特許出願も衛星ロケットが152件と大型ロケットの77件より2倍多くなり、政府の持続的な投資の成果が表れている。

このような地道な宇宙技術開発にも問題点はある。宇宙技術分野に係っている韓国企業の大半が政府主導の宇宙開発事業において部品の製作に参加する下請け会社だということだ。しかし、これからは、宇宙技術分野でも国内企業が研究開発段階からパートナとして参加し、その蓄積された技術を特許化して付加価値の高い産業の大きな柱になり、宇宙開発を先進国型産業に発展させることができるだろう。

衛星ロケットシステムの国内における特許出願(単位:件)

1990-1996

1997-2001

2002-2006

2007-2010

ペアリング

0

1

7

5

衛星ロケット

17

93

78

152

大型ロケット

個体推進ロケット

9

19

20

22

液体推進ロケット

4

19

48

55

ロケット技術分野における韓国、米国、日本、欧州の特許出願の動向(1990年から2010年まで)

2011年は、公開されていない出願が含まれる可能性があるため省略
※欧州の場合、欧州特許庁(EPO)に出願した特許のなかで英文化された特許を集計

ロケット技術分野における国内出願人の割合(1990年から2010年まで)

液体推進ロケット及びターボポンプ関連の国内特許出願の動向

※2011年は、公開されていない出願が含まれる可能性があるため省略

衛星ロケット技術分野における国内特許出願の動向(1990年から2010年まで)

※2011年は、公開されていない出願が含まれる可能性があるため省略

衛星ロケット技術分野における国内出願人の割合(1990年から2010年まで)

宇宙開発資源に投資された予算(1992年から2011年まで)
(資料の出処:教育科学技術部、「第2次宇宙開発振興基本計画」、2011.12.)


注記

[1] Space Club、衛星ロケットと大型ロケットを独自技術で開発し、自国で打ち上げた国が加盟する組織
[2] 推進ロケット関連技術のみを集計
[3] 衛星を利用する機械及び通信関連サービス技術分野などを除いた、衛星ロケットに適用される技術のみを集計した数値である。
[4] 教育科学技術部が発表した「第2回宇宙開発振興の基本計画」2011.11

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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