知的財産ニュース 拡大するサムスン対LGの「ディスプレイ訴訟合戦」

2012年12月30日
出所: 電子新聞

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今年4月から始まったサムスンディスプレイとLGディスプレイの技術をめぐる攻防がラウンド3に差し掛かっている。9ヵ月間の争いは、さらに拡大している様子だ。アクティブマトリックス式有機EL(AMOLED)生産技術から始まった攻防戦は、小型OLEDに止まらず、LCD技術にまで拡大した。最近では、「相手会社のコア技術の評判を落とす」と同時に、「相手の専門分野でのシェアを積極的に攻め取る」宣戦布告として訴訟を利用している。

30日の業界によると、サムスンディスプレイとLGディスプレイが戦略的な「ケンカ売り」の技術戦争を拡大しているという。

サムスンディスプレイは、最近、PLS(Plane to Line Switching)LCDパネルの生産能力を大幅増強し、LGディスプレイの特許にブレーキをかけた。サムスンディスプレイがOLED市場で独自の立場を有しているように、高画像度の広視野角液晶パネル市場は、LGディスプレイが握っていた。サムスンは、新年からはPLS LCDを搭載したスマートパッド(タブレットPC)事業に本腰を入れる計画だ。今回の争いは両社ともに、「サムスン=AMOLED、LG=LCD」というイメージを破るための戦略だとも解釈されている。

サムスン電子は、高画像度の広視野角LCDを生産するためには、ハイディスFFS(Fringe Field Switching)とともに、サムスンのPLS技術のライセンスも必要だと主張している。PLSとは、面形電極と線形電極を水平に配置する技術だが、負極・正極の間に隙がないように配置したFFS技術と特許の出願時期が近いということをその根拠として挙げ、LGディスプレイがハイディスとライセンス契約を結んだようにサムスンのPLSライセンスを締結しなければならないと主張した。

LGディスプレイは、「AH-IPSはIPSから進化したものだ」と反論している。IPSとは、電極を水平に配置し、液晶を押しても形が変わらない液晶構造を意味する。AH-IPSは、水平電撃でありながらも電極の間に隙がなく、ピクセルの小さい高画質ディスプレイ向け技術である。LGは、AH-IPSがIPSの延長線にあるとして「サムスンがでたらめな主張を繰り返している」と攻撃した。

ここから一歩進み、LGは、サムスンが力を入れているスマートパッド向けLCD事業に特許で歯止めをかけた。LGディスプレイは、最近、サムスン電子の「ギャラクシーNote10.1」が自社のIPS特許3件を無断で使用したとして生産差し止め仮処分を申請した。

業界の間では意見が分かれる。面形電極の概念によりIPSとFFS・PLSを異なる技術として分類したり、電極を水平に配置したということからIPSとFFS・PSLを同系列だと見なしたりする。

業界では、真偽の判断より、両社の攻防が戦略的な「喧嘩売り」という見方だ。市場で技術を競う代わり、裁判所で長たらしい係争を繰り広げているということだ。サムスンのギャラクシーシリーズがLGディスプレイのAM OLED回路配置の特許を侵害したとして提起した訴訟も同じ流れだという見方が多い。LGがフレキシブルAM OLEDを用意しているだけに、未来の市場を狙った技術力を誇示するきっかけにするためだということだ。

業界の関係者は、「非難や激しい感情的な表現は減ったが、係争は広がっている。サムスンとLGのプライドをかけた争いが続けば、今後、様々なイシューに拡大するだろう。」とコメントした。

ムン・ボギョン記者

サムスン・LGディスプレイ関連の係争日誌

日付

事件

4月5日

京畿地方警察庁、技術流出の疑いでサムスンモバイルディスプレイの元・現職の研究員とLGディスプレイ取締役を検挙。その後、対面的増着技術関連の攻防が始まる。

9月5日

サムスンディスプレイ、LGディスプレイを相手に侵害差し止め仮処分を申請

9月27日

LGディスプレイ、サムスンディスプレイを相手にOLED設計技術7件に対する特許侵害差し止め及び損害賠償請求訴訟を提起

11月19日

サムスンディスプレイ、LGディスプレイのOLED特許の無効訴訟を提起

12月7日

サムスンディスプレイ、LG電子とLGディスプレイを相手に広視野角(PLS)関連特許7件侵害訴訟を提起

12月26日

LGディスプレイ、ギャラクシーTab10.1販売差止め仮処分の訴訟を提起

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