知財判例データベース 商標権者が破産宣告を受けた場合において、破産手続の進行だけでは不使用取消審判の「商標不使用の正当な理由」にならないと判示された事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- A (請求人、被告、被上告人) vs B (参加人、原告、上告人)
- 事件番号
- 2024フ11460判決
- 言い渡し日
- 2026年03月12日
- 事件の経過
- 上告棄却(確定)
概要
商標権者が破産宣告を受け、破産管財人が選任された期間の登録商標の不使用に正当な理由があるかについては破産管財人を基準に判断すべきであり、破産手続が開始されたという事由だけでは登録商標の不使用に正当な理由があると認めることはできないとした。
事実関係
韓方生薬製薬会社であった訴外Cは、指定商品を豆、さつまいも等とした商標「
」について2005年末に登録を受けた(以下「本件商標」)。当時Cは、韓方生薬「牛黄清心元」について別の製薬会社Bと共に市場をほぼ独占していた。
その後、Cは、2009年に経営難でBから4億ウォンを借用し、借用金債務の担保として本件商標を含む8件の商標権に対して根質権を設定し、結局、2016年に破産宣告を受けることとなった。2017年の破産手続においてCの破産管財人はAに対してCの商標権647件を約38億ウォンで売り渡す契約を締結して移転登録をしたが、本件商標を含む一部の商標権は売買契約にもかかわらず移転登録されずにそのままCの名義で残っていた。Aは2022年に本件商標に対し不使用取消審判を請求し、これに対しBは根質権者で参加人として審判に参加し、その後、特許法院の審決取消訴訟では原告、大法院では上告人当事者となった。
判決内容
原審は、本件商標が取消審判請求日前3年以内に韓国国内で使用された事実がなく、Cが破産宣告を受けることになった経緯や本件商標に対する破産宣告以前の使用関係、Cの破産管財人が法院に商標使用のための営業許可申請をしたか等の商標使用のために傾けた努力等、様々な事情に照らしてみると、不使用に正当な理由がないため登録が取り消されるべきであると判断した。
これに対しBは上告し、大法院は「正当な理由が認められて商標登録の取消しを免れるためには、疾病その他天災等の不可抗力によって営業することができない場合だけでなく、法律による規制、販売禁止又は国家の輸入制限措置等によってやむを得ず登録商標の指定商品が国内で一般的・正常に取引できない場合のように、登録商標を使用できる者が統制することのできない客観的・外部的要因によるやむを得ない事由により登録商標を指定商品に使用することができない状況が続いたという点を商標登録取消審判の被請求人が証明しなければならない。登録商標を使用できる者の営業不振や法的紛争のおそれ等といった主観的・内部的要因による事由だけでは、特段の事情がない限り、商標登録の取消しを免れることはできない。」という既存の法理を再確認し、「破産債務者が破産宣告当時有していた全ての財産は破産財団に属し(債務者回生法第382条第1項)、破産財団を管理及び処分する権限は破産管財人に属するため(同法第384条)、破産財団に属する登録商標の商標権を管理及び処分する権限も破産管財人に属する。したがって、商標権者が破産宣告を受けて破産管財人が選任された期間の登録商標の不使用に正当な理由があるかについては、破産財団に属する登録商標の商標権を管理する破産管財人を基準に判断すべきである。」という基準を提示し、本件について次の通り判断した。
- Cに対する破産手続が開始されたという事由だけでは、本件商標を使用できる者が統制することのできない客観的・外部的要因によるやむを得ない事由によって本件商標を指定商品に使用することのできない状況が持続したとは認め難い。
- Aは破産手続中に本件商標権を買い取ったが、移転登録を終えていなかったため、本件商標権者は依然としてCである。
- Cが破産宣告を受けて本件商標の商標権は破産財団に属することになり、その商標権を管理及び処分する権限は破産管財人に属することになった。
- 破産手続は取消審判請求日3年前に既に進められていた状態であったため、3年の間本件商標の不使用に対する正当な理由があるかについては本件登録商標権を管理及び処分する権限を有するCの破産管財人を基準に判断すべきである。
- 債務者回生法486条は、破産管財人は法院の許可を得て債務者の営業を継続することができると規定しており、Cの破産管財人が商標の不使用による本件商標の登録取消しを防ぐために上記規定による法院の許可を得て必要な範囲内でCの営業を継続したのであれば、本件商標を指定商品に使用する可能性があった。
これに対し大法院は、破産管財人がこのような許可申請を行って本件商標を指定商品に使用しようとした事情は見当たらず、その他にCの破産管財人に対する本件商標の使用を不可能にする他のやむを得ない事由も見当たらないことから、本件商標の不使用に対する正当な理由がないため、登録取消審決を維持した原審は妥当であると判示した。
専門家からのアドバイス
審判請求日前3年の商標不使用による不使用取消審判に関する商標法119条3項は、「被請求人が使用しないことに対する正当な理由を証明した場合」は登録の取消しを免れると規定している。これに関し本件は、商標権者が破産宣告を受けた場合、不使用に対する正当な理由があるか否かについては破産管財人を基準としなければならないという点、及び、商標権者が破産宣告を受けたという事実だけでは正当な理由としては認められない点について判断したものであった。
参考として、本件と同日付で出された大法院2026年3月12日言渡2024フ10504判決もまた、 商標法119条3項の正当な理由の有無が争点となった事案であった。この事件の原審は商標権者が他人の商標権侵害に該当するおそれがあるため使用しないことを正当な理由に該当するとしたが、大法院はこのような事情は正当な理由に該当しないと判断し、原審を破棄して差し戻している。
韓国において2025年の不使用取消審判を含む商標取消審判の請求件数は2,745件に上っており、上記の事案のように実際に商標登録が取り消される事案も多い。したがって、商標権の確保に傾ける努力以上に不使用取消への備えが必要であって、単に営業不振や法的紛争のおそれがあるといった主観的・内部的要因による商標の不使用は、不使用の正当な理由として認められないという点には十分留意する必要があろう。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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