知財判例データベース 米国法人が韓国国内未登録の特許権の使用料を韓国法人から支払われ、その特許技術が韓国で使用されたのであれば、その使用料について韓国に課税権があると判断した事例

基本情報

区分
その他
判断主体
大法院
当事者
原告・被上告人(米国法人) vs 被告・上告人(器興税務署長)
事件番号
2021ドゥ60298法人(源泉)税更正拒否処分取消請求
言い渡し日
2025年12月04日
事件の経過
原審判決破棄及び差戻し

概要

米国法人が韓国国内未登録の特許権の使用料を韓国法人から支払われた場合、当該特許権の特許技術が韓国において使用されたのであれば、その使用料については韓国に課税権があると判断した(大法院2025年9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決に続く事例)。

事実関係

原告は、ベーマイト(Boehmite、アルミニウム酸化水酸化物鉱物)からなるバッテリー、セル、セパレータ、電解液に関する国内外の特許権を所有する米国法人である。原告は2017年7月、B株式会社に20件の特許権についてライセンスを許諾し、使用料を受け取る契約を締結した。上記20件の特許権のうち1件だけが韓国で登録された特許であり、残りの19件(以下「国内未登録特許」)は韓国以外で登録された特許である。上記使用料は特許1件当たり米国通貨147,500ドル(当時の為替レートで約1億7千万ウォン)とした。B株式会社は2017年8月、原告に20件の特許の総使用料として約34億ウォン(=1億7千万ウォン×20件)を支払い、課税当局(器興税務署)に源泉徴収分の法人税約5億ウォン(=34億ウォン×15%)を納付した。
その後、2019年10月、原告は国内未登録特許の使用料は国内源泉所得に該当しないという理由で、支払った法人税のうち約4億7千5百万ウォンの払い戻しを求める更正請求をしたところ、被告はこれを拒否する処分を行った。これに対して原告は、拒否処分の取消しを求める行政訴訟を提起し、行政訴訟の1審(水原地方法院2020月10月22日言渡2020区合63765判決)と2審(水原高等法院2021年11月5日言渡2020ヌ14850判決)はいずれも原告勝訴の判決を下した。

判決内容

韓国と米国間の「所得に関する租税の二重課税回避と脱税防止、及び国際貿易と投資の増進のための協約(以下「韓米租税協約」)は、第14条第4項において特許等の使用に対する対価として受け取る支払金を「使用料」と規定し、第6条第3項において「使用料は、ある締約国内の同財産の使用に対して支払われる場合にのみ同締約国内に源泉を置く所得として取り扱われる」と規定する。同協約第2条第2項は「この協約において使用されていても、この協約において定義されていないその他の用語は、異なる文脈によらない限り、その租税が決定される締約国の法律により内包する意味を有する」と規定する。韓米租税協約による「使用地」を確定するには、まず「使用」の意味を明確にする必要があり、韓米租税協約は「使用」の意味を特に定義していないため、「使用」の意味は租税が決定される締約国の国内法により解釈すべきである。これに関し、旧法人税法第93条第8号(2017月12月19日に法律第15222号で改正される前のもの)は、国内未登録特許権が国内における製造・販売等に使用された場合には、国内登録の有無に関係なく国内において使用されたものとみなすと規定する。ここで「使用」とは、独占的効力を有する特許権自体を使用することではなく、その特許権の対象となる製造方法・技術・情報等(以下「特許技術」)を使用する意味と解釈すべきである。したがって、国内未登録特許権の特許技術が国内において使用された場合には、その対価である使用料所得は国内源泉所得に該当する(大法院2025月9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決)
このような法理に照らしてみると、本件における使用料が特許権の対象である特許技術を韓国国内での製造・販売等に事実上使用することへの対価である場合、国内源泉所得に該当する。しかし原審は、本件使用料が国内未登録特許権に係るものであるという理由だけで、当該特許技術が国内での製造・販売等に事実上使用されたかについては検討もせず直ちに国内源泉所得に該当しないという判断をした。このような原審の判断には、韓米租税協約上、国内未登録特許権に係る使用料が国内源泉所得に該当するかに関する法理を誤解したことにより、必要な審理を尽くさず判決に影響を及ぼした誤りがあるため、原審判決を破棄し事件を再度審理・判断するよう原審法院に差し戻す。

専門家からのアドバイス

本判決は、大法院2025年9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決に続く大法院判決であって、本件の争点は、韓米租税協約上の「特許の使用」の意味を、(i)いわゆる「国内未登録特許権の使用」も含むものとして当該特許技術を韓国での製造・販売に活用する「事実上の使用」と解すべきか、それとも(ii)特許権の登録国における輸入・販売等の「特許発明の実施」と解すべきかという点であった。これまで韓国の大法院は、特許権の属地主義の原則を重視して1992年以降は2022年に至るまで(ii)の立場を取ってきたため、本件の1審と2審はそれに基づく判断をしている。しかし大法院は2025年9月18日言渡2021ドゥ59908全員合議体判決を通じて(i)へと立場を変え、これに従って本件(2025年12月4日言渡)判決では、原審において同趣旨の審理を尽くしていないと判断したのである。
本件において破棄差戻し後の原審法院は、19件の国内未登録特許の「特許技術」が国内での製造・販売等に活用されたか否かを審理し、その結果により、これらの特許の使用料のうちいずれの部分が韓国に課税権のある国内源泉所得に該当するのかを判断するものと予想される。なお、上記大法院全員合議体判決の内容については、ジェトロ判例データベース(2025年9月18日言渡2021ドゥ59908)をご参照いただきたい。

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