知財判例データベース 先使用商標の使用期間が比較的短期間でも需要者に特定人の商標として認識されていた点を認め、それに同一・類似の商標を原告が不正の目的で出願したと判断された事例

基本情報

区分
商標
判断主体
特許法院(韓国)
当事者
原告 vs 知識財産庁長
事件番号
2025ホ10296 判決
言い渡し日
2025年10月30日
事件の経過
請求棄却(上告中)

概要

先使用商標は2016年頃から使用され始め、原告は2020年8月頃に先使用商標と類似する商標を出願した。特許法院は、先使用商標について、その使用期間に加え、広告の内容、商品レビューの数等を総合的に考慮して国内需要者に特定人の商標として認識されていたと判断し、また、両標章及び商品がそれぞれ同一・類似である点、及び、原告が以前にも他人の先出願等を理由に拒絶決定を受けていた点等を総合して、原告が不正の目的をもって当該商標を出願したと判断した。

事実関係

原告は、2020年8月24日付で標章「この図は、本件商標「COCINA」を示している。」(下段のハングル部分は「コシナ」と呼称。以下「本件商標」という)について、「シャワー器、シャワーヘッド等」を指定商品として商標出願をした。審査官は2021年7月1日付で拒絶決定をし、その理由は、指定商品を「浴室用マット等」とする先使用権者の先登録商標「この図は、先登録商標「コシナ」を示している。」(ハングル部分は「コシナ」と呼称)、「この図は、先登録商標「KOXINA」を示している。」(いずれも2019年9月16日出願)に類似する旨の商標法第34条第1項第7号(先登録類似)、及び、指定商品を「家庭用電気足浴器等」とする「この図は、先出願類似に当たる商標「Kocina」を示している。」(ハングル部分は「コシナ」と呼称)(2016年6月2日出願)に類似する旨の第35条第1項(先出願類似)によるものであった。

これに対し特許審判院は、両商品の品質や用途、生産者及び販売者、需要者の範囲が大きく重複しているとはいえず、具体的な取引実情もかなり異なると判断し、拒絶決定を取り消した。その結果、本件商標は出願公告された。

その後、先使用権者が提起した異議申立ての手続において、本件商標は先使用商標「この図は、先使用商標「コシナ、Ko-Xina、KOXINA」を示している。」に蓄積された良質なイメージに便乗しようとする不正の目的で出願された商標であり、商標法第34条第1項第13号に該当するとして拒絶決定された。これに対し原告が拒絶決定不服審判を請求したが、特許審判院も同様の趣旨で請求を棄却した。

判決内容

特許法院は、商標法第34条第1項第13号に該当するかを判断するための2つの基準として、①先使用商標が韓国内の需要者に特定人の商標として認識されているか、及び②出願人が不正の目的で出願したかについて、既存の大法院の判示を再確認した。具体的には、先使用商標が韓国内又は外国の需要者の間で特定人の商標として認識されているかについては、その商標の使用期間、方法、態様及び利用範囲等と取引の実情又は社会通念上、客観的に相当程度知られているか等を基準として判断すべきであるとし(大法院2019年8月14日言渡2017フ752判決、大法院2013年5月9日言渡2011フ3896判決参照)、出願人に不正の目的があるかの判断については、特定人の商標の認知度又は創作性の程度、特定人の商標と出願人の商標の同一・類似性の程度、出願人と特定人との間で商標をめぐる交渉の有無とその内容、その他両当事者の関係、出願人が出願商標を使用した事業を具体的に準備していたか、商品の同一・類似性又は経済的牽連性の有無、取引の実情等を総合的に考慮すべきである(大法院2014年1月23日言渡2013フ1986判決参照)と説示した。

続いて本件において①先使用商標が韓国内の需要者に特定人の商標として認識されていたかについては、先使用権者が2016年から先使用商標を商品の名称や包装等に使用して商品を販売し、広告や割引イベントも継続的に行ってきたことが認められる点、商品のレビューが多数存在する点、先使用権者が2019年に大手オンライン・イーコマースプラットフォームと総広告費2億4千万ウォンの年間広告契約を締結した点、先使用権者の商品に関する購入後のレビューがインターネットポータル「ネイバー」のブログに多数掲載されている点等を総合すると、先使用商標は本件商標の出願当時、国内需要者の間で特定人の商標として認識されていたと認めるのが相当であると判示した。

これに関連し、原告は先使用商標が韓国内の需要者に特定人の商標として認識されていなかったという主張を裏付けるための証拠として商標認知度調査を提出したが、これに対しては対象者の年齢・性別・地域分布を確認できる資料が提出されなかったため、その統計の客観的価値をそのまま認めることは難しいとし、また、仮に当該調査の結果に信頼性を付与するとしても、その認知度調査において回答者の約30%が先使用商標を「聞いたことがある」「見たことがある」と答えたことは、むしろ先使用商標が特定人の商品を表示する商標として認識されていたと認める根拠となり得ると説示した。

さらに②原告が不正の目的で出願したかに関しては、本件商標と先使用商標の標章が同一・類似である点、先使用商標が「シャワー器、シャワーヘッド」等の商品について韓国内の需要者の間で特定人の商標として知られていたが、本件商標は先使用商標が使用されていた商品と同一の商品である商品類区分第11類の「節水用シャワー器、シャワーヘッド」等を指定商品として出願された点、原告が2012年から現在まで合計24件の商標を出願しており、その過程で一部の商標について商標法第34条第1項第12号を理由に拒絶された経験がある点等を総合すると、原告は先使用商標を模倣し、それに蓄積された名声や営業上の信用に便乗しようとする不正の目的をもって本件商標を出願したと認めることができると判示した。

専門家からのアドバイス

本件商標の取消理由となった商標法第34条第1項第13号については、その判断基準時点は本件商標の出願時であるところ、本件の事例では、本件商標が出願された2020年8月よりわずか4年前の2016年から先使用商標の使用が開始されており、先使用商標について比較的短期間の使用実績及び年間契約2億4千万ウォンという多くはない広告費等を根拠として、韓国内の需要者に特定人の商標として認識されていた点を認めている。こうした商標の認知度の判断は、単一の証拠によるものではなく、販売・広告・流通・購入レビュー・プラットフォーム契約等を総合的に評価して行われるものであるため、周知性の立証資料の確保に多少の困難があるとしても多方面の証拠を収集することが有効になりうることを本件はよく示している。
かかる証拠収集に関連し商標事件での認知度調査は重要な証拠として機能することもあるが、本件の場合は、先登録商標の認知度調査を実施して提出した側にとって、むしろ不利な証拠として判断されてしまっている。こうした商標認知度調査を提出する場合には、標本の構成(年齢・性別・地域分布)、調査方法(電話・オンライン)、標本の大きさ、質問設計等が客観的に妥当性を備えるよう準備したい。その際、認知度調査の結果が意図しない方向で不利に解釈される可能性があることに十分留意する必要がある。

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