知財判例データベース オンラインeコマース上に先行デザインとともに記載された「Date First Available」の日付表記だけでは公知日として認められないとされた事例
基本情報
- 区分
- 意匠
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- 原告 vs 特許庁長
- 事件番号
- 2024ホ16021判決
- 言い渡し日
- 2025年07月24日
- 事件の経過
- 審決取消(確定)
概要
オンラインeコマースであるアマゾンのサイト上に先行デザインとともに記載された「Date First Available(最初の購入可能日)」の記載だけでは、当該先行デザインが最初の購入可能日以降に本件出願デザインの出願日前に公知であったとは認められないという理由により、デザイン保護法第33条第2項による創作容易性判断の根拠となる先行デザインには該当しないと判示した。
事実関係
原告は、2022年10月27日付でゴルフボールに関する以下のデザインを出願した。
(※その他の図面は省略)
特許庁及び特許審判院は、「キックボール」に関する公知の先行デザイン1-1から容易に創作できるという理由によりアマゾンのサイト上の当該URLを特定して(以下「第1URL」という)、拒絶決定及び拒絶決定不服審判の棄却審決をした。これに対し原告が不服を申し立て、特許法院に審決取消訴訟を提起した。
判決内容
特許審判院は、下記の先行デザイン1-1は2014年3月14日にインターネットeコマースサイトであるアマゾンに掲載されたもので、本件出願デザインの出願日前に公知となったデザインに該当すると判断し、その根拠は掲示物上に「Date First Available 14 March 2014」という記載(以下「争点記載①」)が表示されていたためであると判断した。

一方、特許庁の審査官が発行した2023年11月27日付の意見提出通知書に記載された先行デザイン1-1の出所である第1URLに関し、審決取消訴訟の段階では当該URLでは先行デザイン1-1が検索されなかったため、被告は第1URLに代えて、アマゾンのサイト上の第2URLで検索される先行デザイン1-2が先行デザイン1-1と同一のものであると主張して、これを証拠として提出し最初の公知日が「2013年5月26日」と確認されると主張した。その理由は、下記の通り「Date First Available 26 May 2013」とサイトに記載(以下「争点記載②」、争点記載①と合わせて「争点記載」)されていたためである。

しかし、特許法院は、争点記載だけでは被告主張の先行デザインが2014年3月14日又は2013年5月26日に公知となったとは認められないと判断し、その理由を具体的に次の通り判示した。
① 上記「Date First Available」(以下「最初の購入可能日」)という記載に基づいて被告主張の先行デザインがその日付に公知となったと認められるためには、①最初の購入可能日にオンライン上で同一の販売対象物品の写真が掲示され、その後変更がないという点と、②最初の購入可能日に変更がないという点が保証されなければならない。
② 被告は、本件訴訟手続において先行デザイン1-1と異なる写真である先行デザイン1-2を提出したが、両者は、販売対象物品の写真及び最初の購入可能日が同一ではない。さらに、第1URLの実際の検索結果は、検索を実施する特定の時点ごとに違いがあるとみられるところ、このことに照らしてみるとアマゾンのサイトで特定のURLに関して管理権限がある者は、販売対象物品が紹介されたURL上の写真や最初の購入可能日を変更できると判断される。したがって、最初の購入可能日として特定された日付にもそれと異なる時点の検索結果と同一のデザインがオンライン上で検索されるという前提として、実際の検索時点で認識できるデザインが最初の購入可能日にも同一に検索され、不特定多数人がその内容を認識できる状態に置かれていたと断定することはできない。
③ たとえ原告が本件訴訟手続以前に争点記載に基づいた先行デザインの公知時点に関して特別な異議を提起しなかったとしても、本件訴訟手続において最初の購入可能日以降の写真等の変更可能性を提起して先行デザインの適格性を争っている以上、そうした事情だけをもって争点記載に基づいて先行デザイン1-1,2が本件出願商標の出願日以前に公知となったと認めることはできない。
専門家からのアドバイス
特許や商標等の他の知財分野と同様に、出願デザインの新規性、進歩性の判断のために提示される先行デザインは、まずその適格性が認定されなければならない。本件は、インターネット上の関連資料が先行デザインとして適格ではないと判断された事例であって、特許法院は、当該先行デザインの掲示内容と掲示時点が保証されていなければならない等として、上述のように具体的判断をするに至った理由は参考に値する。
なお、インターネット上の掲示物が公衆に公知となったかに関連する過去の判例としては、当該サイトの性格等を考慮して当該コンテンツが不特定多数人にアクセス可能な状態になったとは断定できないとした事例(特許法院2022ホ1414判決)、過去のウェブページの内容を確認できるウェイバックマシーン(wayback machine)での掲載有無等を参考にした事例(特許法院2016ホ9363判決)、掲示文のコメント内容等を参考にした事例(特許法院2020ホ3478判決、特許法院2018ホ7880判決)等がある。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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