知財判例データベース ゲームの特徴的な規則等が著作権として保護されるか、及び不正競争防止法の相当な投資及び労力で作られた成果‎物に該当するか

基本情報

区分
特許
判断主体
ソウル中央地方法院
当事者
A社 vs. B社
事件番号
2014ガ合567553号
言い渡し日
2015年10月30日
事件の経過
2019年6月27日破棄差戻し、ソウル高等法院係留中(2019ナ2029356)

概要

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ゲームの展開方式、規則等がゲーム著作物の内在的表現と認められて著作権の保護対象になるためには、アイデアの次元を超えて作成者の個性ある表現に至ったと見ることができる程度でなければならない。しかし、原告のゲームで初めて導入された規則が被告のゲームにそのまま適用されたのであれば、規則の類似性ではなく表現形式の類似性のみを問題とする著作権侵害如何とは局面が異なるものであって、不正競争防止法第2条第1号ヌ目の不正競争行為に該当し得る。

事実関係

原告A社はコンピュータビデオゲーム業を営むマルタ共和国所在の法人であって、2013年4月頃「ファーム・ヒーロー・サガ(Farm Heroes Saga)」というゲームを開発し、フェイスブックのプラットフォームを通じて全世界にリリースした。原告A社のゲームの基本方式は、特定のブロックを3個以上一直線に並べると、ブロックが消滅しその数だけ該当ブロックの点数が上がるもので、各段階ごとに与えられる目標ブロック数に達するようにするいわゆる「マッチ3ゲーム」の基本形式をとるが、上記のようにブロックの消滅時、隣接するブロックの点数がさらに高くなるようにする規則等、ゲームの段階ごとに新たな規則を追加し、目標達成を難しくする特定の障害物を追加すると同時にこのような障害物を無力化させたりその他に特定の成果を上げることができるように助けるアイテムを提供し、これを購買できるように考案されたパズルゲームである。

被告B社は、原告A社のゲームの基本方式と同一の方式を採択しているマッチ3ゲームである「フォレストマニア(Forest Mania)」というゲームを開発し、2014年2月頃から提供している。

判決内容

抽象的なゲームのジャンル、基本的なゲームの背景、ゲームの展開方式、規則、ゲームの段階変化等は、ゲームの概念・方式・解き方・創作ツールであって、アイデアに過ぎないので、そのようなアイデア自体は著作権法による保護を受けることができず、上記のようなアイデアをゲーム化するにおいて必須不可欠であったり、共通的または典型的に伴う表現等は、著作権法による保護対象になり得ない。さらに、ゲームの展開方式、規則等がゲーム著作物の内在的表現と認められて著作権の保護対象になるためには、そのようなゲームの展開方式、規則そのもの、又はそれらの選択と配列そのものが無限の表現形態の中から著作者の個性を示すものであって、表現と見ることができる場合でなければならず、操作及び表現の限界、勝敗を分けなければならず、ユーザーの興味と没入度、ゲーム容量、互換性等を考慮しなければならない等のように、ゲーム自体が有する制約により表現が制限される場合には、特定のゲーム方式や規則がゲームに内在しているとしても、アイデアの次元を超えて作成者の個性ある表現に至ったとは見られない。

原告A社のゲームには、「マッチ3ゲーム」の基本規則に加えて「基本ボーナス規則」及び「追加ボーナス規則」等を含んだ種々の固有規則を初めて導入した事実を認めることができるが、このような規則は、抽象的なゲームの概念やジャンル、ゲームの展開方式等を決定するツールであって、それ自体はアイデアに過ぎない。さらに、本件ゲームは各段階ごとに与えられた目標を達成することを基本進行方式とするカジュアルゲームであって、ゲームの進行過程で小説のようなストーリーを形成するものではないので、規則がゲームの中で具現されるとしても、これは個別ミッションを処理する過程にのみ影響を及ぼすだけで、ゲームのエピソードやストーリー自体の展開に影響を及ぼすと見ることができないので、上記のような規則の組合わせ自体ではゲーム開発者の個性を示す表現であるといえない。これを除き、著作権の保護対象になる本件原告ゲームと本件被告ゲームの具体的表現部分においては、実質的類似性があると見ることは難しい。

一方、不正競争防止法第2条第1号ヌ目は、「その他他人の相当な投資又は労力により作成された成果等を公正な商取引慣行又は競争秩序に反する方法により自身の営業のために無断で使用することにより、他人の経済的利益を侵害する行為」を不正競争行為として規制している。本件原告ゲームは既存の「マッチ3ゲーム」では存在しなかった多くの規則を追加して変形し、これを適用するために多くの人材と費用、原告が保有していた技術及びノウハウ等、有形無形の資産を投じたので、本件原告ゲームは原告の相当な投資及び労力で作られた成果に該当する。

また、(1)本件原告ゲームは、既存の「マッチ3ゲーム」に加えて「基本ボーナス規則」及び「追加ボーナス規則」等を含んだ多くの規則を初めて導入したが、本件被告ゲームにも上記規則が同一に適用されている点、(2)本件原告ゲームは2013年4月頃に開発され、フェイスブックをプラットフォームとしてリリースされたが、本件被告ゲームはそれからわずか10カ月程度後に、本件原告ゲームが韓国内市場に本格的に進出する以前の2014年2月頃にリリースされた点、(3)上記のようなリリース時点や本件原告ゲームとの規則及び進行方式の同一性等に照らしてみたとき、本件被告ゲームは本件原告ゲームに基づいて開発されたと見るのが相当である点、(4)原告と被告はいずれもモバイルゲーム製作・供給企業として競合関係にあるだけでなく、本件原告ゲームと本件被告ゲームも基本的に「マッチ3ゲーム」形式をとりながら追加で同一の各種規則を適用した同種のゲームである点、(5)たとえ原告の著作権を侵害する程度に至ったとは見られなくても、先に詳察した各ゲームの具体的な実行形態等を詳察すると、本件原告ゲームと本件被告ゲームは、その表現方式、使用される効果、グラフィック等も相当類似する点、⑥これにより利用者も本件原告ゲームと本件被告ゲームがほぼ同一であると指摘している点等を総合してみれば、本件被告ゲームをリリースし、これを一般人に提供する被告の行為は、不正競争防止法第2条第1号ヌ目所定の不正競争行為に該当する。

これにより被告は、本件被告ゲームを直・間接的に一般ユーザーに使用させたり、これを宣伝、広告、複製、配布、伝送、翻案してはならない義務がある。さらに、弁論の全趣旨を総合すれば、本件被告ゲームに限った被告の営業利益は11億6811万4291ウォンである事実を認めることができ、不正競争防止法第14条の2第2項によってこれを原告の損害額として推定することができ、被告はこれを原告に支払う義務がある。

専門家からのアドバイス

上記事件では、被告ゲームが原告ゲームの特徴的なゲーム規則をそのまま真似た点で、著作権侵害の成立要件のうち依拠関係は特に問題にならず、ただし、実質的類似性の判断段階で著作権による保護を受けないアイデア部分を除いて残る表現的形式においては実質的類似性が認められなかったり、仮に一部類似性があっても通常の表現に過ぎず、全体的な表現方式には差があるという理由で、著作権侵害を認めなかった。

しかし、原告が本件ゲームに導入した規則等は相当な投資や労力で作られた成果であり、たとえ被告が原告の著作権を侵害する程度には至らなかったとしても、被告がこれを公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法で無断使用することによって、両ゲームがほぼ類似する点を考慮し、被告の行為を不正競争防止法上の、いわゆる「一般条項」(第2条第1号ヌ目)に該当するとした。このようにゲーム著作物の不当な模倣行為に対して著作権侵害までは成立しないと判断したものの、不正競争防止法の一般条項の適用による不正競争行為として判断したことは、上記「一般条項」の導入からそれほど経っていない現時点で非常に画期的なことであり[1]、今後これと類似の争訟が発生する可能性があると思われる。本件は地方法院の一審判決であり、この法理や判示が上級審での判断でどのように判断されていくのか注目されるところである。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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