知財判例データベース 利用許諾に同意する前にソフトウェアをコンピュータに一時的保存する行為は複製権の侵害に該当しない

基本情報

区分
著作権
判断主体
ソウル高等法院
当事者
○○○外79人(原告、被控訴人兼控訴人) vs. 株式会社○○○○○○○ (被告、控訴人兼被控訴人)
事件番号
2014ナ19631(本訴)、2014ナ19648(併合)、2014ナ19655(併合)、2014ナ19662(反訴)
言い渡し日
2014年11月20日
事件の経過
原審判決取消

概要

440

ソフトウェア有料バージョンを業務用として使用するためにプログラムを実行すると、ソフトウェアの一部が一時的にRAMに保存されるが、このような一時的保存は著作権法第35条の2において「コンピュータで著作物を利用する場合には、円滑で効率的な情報処理のために必要であると認められる範囲内においてその著作物をそのコンピュータに一時的に複製することができる」と定めたところに従って、許容されると見なければならない。

事実関係

問題になったソフトウェアは、被告である著作権者が本来は無料で配布してきたコンピュータ画面キャプチャ用ソフトウェアである。被告は上記ソフトウェアの新バージョンを市場に投入し、非商業用/個人用の使用ではない場合には使用料を支払わなければならないと方針を変更した。新バージョンの配布後、これまで無料で配布されていたバージョンを設置して使用していた使用者らが上記無料プログラムを実行すると、「新バージョンへのアップデートを始めます。確認」と表示されたウィンドウが現れ、確認ボタンを押すこととは関係なくソフトウェア有料バージョンが自動的に使用者コンピュータのハードディスクのTempフォルダにダウンロードされ、その後、確認ボタンを押すとアップデートが始まってハードディスクにプログラムが設置され、アップデートが完了した後、変更済の使用許諾契約書を含むライセンス約款に同意するかを尋ねるウィンドウが現れて、使用者が最終的に確認ボタンを押すと設置が完了し、ソフトウェア有料バージョンをコンピュータで利用できる状態となるものである。

被告(著作権者)は、本件プログラムの有料切替以降も従業員らがこれを購入せずに業務用として継続して使用していた企業を対象に、著作権侵害を告知して損害賠償を要求したところ、これに対し、原告企業は本件訴訟を通じて従業員らの著作権侵害に関する債務の不存在確認を求めた。同訴訟で被告は著作権侵害に対する損害賠償を請求する反訴を提起した。

第1審法院であるソウル中央地方法院は、原告企業が、従業員らが業務用として使用するプログラムに対する管理をきちんとしない場合、従業員らの著作権侵害に対して使用者責任を負担し得るという趣旨の判示を下した(2014年2月21日言渡2013ガ合25649判決)。第1審法院は、本件プログラムのアップデートバージョンがコンピュータのハードディスクに設置する時になされる複製の場合は、有料化される前のこれまでの使用権契約条件下で著作権者の許諾下になされたものであるので複製権侵害であるといえないが、上記のように設置された本件プログラムを実行する時に、プログラムの全部又は一部が有形物であるRAMに一時的にでも電気的な形で固定されることは一時的な複製がなされたものと認められ、これは本件プログラムの新たな使用権契約に使用者が同意した後になされるものなので、著作権法が禁止する複製権の侵害であると判断したのである。これにより、原告企業は従業員らの使用者として従業員らの著作権侵害による損害を賠償する責任があるとした。

判決内容

本来は無料で配布されたが、業務目的で利用時に有料としてライセンス条件が変更されたソフトウェアの有料アップデートバージョンを原告会社の従業員がコンピュータのハードディスクに設置する過程が完了することによって、有形物に固定する複製も完了するので、既に複製が完了した後に有料に切り替えられたライセンス条件に同意したとしても、これによって既になされた複製行為の複製権侵害如何が決定されると見ることはできない。この点に関する限り、本判決は1審法院の判断とその軌を一にする。

しかし、著作権法第35条の2は「コンピュータで著作物を利用する場合には、円滑で効率的な情報処理が必要であると認められる範囲内においてその著作物をそのコンピュータに一時的に複製することができる。ただし、その著作物の利用が著作権を侵害する場合には、この限りでない」と規定しているところ、個別使用者が被告との使用許諾契約に違反してソフトウェア有料バージョンをコンピュータで実行して使用したとしても、個別使用者らが被告に対して使用許諾契約違反による債務不履行責任を負うことはともかくとして、そのようなコンピュータプログラムを実行する過程でなされるコンピュータ内のRAMへの一時的複製は、著作権法第35条の2の本文によって免責されると見なければならない。

このようにソフトウェアを一時的にRAMに保存することは、中央処理装置(CPU)は処理速度が速く、ハードディスクなどの補助記憶装置からデータを読み出す速度は遅いので、両装置間の速度差を調整して処理速度を高める必要があり、この過程でなされる一時的複製は円滑で効率的な情報処理のために必要な範囲内の複製に該当するからである。

一方、著作権法第35条の2ただし書で定められたその著作物の利用が著作権を侵害する場合というは、一時的複製の主体が行う著作物の主な利用が著作権者の許諾を受けなければならない利用行為に該当するにもかかわらず、著作権者から利用許諾を受けなかったり著作権法によって許容された行為(著作権法が定めている私的複製など各種制限規定に該当する行為)に含まれない利用行為として、著作権法上の複製権などの著作財産権の持分権を侵害する場合などに該当するものをいう。この場合には第35条の2ただし書によって、それに付随してなされる一時的複製も許容されない。しかし、本件では新バージョンソフトウェアをハードディスクに設置する行為が著作権法上の複製権などの著作財産権の持分権を侵害する場合に該当しないので、それに付随してなされる前記ソフトウェアのRAMへの一時的保存についても著作権法第35条の2ただし書が適用されず、同条本文によって依然として免責されると見なければならない。

専門家からのアドバイス

本判決は韓米FTAの締結によって改正され、2013年10月17日に施行された著作権法上の一時的複製に関する最初の判決であるという点で意味があるが、控訴審判決であり、被告が上告をしたため、今後の推移を見極める必要がある。殊に、一時的複製に関する判断部分は、法理的な面でも、結果的に法律によって許容されるプログラムの一時的複製を全幅的に拡大するものと解釈され得るという点においても、相当な論争の可能性がある問題であると見られる。

ただし、現在の段階にあっても、暫定的な上記判例の結論とは関係なく、今後このような紛争がさらに増えると予想される中で、企業の立場としては社員や従業員が個人的に設置して意識的であろうと無意識的であろうと業務に使用するプログラムについては、社内で独自に著作権管理を徹底的に行い自衛することが必須であろう。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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