知財判例データベース 登録商標に結合された文字部分は識別力のない付記的な部分に過ぎないとして同一な商標使用と認めた事例
基本情報
- 区分
- 商標
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- ○○○(原告、上告人)v. 株式会社暁星コーポレーション(被告、被上告人)
- 事件番号
- 2010フ1435
- 言い渡し日
- 2010年10月28日
- 事件の経過
- 破棄差し戻し
概要
297
本件実使用商標は一般需要者や取引者に本件登録商標と区別される別個の独立した標章と認識されると見ることができないため、実使用商標の使用は取引社会の通念上、登録商標と同一と見ることができる形態の商標の使用に該当するにもかかわらず、これと異なった原審の判断には商標の同一性に関する法理誤解の違法がある。
事実関係
被告は本件登録商標の商標権者を相手取って、正当な理由なしに本件登録商標を指定商品に対し3年以上国内で使用していないため商標法第73条第1項第3号に該当すると主張し登録取消審判を請求したところ、特許審判院は、商標権者と通常使用権者が実際に使用した商標は本件登録商標と同一性がないという理由で被告の審判請求を認容した。商標権者の補助参加人としてこの取消審判に参加していた原告は、特許法院に審決取消訴訟を提起したが、特許法院でも原告の請求は棄却されたため原告は大法院に上告した。
原告は、現在の商標権者より前の商標権者に対し債権を有しており、本件登録商標が取消しになることは自分の債権回収に重大な影響があるため補助参加人として参加していたのであるが、現在の商標権者への本件商標の移転登録が詐害行為[1]に該当すると主張した別件の詐害行為取消訴訟の勝訴確定判決を執行し、現在の商標権者の商標登録は全て抹消された。
判決内容
大法院は、商標登録取消審判の補助参加人である原告が本件登録商標の商標権者を相手取って提起した別件詐害行為取消訴訟で勝訴確定判決を受け、本件登録商標に対する商標登録取消訴訟が大法院に係属しているときに、上記判決を執行し商標権者の商標登録が抹消されたとしても、債権者取消権の行使による詐害行為の取消と逸脱財産の原状回復は債権者(原告)と受益者又は転得者(商標権者)に対する関係においてのみその効力が発生するだけであって、その効力は商標登録取消審判請求人である被告には及ばないため、被告に対する関係においては依然として商標権者が商標登録取消審判の被請求人の適格を有すると判断した。
次に、本件実使用商標に対する使用が本件登録商標と同一の商標を使用したものと見られるかどうかと関連し、大法院は本件登録商標に付された「소문난(「噂の」という意の韓国語)」という文字部分は本件登録商標部分より字が小さく、その上段に位置したり一定の間隔をおいてその左側に傾くように結合されており、本件実使用商標のうちいくつかは本件登録商標部分と色合いに差がある等、その使用態様自体が一般需要者や取引者に付記的な部分として認識されるものと見られ、さらに「소문난」は「人々の話題にのぼって広く知られていること」を意味するものであって、本件登録商標の認知度や名声などを強調する付記的な表現に過ぎないと言えるため、本件登録商標と結合し本件登録商標とは異なる新しい観念が形成されると見ることもできないところ、本件実使用商標が一般需要者や取引者に本件登録商標と区別される別個の独立した標章として認識されると見ることができず、本件実使用商標の使用は取引き社会の通念上、本件登録商標と同一に見られる形態の商標の使用に該当すると言えると判示した。これにより、本件実使用商標は本件登録商標に「소문난」部分を結合することにより本件登録商標とは異なる新しい観念を形成したという理由で同一性を否定した原審を破棄し、特許法院に差し戻した。
専門家からのアドバイス
商標法第73条第1項第3号は、3年以上継続して「登録商標」を使用しなかった場合はこれを取消すというものであるが、ここで「登録商標」とは言うまでもなく登録を受けた当時登録公報に掲載された商標のことであって、類似な程度の商標はここに含まれないが、ただし、多少違いがあっても取引社会における通念上、登録商標と同一に見られる程度であれば同一であると判断されるのである。この同一性の判断は、「審査に合格した商標と同じものを使用しなければ取消す」という懲罰的な意味合いもあって、これまで厳格に適用されてきた(日本での実務慣行よりさらに厳格であると言われている)。
商標の同一・類似如何の判断は、要部がある場合にはその要部を基準に外観、呼称、観念の側面から行われなければならないため、本件での争点は結局本件登録商標に付け加えられた「소문난」を要部「삼부자」に含めて全体観察するか、非要部として除外し要部だけを分離して観察するかにあるが、「소문난」は文字どおり「噂の~」「噂される~」「噂のたつ~」であって「삼부자(三父子)」という父と息子2人をまとめて指称する普通名詞を修飾するだけの、認知度や名声などを強調する付記的表現であると言えなくはないものの、これまでの実務慣行から見るとかなり甘く判断されたという印象がある。この点では、不使用取消審判を請求される側の商標権者にとっては朗報であって、この程度までの変形使用も同一商標の使用と認められた判決例として記憶すべき価値があろう。
ただし、仮に「소문난」と本件登録商標が結合した「噂の三父子」全体としての標章が取引界で広く使われ、ある程度までに知られているという事情がある場合には、結論は異なってくるだろう。大法院の説示では本件でそのような具体的事情について触れられていないが、取消審判を請求した被告としては、差し戻された特許法院の手続の中でそのような事情の立証に集中する必要がある。
注記
-
債務者が、債権者を害することを知りながらする悪意の財産減少行為。債務弁済に充当するための財産を故意に低価売却したり譲渡・贈与すること。債権者はこれを詐害行為取消訴訟を起こして取り消すことができる。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、徐(ソ)、權(クォン)(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195





閉じる