知財判例データベース 未完成発明及び特許請求の範囲の記載不備に対する判断基準に関して判示した事例
基本情報
- 区分
- 特許
- 判断主体
- 特許法院
- 当事者
- シンフン産業株式会社他1(原告)v.○○○(被告)
- 事件番号
- 2010ホ3622
- 言い渡し日
- 2010年10月29日
- 事件の経過
- 確定
概要
295
該当の技術分野における通常の知識を持った者が特許請求の範囲の記載だけでなく明細書などを全体的に考慮し、発明が属する分野で当業者が反復実施して目的とする技術的効果を得ることができる程度に具体的、客観的に構成されていれば、たとえ特許請求の範囲に記載された内容と発明の詳細な説明及び図面に記載された内容が一部異なるとしても、一応特許を受けることができる完成された発明に該当するものと見ることはできるが、異なる記載内容がある場合には特許請求の範囲の記載が不明瞭になる結果をもたらすため、特許法第42条第4項第2号[1]に違反し特許請求の範囲の記載不備に該当する。
事実関係
被告は「断面が長方形であるコイルスプリングの製造方法」に関する本件特許発明の特許権者であり、原告は本件特許発明は未完成発明であり、また先行技術に比べて進歩性がないという理由で登録無効審判を請求したが、特許審判院は無効事由がないという理由で原告の請求を受け入れず、原告はこれを不服として特許審判院の審決に対する取消訴訟を提起した。
判決内容
特許法院は、第一に、本件特許発明が未完成発明であるかどうかと関連し、「完成された発明とは、その発明が属する分野で通常の知識を持った者が反復実施して目的とする技術的効果を得ることができる程度にまで具体的、客観的に構成されている発明であって、その判断は特許出願の明細書に記載された発明の目的、構成及び作用効果などを全体的に考慮し出願当時の技術水準に立脚し判断しなければならない」という法理に基づき、本件特許発明の特許請求の範囲の記載から把握される本件特許発明の第2成形工程の結果として形成される素材の断面形状は「全体的に長方形の形状を持ってはいるが、その中の一辺が直線でない曲線形状を持ったもの」であるのに比べて、本件特許発明の明細書の全体的な記載と図面を総合し把握される断面の形状は「片方面にラウンディング面を持つ台形状の断面」として互いに一致しないことは事実であるが、特許出願の明細書に記載された発明の目的、構成及び作用効果などを全体的に考慮し判断する場合、特許請求の範囲の記載にもかかわらず、通常の技術者が本件特許発明の第2成形工程の結果として形成される素材の断面形状を「片方面にラウンディング面を持つ台形状の断面」と認識することが可能であるため、本件特許発明が未完成の発明に該当すると見ることはできないと判断した。
第二に、本件特許発明の請求範囲が記載不備に該当するかどうかと関連し、「請求項には明確な記載だけが許容されるものとして発明の構成を不明瞭に表現する用語は原則的に許容されず、さらに特許請求の範囲の解釈は明細書を参照してなされることに照らし、特許請求の範囲には発明の詳細な説明で定義している用語の定義と異なる意味で用語を使用するなど、結果的に請求範囲を不明瞭にさせることも許容されない」という法理に基づき、本件特許発明の特許請求の範囲の記載から把握される本件特許発明の第2成形工程の結果として形成される素材の断面形状は「全体的に長方形の形状を持ってはいるが、そのうち一辺が直線でない曲線形状を持ったもの」であるのに比べて、本件特許発明の明細書の全体的な記載と図面の図示を総合し把握される断面の形状は「片方面にラウンディング面を持つ台形状の断面」で、互いに一致しておらず、「台形状」まで「長方形」に含まれると見ることはできず、本件特許発明におけるコイル形状に成形する直前の素材の断面形状に対する限定は、従来の技術の問題点を解決し本件特許発明を従来の技術と差別化させる最も重要な事項であるという点などを考慮すれば、本件特許発明の特許請求の範囲は発明の構成を不明瞭に表現する用語を使用した場合に該当し、このような記載は発明の詳細な説明及び図面とも符合しないため、特許請求の範囲の記載不備に該当すると判断した。
最後に、予備的判断として本件特許発明は比較対象発明に比べて進歩性がないと判断し、結局本件特許発明は無効とされなければならないとして原告の請求を認容した。
専門家からのアドバイス
特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明及び図面の記載が互いに異なる場合には発明の実施が不可能であるため、未完成発明として特許を受けることができないか、特許法第42条第4項第2号に違反し特許請求の範囲の記載不備として特許を受けることができないという2つの主張が可能である。過去の特許法院判例(特許法院2009年7月16日言渡2008ホ8303判決)で「特許発明の内容が当業者によって容易に理解され再現できるのであれば、部分的に不明な部分があるとしてもこれを実施不可能であるとか特許法第42条第4項第2号の記載不備であるとは言えない」と2つの問題が同時に解消されると判示したものも存在するが、本判決は未完成発明ではないが特許請求の範囲の記載不備に該当するとして、記載不備についてより厳格な基準を適用しているように見える。
しかし、未完成発明であるかどうかと、記載不備であるかどうかは、本来全く異なる観点で判断されるべき事項であって、完成された発明にも記載不備は存在し得るし、記載不備のない未完成発明も存在し得るわけであるから、両者の記載の不一致を同列に述べる必然性はない。本件では記載不備に該当する構成が従来の技術と差別化される最も重要な部分であったため無効に結びついただけであって、本判決をもって法院が発明の完成如何より記載不備如何をより厳格な基準を適用していると短絡に一般化してはならない。
注記
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第42条(特許出願)(4)第2項第4号の規定による特許請求の範囲には、保護を受けようとする事項を記載した項(以下「請求項」という。)が1又は2以上なければならず、その請求項は次の各号に該当しなければならない。
2. 発明が明確かつ簡潔に記載されること
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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