知財判例データベース 事実の伝達に過ぎない時事報道の程度を越えた部分だけを区別して著作権法上複製権侵害行為の罪責を認めなければならないとした事例
基本情報
- 区分
- 著作権
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 被告人(上告人)
- 事件番号
- 2004ド5350
- 言い渡し日
- 2006年09月14日
- 事件の経過
- 原審判決の破棄差し戻し
概要
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著作権法の保護対象になるのは外部に向けて表現された創作的な表現形式だけであり、その表現の内容になった思想や事実そのものではないと言えるため、ニュ―ス記事及び写真を複製した場合、独創的且つ個性のある表現水準に至らない、単純に事実の伝達に過ぎない時事報道に該当する部分に対しては著作権法第7条第5号に基づいて複製権侵害が成立しない。
事実関係
日刊新聞の編集局長であった被告人が新聞を製作し連合ニュース社の記事及び写真を複製して掲載した行為の著作権違反如何が問題になった事件で、原審は被告人の行為が著作財産権者である連合ニュース社の複製権を侵害する行為として著作権法違反罪を構成すると判示した。これに対して被告人は、上記の判決の量刑不当を理由に大法院に上告し、一方大法院は被告の上告理由を判断するのに先立ち、事実の伝達に過ぎない時事報道の場合、著作権法による保護対象に該当するかどうかを職権で判断した。
判決内容
著作権法第7条は「次の各号の1に該当するものは本法による保護を受けることができない」と規定し、一定の創作物を著作権法による保護対象から除外すると共に同条第5号に「事実の伝達に過ぎない時事報道」を列挙しているところ、これは、本来著作権法の保護対象になるのは外部に向けて表現された創作的な表現形式のみでその表現の内容になった思想や事実そのものではなく、時事報道は色々な情報を正確且つ速かに伝えるために簡潔で定型的な表現を使用するのが普通であるため、創作的な要素が介入する余地が少ないという点などを考慮し、独創的且つ個性のある表現水準までは至らずに単純に「事実の伝達に過ぎない時事報道」の程度に留まっていることを著作権法による保護対象から除外したものであると言える。
本事案で、被告人が複製した連合ニュース社の記事及び写真の中には単純な事実の伝達に過ぎない時事報道の水準を越えたものも一部含まれているが、相当数の記事及び写真は色々な事実や情報をマスコミの定型的で簡潔な文体と表現形式を通してありのまま伝える程度で留まっていると判断される。従ってたとえ被告人がこのような記事及び写真をそのまま複製し新聞に掲載したとしても、これを著作財産権者の複製権を侵害する行為として著作権法の違反罪を構成するとは見なせない。
とすれば、原審としては控訴事実記載の各連合ニュース社の記事及び写真の内容を個別的に見て、そのうち、単純な「事実の伝達に過ぎない時事報道」の程度を越えたものだけを区別し、それに対する複製行為に対してのみ複製権侵害行為の罪責を認めなければならなかったにもかかわらず、被告人の本件複製行為に対して全て複製権侵害行為の罪責を認めたことは、著作権法の保護対象になる著作物の範囲に対する法理誤解や審理不尽の違法を犯したものである。
従って、量刑不当を主張する被告人の上告理由をさらに判断する必要もなく、原審判決を破棄し事案を原審法院に差し戻すのが妥当である。
専門家からのアドバイス
最近、インターネットの発達で会社のウェブサイトに自分の会社や製品を広報するのに適したインターネット新聞記事をそのまま複製し掲載する場合がたびたび目につく。上記の大法院判決は、原審が独創的且つ個性のある表現で著作権が認められる記事とそうでない記事を区別せず、一律に著作権法違反として擬律した点を問題にしつつ、前者を複製した場合だけを処罰すべきであると判示したものだが、一般使用者の立場では事実の伝達に過ぎない時事報道と独創性と個性が認められる時事報道を区別するのが容易ではないため、インターネット上の記事や資料を原作成者の許可なしに無断複製し使用することは基本的に慎むのが望ましい。
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