知財判例データベース 有名米菓子名称の一部を含む名称で菓子類を製造・販売しても商標権侵害や不正競争防止法に該当しないとした事例

基本情報

区分
商標
判断主体
ソウル高等法院第4民事部
当事者
株式会社ギリン(原告、控訴人)v. ヨンヤン製菓株式会社(被告、被控訴人)
事件番号
2005ナ9465
言い渡し日
2005年08月31日
事件の経過
大法院に上告された

概要

103

商標の構成部分のうち、識別力がなかったり微弱な部分はその部分のみで要部となって呼称・観念されたり、他の商標との類否判断においてその部分のみを対比対象にすることはできず、商標相互間に類似の部分があるとしても要部をなす部分が相違して全体的に観察するとき互いに誤認・混同を起こすおそれがないものは類似商標ではなく、顕著に認識されて識別力を獲得した場合でなければ、不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下「不正競争防止法」とする)の違反にも該当しない。

事実関係

原告は飲食料品製造業及び販売業などを営む会社として1987年頃から「쌀로별(‘米でビョル’のハングル)」、「쌀로랑(‘米でラン’のハングル)」などの商標で米菓子類を製造、販売してきており、「쌀로(‘米で’のハングル)」、「쌀로랑(‘米でラン’のハングル)」、「쌀로왕(‘米でワン(wang)’のハングル)」、「쌀로별(‘米でビョル’のハングル)」、「쌀로유(‘米でユ’のハングル)」、「쌀로완(‘米でワン(wan)’のハングル)」、「쌀로원(‘米でウォン’のハングル)」、「쌀로풍(‘米でプン’のハングル)」の登録商標を有している。一方、被告は米を主原料にして製造したスナック菓子を「쌀로뻥(‘米でポン’のハングル)」という商標を付して高速道路の休憩所などに納品した。これに対して原告は既に商標登録をした上記の各商標は「쌀로(‘米で’のハングル)」という部分を共通に含む原告の米菓子製品の商品標識として国内に広く知られており、需要者間にその商標が何人の業務に関連した商品を表示するのかが広く顕著に認識されていて「쌀로(‘米で’のハングル)」という部分は識別力を持つようになったため、上記の各商標と類似の「쌀로뻥(‘米でポン’のハングル)」という商標を使用して米菓子を製造・販売することは商標権侵害だけではなく不正競争行為にも該当するとしてその差止を請求した。

判決内容

原告商標のうち、「쌀로(‘米で’のハングル)」という部分は該当製品の原料が米であることを示す一般的な表現として理解することができ、残りの文字と結合することにより特に新たな観念を形成するなど一体不可分的に結合された場合であるとも見難いため、特別な事情がない限り「쌀로(‘米で’のハングル)」という部分は識別力がないか、微弱な部分であって、その部分のみで要部となって呼称・観念されたり、他の商標との類否の判断においてその部分のみを対比対象とすることはできない。また、原告以外にも訴外株式会社ピングレが1991年2月12日に米で作ったラーメンと素麺を指定商品として「쌀로면(‘米で麺’のハングル)」という商標を登録したところがあり、最近もソウル製菓という菓子製造企業で製造した「쌀로만(‘米でのみ’のハングル)」という商標を付した米菓子が市中に流通されており、その他にも「쌀강정(‘米カンジョン(韓国固有菓子)’のハングル)」、「쌀대롱(‘米筒’のハングル)」、「참쌀설병(‘真米ソルビョン’のハングル)」、「참쌀선과(‘真米善菓’のハングル)」、「햇쌀(新米のハングル)」、「햇쌀진미(新米珍味のハングル)」、「쌀과자튀김(米揚げ菓子のハングル)」など「쌀(米のハングル)」という文字を含む米菓子製品と、「쌀라면(米ラーメンのハングル)」、「쌀생면(米生麺のハングル)」、「쌀설렁탕면(米ソルロンタン麺のハングル)」、「쌀떡국(米雑煮のハングル)」、「쌀떡볶이(米餅炒めのハングル)」などの商標を付した、米を原料とする製品が多数存在する事実に照らしてみれば、原告商標のうち「쌀로(米でのハングル)」という部分が需要者間に原告の業務と関連した商品を表示するものとして顕著に認識され識別力を取得したと認めるのに充分ではない。従って、両商標のうち、「쌀로(米でのハングル)」という部分を除外した残りの部分を対比しなければならないところ、被告の「쌀로뻥(‘米でポン’のハングル)」商標は原告が商標登録した各商標と類似であるとか、被告が上記の商標を使用して製品を販売したことが原告の商品と混同させる行為に該当すると見ることはできない。

専門家からのアドバイス

企業の立場では商標を通して品質の優秀性や加工方法、効能、用途などを暗示することにより消費者が当該商品を容易に連想できるように努力することが一般的であり、場合によっては単純に暗示する程度を越えて商品の品質、効能、用途などを直接表示する程度に達する商標を出願する場合が多い。しかし、このような場合には上記の判決のように商品の原材料などを普通に使用する方法で表示した標章であるという理由で十分な権利保護を受けることができなくなる可能性が多いため、注意する必要がある。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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