知財判例データベース 商標的使用の意味と判断基準及び商標権消尽論
基本情報
- 区分
- 商標,不正競争
- 判断主体
- 大法院
- 当事者
- 検事 VS 盧某氏(被告人、上告人)
- 事件番号
- 2002ト3445商標法違反・不正競争防
- 言い渡し日
- 2003年04月11日
- 事件の経過
- 確定
概要
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被害者富士フィルム株式会社が生産した同社の登録商標である富士フィルム「FUJIFILM」が刻印された使い捨てカメラの空の容器をリサイクルし、ミラクル(「Miracle」)という商標のカメラを製造、販売した被告人に対し、大法院は被告人の商標権侵害及び不正競争行為を認定した原審の判決を維持した。
事実関係
使い捨てカメラの製造及び販売業に従事する被告人は、自己の工場で、被害者である富士フィルム株式会社が生産した同社の登録商標である「FUJIFILM」が刻印された使い捨てカメラの空の容器を収集した後、同カメラの本体のレンズ周りとフラッシュの部分に「FUJIFILM」商標が刻印されていることを知りつつも、これを除去したり覆ったりせず、又は一部だけ覆った状態で、カメラの本体の部分を「Miracle」という商標が付された包装紙で包んだ上、新しい使い捨てカメラを生産し、これを販売した。
判決内容
大法院は、他人の登録商標をその指定商品と同一又は類似の商品に使用すれば、他人の商標権を侵害する行為になると言うべきであるが、他人の登録商標を利用した場合でも、それが商標の本質的な機能であると言える出所表示のためのものでなく、商標の使用と認識されれない場合には、登録商標の商標権を侵害した行為と見ることができないと言うべきで、それが商標として使用されているか否かを判断するためには、商品との関係、当該標章の使用の態様(すなわち、商品等に表示された位置、大きさ等)、登録商標の周知著名性、そして使用者の意図と使用経緯等を総合して、実際の取引界においてその表示された標章が商品の識別標識として使用されているか否かを総合して判断すべきであるとした上で、上記の事情を総合し、被告人が富士フィルムの登録商標が刻印された使い捨てカメラの空の容器を収集し、再びフィルムを装填して一部包装を新たにして製造、販売した行為が富士フィルムの登録商標を侵害して混同を生じさせたことを認定した原審の判断を認容した。また、特別な事情がない限り、商標権者等が国内で登録商標が表示された商品を譲渡した場合、当該商品に対する商標権はその目的を達成したものとして消尽し、それによって商標権の効力は当該商品を使用、譲渡又は貸与した行為等には及ばないと言うべきであるが、本来の商品との同一性を害する程度の加工や修繕をする場合には、実質的に生産行為をするのと同様であるので、このような場合には、商標権者の権利を侵害すると見るべきで、同一性を害する程度の加工や修繕として生産行為に該当するか否かは当該商品の客観的な性質、利用形態及び商標法の規定趣旨と商標の機能等を総合的に判断すべきであるとした上で、被告人の行為は、単なる加工や修理の範囲を超え、商品の同一性を害する程度に本来の品質や形状に変更を加えた場合であって、実質的に新たな生産行為に該当すると言うべきであるので、本件商標権者は依然として商標権を行使できると見るべきであるとした。
専門家からのアドバイス
大法院は、並行輸入品を含め商標権により保護される真正品であっても、同製品が譲渡された後は商標権者の権利が消滅し、当該製品を譲渡した者が原製品との同一性を害する程度の加工や修繕をしない範囲で当該商品を再販売する等の行為は商標権侵害に該当しないとして商標権の権利消尽の原則を明らかにしながら、ただし、本件の場合には、被告人の行為を権利消尽の原則が適用されない実質的な生産行為と判断し、商標権の侵害を認定したものである。
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