知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国企業、NPEとの訴訟で苦戦
2014年06月11日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.69)
MEGA 国際特許法律事務所 代表パートナー 弁理士 丁永善
近年、韓国企業は、「パテント・トロール」とも呼ばれる「NPE」との特許訴訟に巻き込まれるケースが急増しており、その結果、巨額の損害賠償金やライセンス料の支払いに繋がっている。NPEとの訴訟は、訴訟費用、損害賠償金やライセンス料の支払い等の直接的被害のみならず、製品に対するイメージ低下等の間接的被害をももたらすため、企業にとっては大きな負担となっている。ここでは、韓国企業とNPEとの特許訴訟の現状について紹介する。
NPEとは
NPE(Non-Practicing Entity)とは、1990 年代後半に登場した特許専門企業を意味する用語であり、自らは製品の製造などは行わず、様々な企業から買い取った特許により、もっぱら損害賠償金やライセンス料を得る目的で製造メーカ等に特許権侵害訴訟等を起こす企業のことをいいます。NPEは、休眠特許の活用など一定の評価も得ていますが、いわゆる「パテント・トロール」(Patent Troll)とも呼ばれることが少なくありません。NPEの代表的な例としては、米国のインターデジタル(IDC)、インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)が挙げられます。NPEには、日本企業も苦しめられていましたが、特に韓国企業においては、近年、NPE関連の訴訟が急増しており、企業の存亡にも大きく関わっています。また、最近では、サムスンやLGなどの大企業のみならず、中小企業も訴訟に巻き込まれるケースが増加しています。また、関連技術分野も、スマートフォン、通信、半導体などの電子通信分野以外に、自動車、ソフトウエア、化学・バイオなどの分野にも広がっています。
韓国企業とNPEとの特許訴訟現状
それでは、最近の韓国企業とNPEとの訴訟件数の推移を見てみましょう。
このように、NPEとの訴訟が急増していることが分かります。
今後の戦略
2013 年、米国におけるNPEによる特許侵害訴訟提訴件数は全4,400 件であり、そのうち韓国企業は288 件(4%)、対象企業は全23 社(大企業12 社、中小企業11 社)です。近年、NPEの主要舞台となっている米国では、AIA(米国特許法)が改正されるなど、NPE活動に制限を設ける傾向にあり、今後、NPEは、米国以外にも、韓国、日本、中国、台湾などのアジア圏にも活動領域を広げることが予想されます。特に韓国は、サムスンやLGなどの一部の大手企業を除き、未だに知的財産権に関する認識、訴訟等への対応能力が十分ではありません。法改正等でNPE活動を規制するには限界があるため、企業としては、研究開発段階から自社の特許戦略を確立するとともに、他社の出願動向や先行技術の調査、クォリティーの高い権利の取得、さらには関連分野における紛争情報収集に努める必要があるでしょう。
【参考文献】「2013 年度NPEs動向年次報告書」(2014年2 月)、韓国特許庁・韓国知的財産保護協会
今回の解説者
MEGA 国際特許法律事務所 代表パートナー 弁理士 丁永善
1978 年生まれ。2004 年ソウル大学生命科学部卒業。2004 年弁理士資格取得後、2004 年世一国際特許事務所、2005~2007 年特許法人KOREANA に勤務。2007年日本に渡り、2007~2011 年志賀国際特許事務所に勤務。2011 年MEGA 国際特許法律事務所設立。その他、2007 年より日本企業を対象にした韓国特許セミナーを数多く開催。2010 年日本弁理士試験1次合格
本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
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