知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)アイディア奪取行為などの防止のための不正競争防止法の改正

2018年07月11日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.118)
第一特許法人 曺 豪均(チョ・ホギュン) 韓国弁理士

「不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下、「不正競争防止法」)」の改正法が2018年7月18日からの施行を目前に控えています。以下では、改正の背景および内容を紹介した後、簡単にコメントしたいと思います。

1.現況の不正競争防止法の限界と改正の背景

現況の不正競争防止法は、不正競争行為を10つの行為類型(法第2条第1号イ目~ヌ目)で列挙しており、代表的な類型としては、(ⅰ)商品主体及び営業主体に対する混同惹起行為(イ目及びロ目)、(ⅱ)著名商標希釈行為(ハ目)、(ⅲ)商品形態の模倣行為(リ目)、(ⅳ)イ目~リ目の他に、他人の相当な投資や努力により作り上げられた成果等を模倣することにより、他人の経済的利益を侵害する行為(ヌ目)等があります。しかしながら、このような類型にもかかわらず、次のような場合には保護が十分でないとの指摘がしばしばありました。

事例1:零細、小商工人等が一定期間努力を注いだ結果、一般消費者に知られるようになった店舗のインテリア等の全体的な外観が第三者により無断で使用される場合
事例2:中小、ベンチャー企業又は開発者等の経済的価値を有するアイディアを大企業等が取引相談、入札、公募展等を通じて取得し、これに対する何ら補償もなく事業化し、莫大な経済的利益を得る一方で、開発者は深刻な営業上の被害を受ける場合

事例1の場合は、店舗の外観が営業表示に該当するか否かが不明であるため、保護に困難がありました。また、事例2の場合、下請契約の締結後に発生したアイディアの奪取は「下請取引の公正化に関する法律」により保護を受けることができるものの、下請契約の締結前の相談段階では保護を受けることが難しく、また、相談の段階で開発者が大企業に秘密保持契約の締結を求めることも難しいのが現実であり、その上、開発者が被害救済措置を取ろうとしても、大企業としては自身での開発の抗弁をする等のことにより、実質的な被害救済に困難が多くありました。
もちろん、事例1の場合、最近にヌ目の不正競争行為に該当すると判示した例(大法院2016.9.21.宣告2016Da229058)があるものの、ヌ目は補充的な一般条項であるため、法的安定性を考慮して例外的に解釈されるところ、一般的に認められ難いという問題がありました。このようは背景の下で今般の改正が行われました。

2.改正の内容

  1. 国内に広く認識された他人の商品販売・サービスの提供方法、または看板・外観・インテリア等の営業提供場所の全体的な外観と同一又は類似するものを使用して他人の営業上の施設又は活動と混同させる行為を禁止する(第2条第1号ロ目及びハ目の改正)。
  2. 事業提案、入札、公募等の取引交渉及び取引過程において経済的な価値を有する他人の技術的または営業上のアイディアをその提供目的に違反して自身または第三者の営業上の利益のために不正に使用するか、または他人に提供して使用させる行為を不正競争行為の類型として新設し、提供を受けたアイディアが同種業界で広く知られたものであるか、またはアイディアを提供された者がその当時に既に知っていた事実を立証する場合には免責されるようにし、違反行為について特許庁長等に調査、是正勧告の権限を付与する(第2条第1号ヌ目の新設及び第7条、第8条の改正。既存のヌ目はヲ目に変更)。
  3. 不正競争行為に対する損害賠償請求の訴が提起された場合、法院が特許庁に対して調査記録の送付を要求できるようにする(第14条の7新設)。

3.コメント

今般の改正により、中小・ベンチャー企業及び開発者の斬新なアイディアが更に保護されることになります。一方、店舗等の全体的な外観、いわゆる、トレードドレスがロ目の営業主体混同惹起行為およびハ目の著名商標希釈行為の規定の改正によって保護対象として明文化されたものの、依然として周知性が求められるため、周知性を獲得できていないトレードドレスを有する営業主体としては、既存のヌ目(改正後のヲ目)の成果模倣行為の関連規定に依然として留意する必要があると思われます。

今月の解説者

第一特許法人曺豪均(チョ・ホギュン)韓国弁理士、米国弁護士(NY)、ソウル大学校金属工学科卒業(B.S.)、米国WashingtonUniversityinSt.Louis、LawSchool(J.D.)
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長浜岸広明)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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