知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国の特許都市、大田(テジョン)

2018年12月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.123)
特許法人PLUS 代表パートナー 金鍾官(キム・ジョンカン)

「韓国特許庁(KIPO)は首都ソウルにはありません」、海外コンファレンスなどで出会った各国の弁理士や弁護士にこの事実を話すと、多くの方が今回初めて知ったと驚きながら本当なのかと聞き返します。韓国特許庁は政府の施策により、今から20年前の1998年に他の10の政府機関とともにソウル江南から大田に移転し、現在では審査官約900名を含む約1,500名余りが勤務しています。本稿では、大田と知財との関係についてご紹介します。

科学と特許の中心、大田

大田は科学都市であり、特許都市であるとも呼ばれています。その理由は、大田には特許庁、特許審判院、特許法院、国際知識財産研修院、そして韓国特許情報院のような特許先行技術調査機関など特許関連の公共機関がすべて所在しているためです。また、国家研究所すなわち政府出資研究機関などが集まっている大徳研究団地が背後にあり、韓国科学界の研究開発と特許出願の中枢的な源泉役割を果たしているためでもあります。大徳研究団地は1973年に韓国政府によって設立された最初の国家研究団地であり、現在は韓国電子通信研究所、韓国機械研究院および韓国化学研究院などを含む10の政府出資研究機関と多数の大企業の民間研究機関、そして韓国最高の理工系大学院である韓国科学技術院(KAIST)などがあり、その他中小ベンチャー企業及び大学まで含めると約1,600の機関が入居しています。大田は上記のような特性上、韓国において博士学位所持者が最も多い都市でもあって、特許庁の場合には技術職審査官の30%以上が博士学位を有し、民間企業の研究所や政府出資研究機関に勤務した経歴があります。大田はまた、2017年度基準で韓国の全体特許出願件数の約16万件余りのうち、1万700件余りの特許出願件数を記録しており、韓国全体の出願件数に比べると6.7%の占有率であって、韓国の都市の中ではソウルに次いで最も高い割合を占めています。

特許ハブ都市に向けた大田市の支援

大田は特許都市という名にふさわしく、ソウルの次に多くの特許事務所が特許庁の周辺に位置しており、約200名余りの弁理士が活動しています。大田市はこのような特殊な状況に鑑み、大田を特許ハブ都市に育成して知的財産サービス産業を発展させることを目標に、他の自治体と差別化した特許関連業に市の予算を利用して、大韓弁理士会とは別途の組織である社団法人大田弁理士協議会を支援しています。大田弁理士協議会は最近、このような支援を基に日本の東京、名古屋及び大阪、中国の北京、上海及び瀋陽を訪問して韓国の大田が特許都市である点を広報し、特許関連業を中心に互いに協力できる方策と可能性について協議するイベントを主催してきました。

大田と日本との関係

大田は韓国で5番目の大都市であり、地図から見ても分かるように韓国の中心に位置し、首都ソウルからKTX(日本の新幹線に相当)で約1時間の距離にあります。日本との関係をみますと、大田は01年以降、日本の札幌市と姉妹提携を結び、毎年両都市を往来して文化及び観光交流を行っています。また、大田と50キロメートル余り離れた清州空港は、関西空港との間で毎年10月末から翌年の3月末まで毎日1~2便の直行便が運航しています。このように、大田がソウルや釜山とは異なる特徴を持つことについて、読者の皆様が少しでも知って頂く機会となりましたら幸いです。

大田の地図。大田は、人口が約150万人の韓国第五位の都市であり、韓国の真ん中に位置しています

今月の解説者

特許法人PLUS 代表パートナー 金鍾官(キム・ジョンカン)、工学博士(機械)、前特許審査官、審判官、日本知的財産研究所客員研究員
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 浜岸 広明)

どうなる韓国 新・知財最前線は今

本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195