知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)オープンマーケットにおける商標権保護

2020年08月12日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.142)
法務法人NEXUS
徐蓮淑(ソ・ヨンスク)弁護士

オンラインショッピングの大衆化·活性化に伴い、商標権侵害事例も急増しています。オンライン上の商標権保護の必要性が高まっている中、本稿では、ECサイトの中でもオープンマーケットの商標権保護に関する役割と責任及び韓国のオープンマーケットが設けている偽造品防止対策について、ご紹介します。

1.オープンマーケットの特徴と責任

オープンマーケットとは、日本の楽天市場やヤフーショッピングのように、運営者が提供するプラットフォームを利用して販売者と消費者がオンライン上で商品の取引をする「仲介型」オンラインショッピングモールを意味します。韓国では11番街、G-market、オークション、インターパークなどが代表的です。
オープンマーケットは、一般のECサイトのように運営者が直接商品を販売するのではなく、運営者は販売者と消費者が直接商品を取引できるプラットフォームだけを提供し、多数の販売者が商品を登録しそのプラットフォームを利用して直接消費者と取引をするという特徴があります。
オープンマーケット運営者が販売に関与せず、多数の販売者が自由に多数の商品を登録して販売するため、偽造品が掲載されても、その都度の摘発や制裁が難しいことから、オープンマーケットでの商標権侵害が絶えないにもかかわらず、現行の法律上、オープンマーケットに商標権侵害掲示物についての直接的責任を問うことは難しいのが現状です。
現行の韓国電子商取引法では、オープンマーケットのような「通信販売仲介者」は、自身が通信販売の当事者でないことを消費者に事前に明示した際には、消費者に対して直接責任を負わないよう規定されているからです。
韓国大法院(最高裁)も、(1)オープンマーケットが提供するプラットフォームに掲示された偽造品の不法性が明確で、(2)オープンマーケットがこのような商品が掲示された事情を具体的に認識したことが外観上明確であり、(3)技術的·経済的に掲示物に対する管理·統制が可能な場合は、オープンマーケットにその掲示物を削除し、以後該当販売者のそのプラットフォームでの該当商品販売を禁止するなどの適切な処置を取ることが要求され、それを怠って販売者の商標権侵害を容易にさせた場合には、販売者の行為について不作為によるほう助者としての共同不法行為責任を認めると判示し(大法院2010.3.11.宣告2009 タ53812)、事後的・制限的な責任のみを認めています。

2.オープンマーケットの商標権保護の措置

韓国の大手オープンマーケットも知的財産権侵害行為に関する対策を設け、商標権保護のための努力をしています。
例えば、偽造品を選別するための監視システムを導入したり、偽造品補償制度を設けるなど偽造品対策措置を取っています。また、商標権侵害が疑わしいときに、権利者が直ちに申告できるよう、各社別に知識財産権保護センターを設けて運営しています。
権利者がオープンマーケットの知識財産権保護センターへ商標権侵害の商品を申告すると、オープンマーケット運営者は該当販売者へ疎明を要求し、該当販売者が定められた期限内に疎明をできなかった場合には販売制限措置を取ることになります。
もし該当販売者の疎明があった場合、権利者は該当商品が偽造品であることを再疎明することになりますが、当事者間で疎明過程での協議が完了されない場合にはオープンマーケットが直接最終的な判断をせずに判決などの客観的な資料が必要になるという点では制限的な措置であるともいえます。
しかし、申告を受け疎明を要求されただけでも自主的に商品販売を中止する販売者も多いため、権利者としては積極的に申告制度を活用して偽造品がオンラインに氾濫することを防ぐ必要があります。

3.オープンマーケットの責任強化の動き

オープンマーケットの急成長に伴い、オープンマーケット自体の認知度や影響力も拡大しつつあります。また消費者もオープンマーケット自体のブランド価値を信頼し商品を購買するようになっています。従って、オープンマーケットにも単純なプラットフォーム提供者としてだけではなく、それ相応の責任を担う必要があるとの声が高まっています。
現に最近改正され、2020年7月1日から施行された関税法令により、関税庁は2020年下半期からオープンマーケットへ年に1度、偽造品管理実態を含めた書面実態調査を実施することができるようになりました。また、まだ改正はされてはいませんが、電子商取引法にオープンマーケット運営者の責任を強化させる内容を取り入れることも議論されています。
このようなオープンマーケットへの責任強化の動きが、偽造品により被害を受ける消費者の保護および正当な権利者の知的財産権保護につながることが期待されます。

今月の解説者

法務法人NEXUS 徐蓮淑(ソ・ヨンスク)弁護士 高麗大學校卒(日語日文/法学)、早稲田大学研修。専門は外国人投資、知的財産権。
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所知的財産チーム)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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