知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)模倣商標の出願に対する対応方策

2020年12月09日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.147)
特許法人AJU Kim Chang & Lee
尹 種和 弁理士

近頃、あるTV番組で有名になった飲食店の商標を第三者が模倣して先に出願したことが分かり、物議を醸しています。また、昨年末にも有名キャラクターの名前を使用した模倣商標が第三者によって出願されたことが分かり、問題となったことがありました。
韓国の商標法は、先願主義を原則として採用しているため、先に出願した人が商標を先占でき、このような模倣商標の出願による問題が度々発生しています。
しかし、実際には需要者の保護のため使用主義の側面も反映しており、模倣商標の出願に対応可能な方策が設けられています。本人が使用している商号等を第三者が無断で出願した事実を知った場合の対応策は、次の通りです。

1.韓国における模倣商標の先占行為を防止するための法規定

韓国商標法によると、特定人の出所表示として認識された商標を他人が先に出願しても、商標法第34条第1項第12号(需要者欺瞞=ぎまん)および第13号(不正使用)等により登録を受けられない可能性があります。
従って、本人が使用している商号等を第三者が無断で出願した事実を知った場合、その商標の登録前では情報提供および異議申立が可能であり、商標の登録後では無効審判を請求できるので、関連する規定によって他人の商標獲得を防止できます。
具体的には、情報提供の場合は、誰でも商標登録決定前まで可能であり、異議申立の場合は、誰でも出願公告日から2カ月まで可能です。登録無効審判は、利害関係人だけが請求可能ですが、商標法第34条第1項12号および13号による商標登録無効審判の場合は、審判請求期間の制限がありません。
また、商標法は、氏名・商号などの先使用権を認めていることから、本人が先に使用していた商号などに対し、他人が先に同一・類似の商品において登録を受けたとしても、他人の商標登録出願前から韓国内で持続的に使用し、不正競争の目的がない場合には看板を下ろすことなく継続してそれを使用できます。
さらに、氏名、商号、メニュー名などが自分のビジネスにおいて出所表示として認識できる程度に広く知られている場合であれば、商標登録をしなくとも不正競争防止および営業秘密保護に関する法律に基づき保護されるので、裁判所に使用禁止および損害賠償を請求できます。

2.外国の先使用商標について

上述のように、韓国内で他人の商標出願以前から商標を使用してきた場合であれば、法的に保護を受けられる方策が多数講じられています。また、韓国内では使用していなかったが、外国で使用していた商標を韓国内で使用しようとする場合、模倣商標が既に登録されているということもあります。
近頃、このような外国商標の模倣事例が増加し、関連紛争も多発しており、その解決策として商標法第34条第1項第13号が活用できます。当該条項によれば、国内の需要者だけでなく、外国の需要者に特定人の商品を表示するものと認識されている商標であれば、他人の登録を防ぐことができます。
例えば、外国の有名商標“totes”の模倣商標について韓国法院(裁判所)は、米国での先使用商標と関連して米国内で持続的に雨傘などの広告として新聞や雑誌に先使用商標が使用され、2003年頃からはTV広告も行い、それにより毎年数十万米ドル以上を広告費として支出したとみられる点、米国での認知度調査の結果、先使用商標がアクセサリー分野で3位に選定された事実がある点などを挙げ、米国の先使用商標が米国の需要者に特定人の商標と顕著に認識されていたとみなせると判示したことがあります。
従って、外国でのみ使用した商標だとしても、該当商標が該当国で広く知られた有名な商標に該当するならば、国内での第三者の商標の無断使用を防止できると考えます。

3.結論

従って、商標を事前に登録しなかったとしても、特定人の出所表示として認識されるならば、第三者の模倣出願は登録されない可能性があり、先に使用しているならば先使用権が認められます。しかしながら、紛争発生の可能性は排除できませんので、ビジネスの構想段階から予め商標を出願し登録を受けておくことが、何より今後発生し得る商標紛争を予防できる最善の方法ではないかと思います。

今月の解説者

特許法人AJU Kim Chang & Lee 尹鍾和弁理士
ソウル大学電気・情報工学部卒業、韓国の第50 回弁理士試験に合格、韓国弁理士会(KPAA)の会員
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 土谷慎吾)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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