知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国・日本・欧州の弁理士試験制度の比較

2020年09月09日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.143)
特許法人KOREANA
尹 辰薫(ユン・ジンフン)弁護士

筆者は、日本、韓国、欧州の特許事務所において、いずれも勤務した経験がありますが、これらはいずれも大陸法系の国家であるため、特許法および弁理士制度においてもある程度の共通点があります。本記事では、日本/韓国/欧州の弁理士試験制度について比較・検討します。

1.受験資格

韓国および日本の弁理士試験は、受験資格に制限がなく、国籍、学歴および特許業務の経歴に関係なく誰でも試験を受験することができます。一方、欧州の場合には、学歴および経歴の条件が付加されます。すなわち、欧州特許弁理士試験を受験するためには、一般的に理工系の学士学位以上の学歴が必要であり、3年間、特許事務所または会社で欧州特許弁理士などの監督の下、業務訓練を受けることを必要とします。
また、試験の言語について、韓国および日本は、自国の言語でのみ試験が出題される一方、欧州特許弁理士試験は、受験者が英語、フランス語、ドイツ語のうちいずれか一つの言語を選択して受験することができます。以前は、欧州特許弁理士試験を受験するためには、複数の言語が必要でしたが、現在は、英語のみでも受験が可能です。

2.試験

韓国の弁理士試験は、日本と類似して、多肢選択式の1次試験があり、論文式の2次試験があります。ただし、日本の1次試験は、知的財産権関連の科目のみ出題されるのに比べ、韓国の1次試験は民法が必須であり、TOEICなどの英語試験の点数を必ず提出しなければなりません。欧州の場合、特許事務所で2年間の研修過程を経た後に行う予備試験が1次試験の役割をし、4時間、法律問題および請求項の作成に関する問題を含む多肢選択式の20問の問題を解けば良いです。
論文式の2次試験に関しては、韓国の弁理士試験は、特許/実用新案、商標、民事訴訟法、および選択科目の4科目の平均点数が高い順に合格者を決定します。これに比べ、日本は、意匠法が必修科目に含まれ、民事訴訟法が必修科目から抜け、特許/実用新案の配点が、他の科目の2倍であるという点で、韓国の試験と相違点があります。欧州の場合には、明細書の作成、OAへの答弁、異議申立書の作成、法律知識および解決方案に関する論述式のテストからなっています。
一方、日本には、3次試験として口述試験があり、これは、韓国および欧州にはない日本にのみに存在する制度です。この口述試験は、試験委員との質疑応答の結果をA、B、Cで採点する形式となっており、特許/実用新案、商標、意匠について、2科目以上においてCを受けると不合格となります。

3.資格の効力

韓国と日本の場合には、弁理士は基本的に自国の特許庁に対して特許/実用新案、商標、デザインの業務などの知的財産権の業務を代理することができます。
一方、欧州の場合には、商標やデザインを担当する機関(OHIM)および資格試験が別途存在するので、欧州特許弁理士は、欧州特許庁の特許業務に対する代理権を有し、商標/デザインの業務に関しては代理権を有しません。
また、上述の欧州特許弁理士試験における明細書の作成、PAへの答弁、異議申立書の作成、法律知識および解決方案に関するテストは、全て特許に関するものであり、商標/デザインに関する事項は、欧州特許弁理士試験では扱われません。
大陸法系の国家に分類される日本/韓国/欧州ですが、弁理士試験制度は共通点だけでなく相違点も有しており、各国家の特性および状況に応じて、制度はますます変化するものと思われます。また、韓国および日本の弁理士試験は、受験資格に制限がなく、欧州の場合にも、学士の卒業さえあれば、ロースクールなどの追加の学歴なしに受験することができるので、韓国/日本/欧州の全てにおいて、追加的な投資なしに専門職種に進みたい方にとって魅力的な制度であるといえます。

今月の解説者

特許法人KOREANA 尹 辰薫 韓国/日本の弁理士
2002年に韓国の弁理士試験に合格。2012 年に日本の弁理士試験に合格。韓国特許庁における元審査官。韓国弁理士会(KPAA)および日本弁理士会(JPAA)の会員
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 土谷 慎吾)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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