知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)2020年上半期における韓国知的財産権の出願動向

2020年10月14日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.145)
特許法人NAM&NAM
李 浩俊(イ・ホジュン)弁護士

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う困難な状況にあっても、2020年上半期における韓国企業の国際特許出願(PCT)と韓国特許庁への出願件数は増加し、景気回復への前向きな兆候が見受けられることから、以下に紹介する。

1.韓国企業の国際特許出願(PCT)の増加率、世界2位

韓国特許庁は、2020年上半期における韓国企業の国際特許出願(PCT)が前年同期比で大幅に増加したと発表した。
PCT(特許協力条約:Patent Cooperation Treaty)とは、条約に基づいて一つの出願を受理官庁に提出すれば、条約加盟国(153)全体に特許出願の効果を付与する条約をいう。世界知的所有権機関(WIPO)によれば、今年の上半期における韓国企業の国際特許出願は、8,867件と世界5位につけており、前年同期比での伸びは10.3%と、出願数ランキング世界トップ10の中では、中国に次いで2位となる数字である。
国際特許出願数で上位国家別上半期の伸びは、米国4.7%増(2万9,485件)、中国19.8%増(2万7,818件)、日本0.6%減(2万6,355件)、ドイツ2.4%減(9,143件)、韓国10.3%増(8,867件)、フランス1.2%増(3,569件)、英国0.1%増(2,845件)で、中国、韓国が急激な増加を示しているのに対し、米国は緩やかな増加、日本やドイツはむしろ減少する傾向を示している。

国際特許出願数で上位国家別上半期の伸びは、米国4.7%増(2万9,485 件)、中国19.8%増(2万7,818 件)、日本0.6%減(2万6,355 件)、ドイツ2.4%減(9,143 件)、韓国10.3%増(8,867 件)、フランス1.2%増(3,569 件)、英国0.1%増(2,845 件)で、中国、韓国が急激な増加を示しているのに対し、米国は緩やかな増加、日本やドイツはむしろ減少する傾向を示している。

さて、2010年以降、韓国は着実に国際特許出願件数で世界5位を保持し続けており、ドイツの出願減少を考慮すれば、今年の年末には、米国、中国、日本に次いで4位にランクインする可能性もあり期待が高まる。
これら国際特許出願の増加は、韓国企業が海外における特許を先取りし、海外市場進出の橋頭堡を築いて、グローバル市場における特許技術の保護に積極的に乗り出したためと読み取れる。
韓国特許庁は、海外市場の進出に厳しい状況にある企業支援に向け、昨年に国家レベルで海外知的財産権の確保に向けた戦略を策定し、海外出願費用の支援や知的財産の出願支援ファンド造成といった施策を押し進めており、今後も国際特許出願料の減免措置や、世界知的所有権機関との共同説明会やセミナーをはじめとした教育、広報活動を推進する予定である。

2.韓国知的財産権の出願増加

韓国特許庁の資料によれば、2020年上半期の知的財産権の出願は計25万3,027件で、前年同期比で4.5%増加した。特許権と商標権がそれぞれ2.1%、9.4%増加し、知的財産権全体の出願増加をリードした。特許は9万9,336件で2.1%増加、実用新案は、2,306件で16.5%減少、商標は12万833件で9.4%増加、デザイン(意匠)は3万522件で3.3%減少したことが分かった。
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した今年の3月以降、知的財産権の出願活動がしばらく落ち込んだが、6月に前月比17.3%、前年同月比で20.7%増を記録し、出願が急増した。上半期全体でも前年同期比で出願が増加する傾向にまで回復した。
経済活動に赤信号がともる中、知的財産権の出願が増加した分野には、新型コロナウイルスの克服に向け、技術やサービスを通じた企業活動の絶え間ない努力が影響を及ぼした模様である。
今年の1月から6月までオンラインショッピングや物流配送といった非対面関連分野における特許出願が前年上半期比で27.2%増加した。月別では、前年同月を基準に、1月では出願件数が15.8%減少した後、残りのすべての期間で2桁の増加率を記録している。
商標およびデザイン(意匠)権も非対面分野における出願の増加が明確になった。電子商取引、通信・放送業など非対面分野における商標の出願は、昨年上半期に比べ12.5%、件数では4,209件に増加した。この期間に、商標全体の増加件数が1万356件である点を踏まえると、非対面分野が出願の増加に40%以上寄与しているとみなすことができる。
デザイン(意匠)権の場合には、2020年上半期の全出願件数は前年同期比3.3%減少したが、マスク・診断ブースといった衛生・医療部門で出願が238.3%増加し、非対面分野全体では42.6%の増加率を記録した。
最近の知的財産権活動は、非対面産業を中心に行われている点で、企業などでは、すでにポストコロナの時代に向けた対応が本格化していることが読み取れる。また、知的財産権における出願量の増加は、単なる指標に留まらず、近い将来、景気回復への可能性を示しているとみなすこともできるだろう。

今月の解説者

特許法人NAM&NAM弁理士 李 浩俊(イ・ホジュン)
2008 年ソウル大学校材料工学部卒。2007 年弁理士試験(第44 期)合格。2008 年より特許事務所にて勤務。2011 年より現職。大韓弁理士会員。
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 土谷 慎吾)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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