知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)医療関連発明の特許対象の拡大

2019年08月14日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.131)
YOU ME 特許法人 パートナー弁理士 金志賢(キム・ジヒョン)

韓国特許庁は、医療関連発明の産業上の利用可能性に対する審査基準を改正して2019 年3月18 日から施行しています。改正審査基準によると、医療行為の主体を医療人(※)または医療人の指示を受けた者に限定して、医療関連発明の産業上の利用可能性の認定範囲を広げました。これによって、医療人によるものではなく、コンピュータ情報処理方法に該当する診断技術などは、医療行為に該当しないことが明確になりました。以下、改正内容について具体的に紹介します。 (※韓国では、医療人とは、医師、歯科医師、韓医師、助産師、看護師を指します)

医療関連発明の審査基準の改正背景

韓国特許法上、医療関連発明中の医療行為は、原則として特許を受けることができません。しかし、最近、多様な医療関連技術が開発されており、特に人工知能(AI)技術の発展に伴って、このような動きがさらに加速化して制度の改善が必要となりました。このような傾向を勘案して韓国特許庁は、医療分野の特許付与の基準を確立し、新技術に対する特許保護の機会を拡大しました。

審査基準の改正内容

改正審査基準によると、医療行為を「医療人または医療人の指示を受けた者が医学的知識に基づいて人間を手術、治療または診断する行為」と定義しました。以前は医療行為を単に「人間を手術、治療または診断する方法」とのみ定義して、医療行為の主体に対する解釈の論議がありました。今回の改正を通じて医療行為の主体を特定することによって、実質的に医療関連発明の特許対象が拡大されました。

医療行為の定義により、発明がi)人間が対象であるか否か、ii)医療機器であるか否か、iii)医療人による行為であるか否か、iv)請求項に実際に医療行為が含まれるか否かにより分けられ、それぞれの場合によって、細部判断基準を設けて産業上の利用可能性を判断するようにしました。

さらに、今回の改正審査基準では、人体を処置する方法が治療効果と非治療効果を同時に有しているとしても、その請求項が非治療的用途(例:美容用途)のみに限定されており、明細書に記載されている発明の目的、構成及び効果を総合的に考慮すると、非治療的用途にその方法の使用を分離することができ、ある程度の健康増進効果が伴うとしても、それが非治療的な目的と効果を達成するための過程で現れる付随的な効果である場合には、産業上利用可能な発明として扱うという特許法院の判決(特許法院2017 ホ4501 判決(2017年11月17日言渡))の趣旨を反映しました。例えば、「物質Aと物質Bを含む美容組成物を皮膚表面に適用することを特徴とする皮膚美白改善のための美容方法」は、請求項が非治療的用途である美容方法に限定されており、美容産業は産業的に医療行為と分離可能であり、皮膚美白改善による健康増進効果が付随的なものと認められるという理由により、産業上の利用可能性を肯定する例示として追加されました。

結び

今回の審査基準の改正内容は、医療主体を明確に定義しています。したがって、医療人によるものではなく、バイオビッグデータ処理方法など、コンピュータ上の情報処理方法に該当する診断技術は、医療行為に該当しないことが明確になりました。また、請求項が非治療的用途のみに限定されている、治療効果と非治療効果を同時に有している人体の処置方法も産業上の利用可能性があるものとしました。

今月の解説者

YOU ME 特許法人 パートナー弁理士 金志賢(キム・ジヒョン)、中央大学校薬学大学製薬学科卒業(2004) / 弁理士試験合格 (2003) / 薬剤師資格取得(2004)、YOU ME 特許法人で化学、生命工学及び医薬学分野を担当
(監修:日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所副所長 浜岸広明)

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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