知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)世界で唯一、女性発明王エキスポ開催!

2023年09月13日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.180)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)

2023年7月21日から3日間、KINTEX(京畿道高陽市)において、女性発明家の発明を一堂に見ることができる世界で唯一の展示会「2023女性発明王エキスポ」が開催され特許庁から報告が出ましたので解説します。

1.女性発明王エキスポ詳細

「2023女性発明王エキスポ」は、韓国特許庁が主催し、韓国女性発明協会が主管として開催され、19カ国約330人が参加するイベントとなりました。タイトルのとおり「女性」が主役のエキスポで、女性の発明家や工業デザイナーが、実際に特許権や意匠権を出願・登録した作品を見ることができるイベントとなりました。主催の長である韓国特許庁のイ・インシル特許庁長は、「『女性発明王エキスポ』は、女性発明品の優秀性を一堂で体験できる世界唯一の展示会だ」とし、「知的財産を基盤とした女性企業家の成長事例が国民に広く知られることを期待する」と述べたということです。なお、イ・インシル特許庁長は、韓国特許庁初の女性庁長でもあり、女性発明家を支援する当該エキスポへの意欲も高いものと思われます。また、主管の韓国女性発明協会は、世界初の女性発明家協会でもあり、韓国は世界で最も女性発明家の支援環境が整っているといえます。
今回のエキスポは2つのイベントを同時開催する形で構成され、具体的には「第16回大韓民国世界女性発明大会」と「第23回女性発明品エキスポ」が開催されました。

1.1.「大韓民国世界女性発明大会」
「第16回大韓民国世界女性発明大会」は、19カ国354点の女性による発明品を対象に、初日に現場審査が行われ、最終日の授賞式で大賞、準優勝、金・銀・銅賞、国内外関連機関の特別賞などが授与されました。152の発明は韓国から、202の発明は18カ国の韓国外からの発明となり、韓国外からも多くの発明が集まっています。
大賞(グランプリ)は、チャン・グムジャ代表(韓国)の「カカオの発酵糖漬けを活用した自然発酵カカオとチョコレート」が選ばれました。チャン代表は、韓国人の好みに合うチョコレートを開発し、さらに桃や黒ごまなど韓国産農産物を混ぜ、ビーガンであっても食することが可能な多様性のある製品を創り出しました。
準優勝(セミグランプリ)は、チャン・ヒョンシルさん(韓国)の「非常電源付き道路交通安全施設物」、イム・ウンチェさん(韓国)の「総合思考力学習コンテンツを保存した保存媒体である総合思考力学習システムおよび総合思考力学習方法」、ホ・ヒェスクさん(韓国)の「弾性チューブに洗浄水の繰り返し注入機能が付いている洗浄水詰め替え用衛生ビデ」、Dina Saif AL-Mshhariさん(イエメン)の「地雷探知のためのS.A-SAIF」、Razan Alkalbaniさん(オマーン)の「X線吸収塗料」がそれぞれ受賞しました。日本からの受賞者は今回ありませんでした。
1.2.「第23回女性発明品エキスポ」
「第23回女性発明品エキスポ」は、女性が主体の発明企業113社の発明品が、生活(リビング)&室内装飾(インテリア)、化粧品(ビューティー)&ファッション、教育&情報技術(IT)、健康&医療機器などのテーマ別に展示され、実際の発明品を体験し、購入できる形式で開催されました。参加企業のうち20社を対象にライブコマースも行われたということです。女性発明家の発明品が、アイデアでとまらずイノベーションに結び付き、実際にビジネス展開できる機会は非常に素晴らしいことです。

2.女性発明家の活躍と飛躍

女性初のノーベル賞受賞者であるマリ・キュリー氏や、昨今日本でも教育法に注目が集まっているマリア・モンテッソーリ氏など、世界的にも女性による偉業はなされてきました。韓国においては、世宗大王時代に数々の発明を行った偉大なる科学者、蔣英実(チャン・ヨンシル)にちなんだ、蔣英実賞が存在しますが、この賞を受賞した女性の数も年々増加しているとの報告があり、韓国においても女性発明家の活躍が進んでいます。

3.女性が活躍できる社会

世界中でESGの観点を重要視したビジネスが重要度を増しています。Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)に配慮した企業へ投資を優先させるESG投資の流れが主流となっています。特に、Social(社会)に関連して、「ダイバーシティー&インクルージョン」が求められており、女性の活躍やリーダーシップが重要な指標となっています。女性が活躍できる社会は、平等という観点においても重要ではありますが、実現するためには、私生活も考慮した社会基盤が必要であり、皆で支えあい、多様性を許容できる社会構造の実現が望まれます。今回紹介しました韓国内での取り組みをきっかけとして、発明を通したその実現に可能性を感じます。
女性発明家を後押しする、世界で唯一の当該エキスポに参加した皆さんが活躍し、素晴らしいビジネスを創り、世界に羽ばたくことを期待したいと思います。


今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学 客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT 知財人材部長等を経て現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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