知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)特別司法警察隊の捜査範囲の拡充について

2019年10月16日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.133)
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所 副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)

韓国特許庁は、模倣品関連の犯罪を直接捜査できる特別司法警察隊を有しています。これまで特別司法警察隊の捜査範囲は商標権に限定されていましたが、2019年3月より特許権、デザイン権および営業秘密侵害の捜査にまで大幅に拡充されました。本稿では、こ の韓国特許庁の特別司法警察隊の経緯や実績について、ご紹介します。

特別司法警察隊の発足経緯

韓国特許庁は、特別司法警察隊の発足以前から、不正競争防止法第7条および第8条に基づき、模倣品の製造・販売など、不正競争行為に対する調査および是正勧告措置の権限が与えられていましたが、押収・捜索・拘束などの実効性のある取締りは、検察や警察の協力の下で行う必要があり、適時的確な執行が困難であることから、取締り成果にも限界がありました。

そこで、「司法警察官吏の職務を遂行する者とその職務範囲に関する法律(司法警察職務法)」の改正により、2010年9月に、警察と同じ法的権利を付与する特別司法警察権を持つ「商標権特別司法警察隊」が韓国特許庁に設置されました。これにより他の捜査機関に頼らずとも、商標権違反または不正競争防止法上の商品主体混同行為に関して、独自に模倣品に対する強力な取締りを実施できることになりました。特別司法警察隊では、ソウル、テジョン、釜山の各地域事務所に配置された捜査官による模倣品の取締りを行うとともに、「オンライン捜査班」として、サイバー専門捜査官が配置され、オンラインにおける模倣品の取締りも行っています。

特別司法警察隊の取締り実績

特別司法警察隊の発足以降、模倣品の取締りを通じて、2018年末までの約9年間で約2,400名を刑事立件し、約460万点の模倣品を押収するなどの成果を上げています。

2018年に押収した主要品目として、衣類(88,292点)、化粧品(65,286件)、電子部品類(13,583点)、かばん類(8,875件)が上位を占めており、これらを正規品の時価で換算すると364億ウォンに達するとのことです。(出所:韓国特許庁「2018 年知的財産白書」)

特別司法警察隊の捜査範囲の拡充

韓国特許庁の特別司法警察隊に、特許権、デザイン権および営業秘密侵害に対する捜査権限を追加する司法警察職務法が2019年3月19日に改正施行され、同日に「産業財産特別司法警察隊」が発足しました。これにより、これまで商標権侵害犯罪だけを捜査していた特別司法警察隊の捜査範囲が大幅に拡大されました。

今後、特許権、デザイン権および営業秘密侵害の犯罪についても、専門性を持つ特許庁の特別司法警察隊による捜査が行われることにより、迅速かつ正確に事件が解決されることが期待されます。

なお、知的財産侵害犯罪に対する告訴、告発は特別司法警察業務を担当する韓国特許庁の産業財産調査課が担当しています。

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 浜岸 広明(特許庁出向者)
1998年特許庁入庁。情報処理分野の審査官・審判官、国際課課長補佐、審判課課長補佐、知的財産活用企画調整官等を経て、2017年6月より現職。

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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