知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国デザイン保護法の保護対象拡大

2021年10月13日

The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.157)
ジェトロ・ソウル 副所長 土谷 慎吾(特許庁出向者)

韓国のデザイン保護法(日本の意匠法に当たる)が一部改正され、2021年10月21日に施行されます。本改正は、日系企業にとって有益な内容を含んでいますのでご紹介します。

1.日本の意匠法改正(2020年4月1日施行)

2021年10月21日施行の韓国デザイン保護法の改正は、2020年4月1日に施行された日本の意匠法改正の一部と軌を一にしているため、まず、日本の意匠法改正についてご説明します。
同改正には、多くの改正項目が含まれていますが、代表的なものとして、以下の3つが挙げられます。

(1) 保護対象の拡充

従来、意匠法の保護対象は「物品」に限られ、不動産や固体以外のものなど、「物品」でないものは保護されませんでしたが、改正により保護対象を拡充し、新たに「画像」、「建築物」、「内装」のデザインについても、登録ができるようになりました。

1、物品に記録・表示されていない画像デザインも保護できるよう、「画像」そのものも保護対象に

壁に投影される画像、人体に投影される画像

出所:日本国特許庁「令和元年意匠法改正の概要」

2、不動産である建築物のデザインも保護できるよう、「建築物」も保護対象に

店舗の建物(不動産)、ホテルの建物(不動産)

出所:日本国特許庁「令和元年意匠法改正の概要」

3、複数の物品、壁、床、天井等から構成される「内装」のデザインについても、一意匠として登録可能に

(2) 関連意匠制度の拡充

従来、関連意匠の出願可能期間は、本意匠の意匠公報発行前まで(本意匠の出願から8か月程度)でしたが、改正により、基礎意匠の出願から10年を経過する日前までとなりました。また、これまでは、関連意匠にのみ類似する意匠は登録できませんでしたが、改正により、関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録が認められることとなりました。

(3) 意匠権の存続期間

従来、意匠権の満了日は、「登録日から20年経過した日まで」でしたが、改正により、「出願日から25年経過した日まで」となりました。

2.韓国デザイン保護法の改正

2021年10月21日施行の韓国デザイン保護法の改正は、前述の日本の意匠法改正の(1)保護対象の拡充のうち、「画像」そのものを保護対象とすることが含まれています。これにより、韓国でも日本と同じく、物品以外の場所に投影される画像(GUI)そのものが保護されるようになりました。韓国特許庁は、改正法の国会可決直後の2021年3月25日付けプレスリリースで、「デジタル技術を活用して創作した知的財産権の保護に対する転機を迎えることができた」としています。

2、不動産である建築物のデザインも保護できるよう、「建築物」も保護対象に

仮想キーボード(Brookstone.com)、スマートブレスレッド(https://cicret.com)、空間に投影するピアノ鍵盤(sony.com)、知能型の自動車ヘッドライト(daimlar.com)

出所:韓国特許庁2021年3月25日付けプレスリリース

一方、韓国改正法には、(1)保護対象の拡充のうち、「建築物」、「内装」のデザイン、(2)関連意匠制度の拡充および(3)意匠権の存続期間については含まれておらず、日韓で差が出ることになりました。

今月の解説者

日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 土谷 慎吾
2001年日本国特許庁入庁。通信・半導体分野の審査官・審判官、情報技術統括室室長補佐、審判課課長補佐、主任上席審査官等を経て、2020年7月から現職

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本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。

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