知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)「2025キャンパス特許ユニバーシアード」から見る次世代と知財の重要性
2025年12月10日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.207)
ジェトロ・ソウル 副所長 大塚 裕一(特許庁出向者)
2025年11月12日に韓国の知識財産処は、「2025キャンパス特許ユニバーシアード授賞式」を開催したと発表しました。今回の大会では、大統領賞を韓国技術教育大学のチームが、国務総理賞は淑明女子大学のチームがそれぞれ受賞しました。これからの産業界を支える大学生の知的財産を通じた挑戦について紹介いたします。
1.キャンパス特許ユニバーシアード
キャンパス特許ユニバーシアードは、2008年から開催されており、今年で18回目の開催となりました。知識財産処によりますと、特許データの分析や活用に関する教育を通じて、企業が必要とする知的財産人材を育成し、大学の創造的アイデアを産業界に供給するために毎年開催される韓国内最大規模の知的財産に関する大会、と紹介されています。また、今回の大会は、全国79大学から合計1,456チームが参加し、国民参加の審査を含む5段階の厳しい審査を経た30大学、108チームが受賞の栄誉に輝いたとのことです。本大会は、知識財産処の主導で進められますが、本年から新たに、大韓商工会議所などの団体や、サムスン電子、現代自動車、SKハイニックスなどの国内大手企業も後援機関として参加して実施され、産業界との関係も一層強固なイベントとなりました。
2.受賞内容
本大会では、実際に企業から提供される課題に、大学生である挑戦者が知的財産を通じた戦略を提示し、その内容を競うものとなっています。
大統領賞は、SKハイニックスが出題した「積層型DRAM技術」に関する課題について、国別・技術別・出願人別の特許動向を分析し、技術トレンドを分析し、その技術トレンドを予測し、特許戦略を提示した韓国技術教育大学の「Ⅾocent」チームが受賞しました。
国務総理賞は、韓国電子通信研究院(ETRI)の出題した「自律走行技術」をテーマに、関連特許のポートフォリオを構築し、製品適用可能性の高い特許を中心に事業化戦略を提示した、淑明女子大学の「価値ON」チームが受賞しました。
この他にも知識財産処長賞など、合計108点の賞が各受賞者へと授与されました。受賞者には大統領賞受賞者への2,000万ウォンをはじめ、合計3億ウォンの賞金とともに、「次世代知識財産リーダー(YIPL)」プログラムへの参加の権利などが与えられる予定とのことです。YIPLでは、著名CEOによる講演、リーダーシップ・知的財産講座、地域ネットワーク、産業体験、就職相談などの機会が提供されます。
3.受賞者と就職率
今回の授賞式に関する発表において、興味深いデータも示されました。本大会での受賞者と一般的な者の就職率の関係です。
最近5年間の本大会受賞者の平均就職率は、78.6%であり、同期間に工学系の平均就職率は70.4%であり、受賞者は一般的な者より約8%、高い就職率となっているとのことです。さまざまな要因はあると思われますが、実践的な知識財産のビジネスへの活用を大学生時代に経験することが、その後の就職にも好影響を及ぼしていることが、このデータからもうかがえます。
4.日韓大学生の知的財産を通じた交流
今回、国務総理賞を受賞したチームおよび科学技術情報通信部長官賞を受賞したチームの指導者として、指導教授部門で産業通商部長官賞と知識財産処長賞を同時に受賞した淑明女子大学のハ・ユンス教授と、筆者が共同で、2025年10月に「次世代が考える知財戦略2025」を開催しました。日韓両国の知財教育を先進的に進めている、韓国の淑明女子大学および、日本の帝京大学の両大学生、各6チーム・合計12チームに、ビジネスと知財を通して社会課題の解決について提案を行ってもらいました。両校ともに類似の大会での経験もあり、課題の抽出や独自の解決手段なども興味深いものが多数あり、またプレゼン自体も非常に素晴らしい内容となりました。このような実践的な経験は、ビジネスに必須である知財を関係させることによってより実践的なものとなり、上述のような就職などにも好影響を与えているのではないかと考えられます。
次世代が考える知財戦略2025
今月の解説者
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 大塚 裕一(日本国特許庁知財アタッシェ)
2002年日本国特許庁入庁後、特許審査官・審判官として審査・審判実務や管理職業務に従事。また特許庁 総務課・調整課・審判課での課長補佐、英国ケンブリッジ大学客員研究員、(国)山口大学大学院技術経営研究科准教授、(独)INPIT知財人材部長等を経て現職。
本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、李(イ)、半田(いずれも日本語可)
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